どうしようもない夜は、中年男性がハイボール飲む動画みて生きる。
ここでは好きなものとそれにまつわる話をするんだけど、しょっぱなからアニメやら漫画やらの話ばかりだから、違う毛色の話もしたい。タイトル通りなんだけどね。どうでもいいけど、長いタイトルってラノベか長文エモツイッタラーが書籍化した感を想起させるよな。
どうしようもない夜中ってたまにあるよね。なんか眠れない、何の原因もないけど無性に悲しい、辛いとかで涙が出てくるような夜。一時半まではどうにか寝ようと布団の中でのたうち回るんだけど、二時回ったあたりから諦める。それで結局、スマホ握りしめて寝落ちする三時半くらいまで、見たくもないYoutubeとかみてネットの海を漂うんです。私は特に、月に何日か、みんながおなか痛かったり腰が痛かったりする代わりに、このどうしようもない夜を迎えている。何の悩みもなく一日を楽しく過ごしたはずなのに、夜が更けるにつれて、悲しいなぁ、辛いなぁって気持ちになってくる。この夜の一番しんどいところは、原因がないから解決のしようがないってこと。ただひたすら布団にくるまって過ぎ去るのを待つだけ。
私は、こういう夜に、中年男性がハイボールを狂ったように飲む動画を見るのが好きだ。ニコニコ動画に、自身がハイボールを飲む動画をひたすらあげているおじさんがいる。顔出しはしてない。汚ねぇ畳の上にジョッキを置き、タバコをふかしながらハイボールを作る。つまみはその畳に直置きするし、ちらりと映る足の指は、明らかに健康な人間のものの色ではない。飲む音も食べる音もクチャラーどころじゃない汚さかつ、口からすごいこぼす。何より、飲む量が異常である。まだ酒は飲んだことがない私でもこれは普通じゃないと分かる量。水のようにがっばがば飲む。おそらく彼はアル中だ。
さて、ここまで読んだ健全な人間のほとんどは、ドン引きしているだろう。一応言っておきたいのは、私はこれを素敵だとか憧れとかでみているわけではない。ばっちり嫌悪感や不快感を感じている。ただ私は、その嫌悪感や不快感、そして、少しの安堵を求めて夜な夜な彼の動画を見漁るのだ。
一番のお気に入りは、水道を止められてしまったためにコインランドリーで洗濯する片手間、ハイボールを飲みながらつまみをむさぼっている動画だ。昼間の、元気で社会的なメンタルの私が見れば、非常識のオンパレードで汚いだけの動画に本気で不快感を覚えるであろう仕上がりになっている。眠れない夜は、この動画を見る。まじやべぇなこいつ、と笑える。そして、なんだか気が緩むような気がするのだ。こんな人も世の中にはいるんだし、気楽に生きようと、そういう気持ちになる。あけすけに言ってしまえば、下を見て安心しているのだろう。その私の行為も、そして動画の中の彼の行為も、きっと正しいものではない。「良い生き方」からは到底外れたものだろう。でも、たまには気を抜かないと、私たちは生きてはいけないのではないだろうか。だって、正しいものだけでこの世が出来ているなら、こんな仕上がりにはなってないはずだもの。だから、辛いときくらい、ちょっとだけ楽な方に流されることは許してほしい。いや、自分自身を許してあげたい。その自分を許す行為が、私にとってハイボールを飲む中年男性の動画を見ることなのだ。
ナイーブというか、なんだか痛々しい文章になっている気がするなぁ。みんなはどうやってむなしい夜を乗り越えているんだろうと、時々疑問に思う。以上。