7日目 キャスト・アウェイ
ストーリーは言ってしまえば、一人の男が無人島に漂流していかだで戻ってくるだけで、意外な展開があるわけでもないし、人生や社会問題に対してのユニークな視点があるわけでもない。
この映画の魅力はストーリそれ自体でなく、演出や演技などの映像的な部分にあると思う。主人公チャックが海に投げ出されるシーンでは見ているこちらも息が詰まるし、スケートの靴で虫歯を抜くシーンは思わず顔をしかめた、暗闇の海でイカダの近くにクジラが出てくるシーンは見ていてすごく怖かった。
そして、なんといっても一番すごいのはチャックとバレーボールのウィルソンとの別れのシーン。誇張抜きで今まで見た映画で一番印象に残ったシーンかもしれない。海に落ちたバレーボール相手に「ごめんよ」「許してくれ」と泣きながら謝り、顔を手で覆って絶望する姿は普通に考えたら間違いなく滑稽なんだけど、この映画のこのシーンから滑稽さなどはみじんも感じられず、ただただチャックの悲しみと絶望だけが伝わってくる。これは、ひとえに演技力と演出の賜物なのだろうと思う。このシーンのすさまじさは、ちょっと映画という表現媒体以外では出せそうにない。
逆に言うとこのシーンの絶望と悲しみがすさまじすぎて他のところ(特にこのシーンの後の後本土に帰ってからのシーン)は少し物足りなく感じてしまったが、しかしこのシーンだけでこの映画は傑作足りうると思う。
理屈抜きで、すごくプリミティブに感情を揺さぶってくる映画だったと思う。
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