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【感想】ラジオドラマ『滅頂』

※ネタバレ注意
堺雅人さん出演のラジオドラマの感想です。

滅頂

【あらすじ】
時は、文化大革命後の1980年代。
経済開放政策に伴って、養鶏によって大金持ちになった或る農村のふたつの家族の悲劇を描いた物語。

滅頂とは:人の知恵では避けることの出来ない運命によって起きる大きな災い。

中国現代文学シリーズ

原作:梁暁声
訳:渋谷誉一郎
脚色:高木凛
音楽:牟岐礼
演出:平位敦

出演
シューシュー:高橋理恵子
父:うえだ峻
ミングイ:堺雅人
老婆、他:沼波輝枝

放送日:1997年8月16日
制作:FMシアター/NHK


マジで終始胸糞の悪い、嫌な話だった……。
貧乏暮らしが嫌なのは分かる。けれど、家族を蔑ろにしてまで金儲けに目がくらんだ父が、娘シューシューを奴隷のように働かせ、自分が養鶏王になるために娘を養鶏を生業としている男に嫁がせようとする。そのうえその男が持つ鶏にまで目がくらんで、ただ嫁がせるのではなく、婿養子にしようとする強欲っぷり。

しかも相手の男ミングイは、ただシューシューに惹かれたわけではなかった。シューシューの父親が自分の父の仇だった。だから娘を娶り、ゆくゆくは彼女の父親が持つ鶏=財産を奪うという復讐計画のために、シューシューに求婚していただけという。
シューシューの父も、ミングイもどちらも養鶏=金・財産に踊らされてるせいで、朝から晩まで馬車馬の如く鶏の世話をさせられているシューシューはどんどん追い詰められていく。
唯一シューシューの母親だけは彼女の味方で、何度も強欲で自分勝手な父親を諭してくれていたのに、改心どころかもっと我儘になっていく。

そんなシューシューにとって唯一の心の拠り所は、婚約者のミングイとの新生活を想像することだけだった。彼も養鶏はしているけれど、ある程度お金が貯まったら養鶏を辞め、ふたりで楽しく暮らしていけると信じることだけだったのに、彼も父親と同じく心底鶏に憑りつかれた金の亡者と知り、ミングイを殺し(※)、養鶏場に火を放ち自死を選んでしまう。

※直接的な描写はないものの、シューシューに殺されているでしょう。泥酔した彼は、気分良くシューシューに己の本当の目的を語り、ショックを受けつつも反抗したシューシューを川に沈めようとしたのが、彼が生きていた最後の描写でした。しかしその後の描写ではシューシューが鶏小屋を放火。ミングイがもし生きていれば絶対に止めに来るはずが行方不明。もちろん、本来なら女が力で男に勝てるはずはないのですが、その時の彼はとても泥酔していました。

しかし、本当に最初から最後まで胸糞の悪い物語でした。タイトルがひどく教訓めいてますが、なにひとつ良いことがない。『滅頂』、『人の知恵では避けることの出来ない運命によって起きる大きな災いである』ことは、物語の最初でナレーターから解説があるのですが、結局は身の丈に合わないものを望んだ者たちが他人を蔑ろにし続けた結果であって、運命以前に人としてどうなんだ???と。いまひとつタイトルと噛み合っていないような気がするんですよね。
例えば、『出てくる人がみんな良い人で、一生懸命貧乏なりにお金を稼いでそれなりの暮らしが出来るようになりました。けれど災害で鶏小屋が焼け、家も財産も失ってしまった!』なら、このタイトルも理解出来るのですが……とにかく推しである堺雅人さん目当てで拝聴した番組でしたが、二度と聞くことはないかなぁ……救いようのないクズ男役でしたし、唯一良かった点があったとすれば、堺さんのスケベボイスが聞けたことぐらいでしょうか、短いけどw

堺さんが出演されているNHKラジオだったら、『かつて海だった街』とか『不思議屋薬品店』の方が好きだったなぁ……。

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