「万能の天才」の呪い
研究者のキャリアパス問題にかかわって久しい。
最初は自分が当事者だった大学院生のころ、自分事としてこれからどうなるのだろうと思い、メーリングリストを立ち上げたりして、同じような境遇の仲間とあれこれやりとりした。
その後は経験者の一人として、自分自身はなんとか別の道(医師の道)に行くことでなんとか人生を立て直したが、まだ困難に直面している人たちに向けて情報発信をした。その初期の成果物が「失敗しない大学院進学ガイド」だ。
こうして長い間、それこそ今だって活動している。20年以上発行しているメルマガにも必ずキャリアパスニュースを載せている。
そんな活動を派手に宣伝しているわけではないので、「お前はこの問題から逃げた」と言われたことさえある。もちろん世界を動かせたとは思わないし、政府の会に呼ばれることも今はない。力不足は自覚はしている。しかし、じゃあ、何をしたら逃げていないことになるのか。
この複雑な世の中を動かすのは簡単ではない。それこそ総理大臣になったとしても、利害対立のなか、できることは限られている。
まあ、何をやっても批判はあるので、そんなの気にせずやっていくしかない。
ちょっと脱線したが、本題に入ろう。
この四半世紀、この活動をしてきてさんざん言われてきた一つの言葉がある。
それは…。
「博士号を取得するほど優秀ならば、仕事を見つけることなど簡単だろう」
という言葉だ。
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