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政治を動かす7つの方法
昨日、アメリカのNIHの若手研究者が研究所と契約をしたというニュースを紹介した。
このニュースに触発されてか、X上では科学と政治をめぐる様々な意見が飛び交っている。
個別にはご紹介しないが、昨日に引き続き、(現場の研究者が)政治を動かす方法についてあれこれ書いてみたい。
すでに何度かこの問題を取り上げているが、より参考になりやすいように再構成してみたい。
無料部分でだいたい読めるようにしている。
1.SNSやインターネットに書き込む
SNSは思いをつぶやくところだからいくらでも文句なり愚痴なりを言っていいと思う。表現の自由だ。実際ブログに書き込んだことが政治を動かしたことがある。
ただ、それは第一歩。それで何かが動く可能性は高くはない。
2.政治家に意見をぶつける
次にやることは、文科省なり政治家なりなんなりに話を持っていくことだ。
自分が住んでいる選挙区の政治家というのは一つの窓口だ。有権者の意見を聞いてくれる可能性がある。
メールやご意見でもいい。 民主党政権のとき、鈴木寛氏は、どんどん政治家に意見を送ろうと盛んに言っていた。
ただ、これも数が必要。何人もの人が同じようなことを次々言っている、これは何か問題が起こっているに違いない、と思わせる必要がある。何度か書いているが、ある政治家の秘書の方に、若手研究者のキャリア問題についてあれこれ言ったところ、
「これは本当に問題なのか。ほかに誰も言ってきていない」
と言われたことがある。ある程度の数がないと政治が動く正統性がないということだ。署名活動をして、数を示すのも重要だ。
3.組織を作る、組織で動く
これは昨日書いたことにも通じるが、可能なら結集、組織化したい。NPO、労働組合、運動体など、まとまって動くことで影響力が増す。
新しく組織を立ち上げることだけでなく、既存の組織で行うのもよい。労働組合がある職場などでは、それをてこに動くこともできる。
4.データを作る(白書を作る、本を出す)
こうした組織を作って行うことは、根拠となるデータをまとめることだろう。たとえばアンケートを取るなど、現場の声を集約するのも大きい。
荻上チキ氏は「白書をだせ」と述べている。こうした書籍やデータなどがあると話が通じやすい。こうしたものを持ってロビインクなどをすると効果的になる。
私自身の話になるが、NPO法人を作り、博士漂流時代を出版したことで、政府の会議に呼ばれるようになった。
5.ロビイングをする
政治家へのアプローチ、ロビイングをすることも重要だ。ただ、ロビインクも、与党政治家から話を持っていかないといけないなどルールがあったり、予算が作られる過程などタイミングもあるので、戦略が必要になる。
6.「組織内候補」になる
さらにその先に、組織の代表を政治家として送り出すという方法がある。
20万人を超えると、政党の「組織内候補」になれる可能性があり、参議院比例全国区で一議席を確保できるかもしれない。
ただ、近年は集票力に陰りが出ている団体も多い。そして、こうした組織内候補を出す行為は、「利益誘導」になってしまうとして批判の声も大きい。
7.国会議員になる
組織内候補も国会議員になる一つの方法ではあるが、個人として政治家になる、科学党を作るという人がいる。そうしたことを否定するつもりは一切ない。
ただ、政治家になるハードルはなかなか高く、簡単ではない。アメリカでさえ、科学系のバックグラウンドを持った議員は少ない。
サイエンス記事。
— 榎木英介 独立系病理医(学士編入) (@enodon) December 18, 2024
先月の米下院議員に当選した民主党のルス・リバス氏を取り上げる。
"リバス氏は、医師を除く63人の新下院議員のうち、科学のバックグラウンドを持つわずか4人のうちの1人"
"女子向け放課後科学プログラム「DIY Girls」の創設者"
リンクはリプ欄。
しかも、国会議員になったからと言って、力を発揮できるとは思えない。東大総長から文部大臣になった故有馬朗人氏が死の直前に残した嘆きは、政治の難しさを感じる。
ならば政治家になるより政治家を利用する方が良いのかなと思ったりもする。
政治に影響を与える方法はいろいろあり、様々な先行事例があるので、それも参考にされると良いと思う。以下では参考になる本を紹介する。
参考になる本
20年以上前の古い本だが、NPO法人を立ち上げるころにむさぼるように読んだ。トランプ時代になって、こうした古典的な政治の動かし方は古いのかもしれないが、まだまだ参考になる。
社会運動というと、運動そのものを否定する人もいるが、声をあげてもいいのだ、ということを教えてくれる。中高生向けの本だが、行動することに抵抗感がある人に一読をお勧めする。
絶版のようなので、Kindle版ご紹介。ロビイングのイロハが書かれているので、参考になる。
本文中でご紹介した荻上チキ氏の本。政治を動かす方法を分かりやすく書いています。
新刊本・政策を動かす方法を詳説。
上記の著者西川氏が取締役をしている千正組からは、以下のnoteが出ていおり参考になる(停止中)。
最後に、私が20年前に書いた文章を紹介する。
20年前、私はNPO法人サイエンス・コミュニケーションを立ち上げ、政策をどうやって動かすべきか模索していた。そのころ、アメリカの全米科学振興協会(AAAS)を知り、こうした科学政策を動かす組織の存在に強く惹かれ、あれこれ調べてみた。すると世界各地にいろいろな組織があることを知ることができた。
日本だってこうした組織を作ってどんどん政治とかかわっていこうと思っていた。ところが…。
有料部分では私の行動と挫折、そして今の思いを綴ってみたい。
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