逆噴射小説大賞2021で読んだ小説をいくつかオススメ

 こんにちは。えのきです。普段ブログとかカクヨムでばかり文章書いていたのですっかり放置していたnoteを久しぶりに最近動かしました。

 逆噴射小説対象に参加するために。

 いや〜締め切りギリギリまで完全ノーチェックだったのですが、逆噴射小説対象の参加作品を読むのが今週楽しいです。800字という制限下かつ、導入部分を書く、という制約から「どんなものになるの?」と思って読んでみたのですが、これが想像以上に書き手の方々の個性が出る出る。800字という制限だからこそ却って誤魔化しの効かないステージになっているのだな、と痛感。投稿もしたんですが、読むのが面白く、ちょくちょく感想ツイートして「note、通知いくっぽいけどこういうイベントならそのままツイートしちゃって大丈夫かな?」と全く交流なかった方々の通知欄を荒らす感じになっています。

 こういうお祭りやっぱり面白いので面白かった作品の感想を改めて書きつつ、紹介しようかな〜と思いました。全部はいっきに書くのは難しいのですこしずつ……

・わが愛しのホット・ジュピター

 というかそもそも逆噴射小説大賞知ったきっかけだった気がします。

 壮大な世界SF的世界が提示されて、そこからAIのどこか抒情的な語りとAIであるが故に思い通りに生きられない、という視点が面白いです。それぞれの文章のマクロなポイントと個人的な視点がむしろ重要そうに読めるミクロな視点がまとまっていて、かつ「ここからどうなるんだろう?」というヒキが気になる作品でした。

 いや、面白いですし、単純にこういうイベントしれたのがありがたいですね……

・化生、人心を知らざれば

 ここらへんで「お?思った以上にこの賞のレギュレーションでも面白い小説めちゃあるのでは?」となる。文章の精度から作られる作品の雰囲気がたまらないんですよね。

 “ 追い抜きざまに引き金を押し込む。雨音よりも小さな銃声。亜音速弾があいつの胸を貫く。死は裏切りほどに鮮やかでなく単色の原理にすぎない。劇的なものは一切ない。あいつはくずおれる。”

 この一連の文章のかっこよさ。雨だというのに乾き切った死生観というコントラストがすごい。全てが手遅れ、終わってしまったであろう一連の場面から一体どのような回想、物語が展開されるのか?というのがとても良いヒキになっているな〜と。

 徹底して抑揚が制御されている文章はもう作品のカラーやテーマそのものになりうるのではないかと思うような小説です。

・流れよ我がsperm、とおれは言った

 ここら辺で規定を読む。逆噴射さんの文章、読んだことあるなぁ!となりこちらの小説は自分のイメージの直球パルプといった味わい。

 サイバーパンクな世界でありながら、ディックという肉体的なものに執着するところにどこまでも『人間』を感じてしまう。90分の良質アクション映画のようなスピーディーな展開と文体が癖になります。ここからディックに拘る理由とかも走り続ける中で明らかになるのかなぁと気になるところ。

・ブラッド・サイバー・スチールエッジ

 もはや古典的ともいえる一文、そして尋常じゃないほど繰り返し聞いたセリフ(私はエヴァが好き)からの怒涛の独自の世界が展開される勢いと情報量に楽しくなってしまいます。テンプレートとも言えるキャッチーかつキャラクターがなんとなくわかるセリフから、「どうなるんだか全然わからん!」と前のめりになってしまうコントラストが良い。

 これから主人公がどのような戦いに身を置くのか、そしてヒロインとの関係はどうなるのか、そもそもこの世界はどのようなものなのか、と引き込まれる作品です。

・我以外皆死也

 これ本当好き。

 こういうメタな発想大好きなんですよね。物凄い勢いの文章の展開は滅茶苦茶なんですが、滅茶苦茶でありつつもただ雑なのではなく、「こうすれば最高にヤベエ勢いの文章になる」という本能で筆が進められている感覚が最高。こういう必要性を感じる文章の作法みたいなものをぶん投げて表現したいノリに徹せられている作品はたまらないです。まさにパルプ。逆噴射じゃないと出会えないノリだったかもしれない。読んでいて普通に笑ってしまった。

 こんな導入から始まる物語、読んでみたいです。

・少女たちは天国の扉を叩く

 最悪ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア。

 未来がないからこそのやけっぱちさ、未来がないにも関わらずその思い切りのよさに否応がなしに二人の少女の『若さ』を感じる様が見事。

 完全に常識、倫理的にアウトなはずのことに臨む二人の余命短い少女の話なのですが、どこまでも青春と形容したくなるエネルギーが眩しい。この二人が一体どのような道を歩むのか、その先に一般常識での光はないにしても見届けたくなる導入でした。

・SINCERE TURNCOAT

 聖教団、ラッシング・チェイン、祓魔対象と興味を引かれる用語と、わずかな文章の中で複数の派閥と思惑が垣間見えるのが物語の導入として惹かれます。赤髪の女の過去も、これからのニーナとの関係にしても、聖教団側のアンナにしても単純に聖教団だけの価値観なのか?というのが色々な推測や期待が出来てしまうのが設定やプロットの練り込みを感じます。

 これ連載で読んでみたいですね……


・狼と犬

 こういう人道からは外れているけど、二人にとってはどこか特別、運命的な出会いでは、と思うような導入に自分は弱い気がします。一般的な正しさ以上にその人の独自の世界観みたいなものを見たくて小説読んでる気がする。ここから二人がどういう関係を築いていくのか、どのような事件があるのか気になる。

 導入で数年とか結構長い付き合いの話になるのかな〜という印象もあり先が読めない書き出しでした。

・処女懐胎

 この導入、想像がふくらんでしまう。なぜ本に話しかけるのか、なぜ『私』はクリスタルの人間になったのか、前書きとの関係はどうなるのか?など、これでも書ききれないほどの情報量。しかし、それぞれが「何かのメタファーなのでは?」と感じさせる練り込みを感じる導入の文章。

 これ長編なったら読んであれこれ考えたいな〜という導入でした。ここでばら撒かれた要素が一つのテーマでまとまったら最高に刺激的な気がします。


 とりあえず一度このあたりまで。他にもいっぱい面白い作品はあるので是非タグとかで漁ってみてください!投稿期間は終わりましたがまだ作品の熱は熱い。

 そのうちまた書くかもしれないです。ではでは。



 あと今回の賞に投稿した二作品、宣伝しておきます……よろしければ是非!


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