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GeForce RTX 3080 Ti の低電圧化に挑戦した話


注意

本記事は自分の所持するRTX3080Tiを低電圧化してみたよという報告です。
扱いとしてはオーバークロックになるため自己責任で行う必要があります。
ご注意ください。

背景

やってみたかったから。調べてると実際にRTX3080Tiの低電圧化を実施している方もいらっしゃった。メーカーも目標周波数も私とは異なるためその電圧設定は鵜呑みにはできなかったが、参考にさせていただいた。

RTX3080Tiについて

仕様

使用するのはMSI RTX3080Ti VENTUS 3X 12G OC。
光らないことが購入理由の一つでもある。
詳細は以下を参照されたし。

参考サイト(https://jp.msi.com/Graphics-Card/GeForce-RTX-3080-Ti-VENTUS-3X-12G-OC/Specification)

消費電力

RTX3080 Tiの消費電力は350Wに達する。軽めのゲームをやっている分には問題ない。しかし、使用率が100%になるような強烈な負荷がずっとかかっていると350Wを消費し続け温度も上がってしまう。ただでさえ、20万円近いお金を出して購入したグラボである。貧乏人の私としては、ゲーム中の電気代や高熱による故障が頭をよぎってしまうのである。

素の状態でのベンチマーク

ベンチマークを見ていく前に使用PCのスペックを簡単に紹介する。

CPU:i9-12900KF (P-Core 5.0 GHz, E-Core 3.9GHz OC, VF Point 低電圧化適用済)
マザーボード: MSI Z690 TOMAHAWK WiFi DDR4
クーラー: ROG STRIX LC II ARGB 360mm簡易水冷
RAM : DDR4-4000 16GBx2
SSD: PCI Express 3.0 NVMe M.2 SSD 1TB
GPU : RTX 3080 Ti
電源 : 1000W GOLD
ケース : Fractal Design Define7


(※CPUは低電圧化とOCの両方を実施している。CPUの低電圧化については様々なサイトを参考に実施したものであり、3年間安定動作しているため常用OCとして運用中。OCの効果はあまりないが低電圧化の恩恵はけっこう受けている。一度i9-12900KS化を目指したが、負荷テストでブルスクの連発の末しばらく起動しなくなったり、メモリが4000MHzで動作しなくなったりと大いにやらかしたため諦めた。)

高負荷で有名なFF15ベンチマークでは、その消費電力の高さを垣間見ることができる。以下の検証環境はWQHDの高品質である。340Wもの電力を消費し続けていた。負荷は十分にかかっており、温度は75℃前後を行き来する。

WQHDの普通のゲームではそこまでVRAMを圧迫しない。
これがRTX3080Tiがゲーム用RTX3090と言われる所以。

CPU負荷も以下のようにかなりのもの。i9-12900KFといえど満遍なく負荷がかかる。後半のコアはE-Coreで前半のコアはP-Core表示。P-Coreはハイパースレッディング機能があるがE-Coreにはない。しかし、P-Coreでもハイパースレッディングをできる限り利用しないような負荷の配分が実施されている。消費電力は70~90Wであり、温度も57℃と良好。フル負荷にすると爆熱なだけで、i9-12900KFは優秀なのだ。

こんなにたくさんコアあって使いきれんのかよって私も思ってました。

スコアは13724となり、このPCでのRTX3080Tiの通常運転時のスコアとなる。

スコアはOCメモリやOC CPUの効果もあってネット上の数値よりちょっと高め?
驚異の340W消費。冬場にゲームしてると部屋が暖かくなってくるんだ、、、

加えてFF14ベンチマークWQHD最高品質の結果も載せておく。

DLSSに対応したんだね。

結果はスコア20003,平均フレームレートは140fpsであった。
ベンチマーク中は200fps近く出る場面もあったものの、重たい場面では100fpsまで落ち込むなどなかなか重たいベンチマークになってきたなという印象であった。今回下げることを目標としている消費電力は終始340W前後を消費していた。

今回の低電圧化はこの消費電力が基準となる。
以降の検証はFF14ベンチマークを使用していく。
理由としては最も新しいからだ。

低電圧化の手順

0. 低電圧化とは

GPUコアにかかる電圧は個体差関係なく安定動作するようにちょっと高く盛られて設定されている。このマージンを削っていきましょうというのが低電圧化である。GPUコアクロックが高くなるほど要求電圧は上がる。しかし、同じコアクロック電圧でもより低い電圧で動作させることができれば消費電力を落とすことができる。これは精神的な安心につながる(壊すかもという別の懸念はもちろんある)。

低電圧化の結果は個体差に依存するため、正解がない。
手探りで電圧を下げ、ちゃんと動く限界の電圧を見極める必要がある。このちゃんと動くというのも定義が難しい。基準がないのだ。この時、電圧を下げ過ぎるとベンチマークがクラッシュしたり、OSがクラッシュしたりする。一応電圧を上げるよりは安全性は高いらしいが、データが吹っ飛んでも大丈夫なようにバックアップはしておこう。

1. グラボがベンチマーク中どのくらいのクロックで動作しているか確認

自分が購入したグラボのメーカーサイトに行くと、コアクロックが記載されているためこれを基準とする。私の場合はBoostクロックが1695MHzのためこれが基準となる。

しかし、ベンチマーク中はこれ以上のクロックで動作していることが多々ある。というのも、GPUは温度と動作限界を自分で判断し、可能な範囲でクロックを上げるという機能を持っているらしい。私のグラボでは1920MHz程度まで上昇しているのが確認された。

グラフィックボードには、「この電圧ならこのクロック」という対応関係があるらしい。それはMSI Afterburnerというソフトウェアを用いて確認することができる。

1100mVくらいから1935MHzで固定されている。
OCCTは1950MHzで動作したことを検知していた。謎である。

温度に余裕があればクロックを上げ(電圧が上がる)、それによって温度は上がる。上がり過ぎればクロックを下げて(電圧が下がる)、温度は下がる。これをいい感じに制御してGPUは動作している。

つまり熱さえ何とかなればハイクロックで安定してくれるのでは??という疑念が浮かぶ。熱を抑えるためには電圧を下げる必要がある。しかし、電圧を下げればハイクロックを維持するのが難しくなる。

シンプルな低電圧化としてはブーストクロックが維持できる下限電圧を見つけるというものがある。この設定を実施するとブーストクロック以上には上がらなくなる代わりに、ブーストクロック維持できる最低限の電圧がかかり続ける。これにより、より少ない消費電力で十分な性能を発揮できるようになる。私はここから飛躍したい。それより高いクロックはいくらの電圧で安定動作するのかを見つけていきたいと思ったのだ。

2.目標とする最高周波数を決める

今回で言えば1935MHzなどはお目にかかれなかった。1845MHzくらいの数値をベンチマーク中はよく見ていたように思う。しかし1845MHzが維持されていたわけではない。温度が上がりすぎて維持できないのだろうということが推測される。

MSI Afterburnerで確認すると、1845MHZはおおよそ987mVの電圧が印加されて動作する設定になっているようだ。

987mV-1845MHz

じゃあ1845MHzをより低い電圧で動作させることができれば、温度が下がるので維持できるようになる?と想像できる。とりあえずの目標を1845MHzにおける低電圧化ということにしよう。このCurve Editorを使用して電圧と周波数の関係を変更していく。いじり方はほかのWebサイトにたくさん紹介されているため、ここでは割愛する。

3.目標周波数で動作する電圧の探索

ここからは自己責任の世界。自ら動作不安定になるかもしれない操作を実施するのだから当然である。まずは1845MHzの時の電圧を100mV下げてみた。

GPUには887mVより高い電圧はこれにより印加されなくなる

再度ベンチマークを回した結果が以下。スコアは19938で初回とほぼ変わらず。しかしながら消費電力は常に340Wを消費している状態から290~310W程度まで減少。明らかな効果が見られた。同じ性能をより少ない消費電力で実現できたことになる。

結構効果があってびっくり

次はさらに減圧していく。

さあどうなる

結果としてはベンチマークは無事完走。スコアも誤差の範囲である。肝心の消費電力だが、265W~310Wと大きく揺れる結果になった。おおよそ295W付近を中央値として揺れていた。TDP350Wからは55Wの削減であり、温度は70℃前半に落ち着いていた。かなり安心な領域に入ってきたと言える。

次は825mVだ!と息巻いてベンチマークを回そうとしたがFF14ベンチマークはクラッシュしてしまった。どうやらこのあたりが限界なようである。

1845MHzというのは、ブーストクロックを大きく上回ったクロック周波数である。定格の1695MHzを上限とした調整を実施するのであれば、さらなる低電圧化と消費電力の抑制を実現できるように思う。どこまで詰められるかはGPU個体の実力と自分自身の根気次第である。

次にブーストクロックを上限として電圧を下げてみた。
1695MHzを800mVで回してみる。

770mVくらいまで詰められるのかしら?

結果としては、1800MHz以上出ていた部分を制限したのだから、スコアは低下。およそ3.6%の低下となる。フレームレート平均は135fpsであったが、消費電力は340Wから260Wに低下。こちらは23.5%の削減となった。消費電力の低下具合に対して性能の低下は僅かであり、プレイするゲームによってはこちらの設定の方が良かったりするかも。例えば、今回だと144fpsには届いていないが120fpsには到達している。144fpsと120fpsの違いが重要でない場合は、モニターを120Hzに設定し、低電圧化設定を今回のものにするというのも選択肢として有力だ。

20%以上の電力を奪っても3.6%しかパフォーマンスは変わらないすごい

本来であれば、クロックと電圧の関係をもっと詰めてどの設定が最も電力を抑えつつパフォーマンスをキープできるか検証すべきだが、私としては300W前後に電力を抑えられた段階で満足していることに加え、これより詰めていくことのリスクを考慮し、設定2の850mV/1845MHzをしばらく採用してみようと思う。

参考までにこのプロファイルでFF15ベンチマークを実行すると、デフォルトよりスコアが伸びていた。これはRTX3090に並んだのでは、、、?ゲームによって恩恵は異なるよう。しかし消費電力はしっかり抑えられている。

なぜか伸びたスコア。FF15のほうがハイクロックをキープしづらかったのだろうか。
340W消費していた電力は良心的なレベルへ

最後に

目指すクロック周波数設定が高かったこともあり、削減量は50Wで着地した。もちろん設定を緩めればさらに消費電力を抑えていくことは可能だろう。1695MHz設定なら120Wくらい削減できそうな気配である。200W付近まで削減できればファンの音も静かになってくる。

自己責任で行う作業のため、安易にやらないほうがいいことは言うまでもない。

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