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「噛ませ犬」か「スパイス」か〜医学部再受験生、学士編入生の”価値”
昔はよくプロレスの中継を見ていた。なぜかプロレス好きだった母の影響だ。
新日本プロレス、全日本プロレス、国際プロレス…。まだ今のような群雄割拠の時代ではなかったので、新日本はテレビ朝日、全日本は日本テレビ、国際はテレビ東京で放映していた。
古舘伊知郎氏が名を挙げたのも、新日本プロレスの中継だ。馬場さんより猪木さんの方が好きだったので、新日をよく見ていたような気がする。
で、あの発言が出てくるわけだ。
記事によれば1982年10月8日とある。当時私は小学5年生だった。
10月8日のメインイベントの時に事件が起きる。それは3対3のタッグ戦の入場の順番で長州が藤波に突っかかっていった。それは藤波の前を歩いて入場すること、藤波の前にコールされることに我慢ができなかったのである。
その試合では藤波のタッチ拒否から始まり、試合中に同じチームである長州藤波で叩きあったりする場面もあった。試合後にもリング上でお互い激しく争い続けた。
その背景には海外帰りでエネルギーが余っていたこと、どこか表に出ていきたかったことがあった。新日本の中において華々しい藤波と比べての自分の境遇に不満があったのである。
その後、長州は「俺はお前のかませ犬じゃない」と発言、藤波及び体制に対して牙を向いたのである。後日談ではあるが、実はこれは長州が「藤波に嫉妬を含めていろんな感情があって起こした行動だ」と告白したことでメディアから強く発信された経緯がある。特に古舘アナによるリードの功績が大きい。
藤波との激しい抗争に入った長州は反体制組織として革命軍を結成する。この革命軍の結成でさらに新日本での反体制派のポジションを確立していく。その後、革命軍はメンバーを増やして維新軍へと進化し、新日本と全日本で活躍することととなる。
噛ませ犬…。もとは闘犬の言葉だ。
闘犬で、訓練のために若い犬がかみつく相手となる犬。試合から引退した老犬などが使われる。転じて、格闘技などで、引き立て役として対戦させる弱い相手のこと。
これは自分に向けた言葉だなと思ったことがある。
そう、医学部に遠回りして入った再受験生、学士編入生の立場だ。
一部の大学を除いて私たちは少数派だ。メインはあくまで高卒で入った若い学生だ。我々のような人間は、その若い学生に刺激を与える噛ませ犬、あるいはスパイスの役割でしかないと思ったことがあった。
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