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「不正のトライアングル理論」で考える医療事故調査〜AIとの対話を通じて
先日「不正のトライアングル」理論について書いた。
機会、動機、正当化の3つが不正を起こす理由であり、不正を防止するためには、それぞれに対応する必要がある。
研究不正で言えば、以下のような対策が考えられる(再掲)。
不正のトライアングル理論に基づいて、研究不正を減らすための対策を考えると、以下のようなアプローチが有効です:
### 1. 機会(Perceived Opportunity)の削減
- **厳格な監視とチェック体制の導入**:研究データの管理や実験手順の監視を強化し、不正行為が発生しにくい環境を作ります。
- **データの透明性の確保**:データの共有や公開を促進し、第三者による検証を容易にします。
- **内部統制の強化**:研究プロセス全体にわたる内部監査を定期的に実施し、不正の兆候を早期に発見します。
### 2. 動機(Perceived Pressure)の軽減
- **現実的な目標設定**:研究者に対して過度なプレッシャーをかけないよう、現実的で達成可能な目標を設定します。
- **サポート体制の充実**:研究者が困難に直面した際に相談できるサポート体制を整え、精神的な負担を軽減します。
- **報酬制度の見直し**:成果だけでなく、プロセスや努力を評価する報酬制度を導入し、短期的な成果主義を避けます。
### 3. 正当化(Rationalization)の防止
- **倫理教育の徹底**:研究倫理に関する教育を定期的に実施し、不正行為の重大さとその影響を理解させます。
- **倫理規範の明確化**:研究機関や大学が明確な倫理規範を制定し、全ての研究者に遵守を求めます。
- **不正行為の厳格な処罰**:不正行為が発覚した場合には厳格な処罰を行い、他の研究者への抑止力とします。
機会と正当化は割と対策が立てやすいが、動機に対してどうしていくかは難しい。
出世したい、生き残りたい、名をあげたいといった動機という内面に対して有効な手段があるのか。
過度な競争を緩めていくというのはすぐに思いつくが、競争的環境をゼロにはできない。よくネット等で話題になる「確信犯」にはなかなか動機を減らす効果はみられない。
そこで、機会、正当化を減らすための策に力を入れたほうがよいということになる。
ところで、以下の記事では、この不正のトライアングル理論を医療過誤(注射ミス)に当てはめた図が出ている。
表では企業不正・医療過誤・FFP・QRPを対比している。まず企業不正と医療過誤を対比してみよう。故意に引き起こされる企業不正と異なり,医療過誤は医療従事者の過失(ミス)に基づく。そのため「動機」と「正当化」は存在しないが,「機会」があるために現実には医療過誤が発生し得る。例えば注射ミスでは,医療従事者には「動機」と「正当化」はない。しかし注射の際に周囲がチェックする手続きが存在しないことが「機会」となりミスにつながる。故意に行う不正と異なり,「機会」があるだけで結果としての医療過誤が起こり得るのである。
医療過誤は機会だけで発生する。
では、過誤を超えた医療事故ではどうなるのか。
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