【映画レビュー】裏切りのサーカス
初回の私の感想「犯人以外さっっっぱりわからないが、理解できたら面白いことは分かる」
面白さ ★★★★★
トリック ★★☆☆☆
人におすすめできる ★★★★★
フォロワーさんが絶賛してたので楽しみにしていたスパイもの。
金髪のベネディクト・カンバーバッチとかレアすぎる!と思って意気揚々と見ましたが、まぁまぁ内容が難しい。
周回前提で作ってるなという感じがします。1周目なんて登場人物の名前覚えるだけで終わってしまった。軟弱な頭め。
タイトルの「サーカス」というのは英国諜報部MI6の愛称。
どっかのダブルオー部隊の映画と違ってあまりどんぱちはせず、心理戦、情報戦のスパイ映画。
現代は「Tinker,Tailor,Soldier,Spy」という、作中に出てくるコードネームから取っているが、この語感のよさ…良い…。
オープニングでサーカスを去っていく二人の男を背景に、この英題がフッと入ってくるのですが、もうめちゃくちゃおしゃれなの。フォント教えて欲しいフォント。
【ざっくりしたストーリー】
1970年代、米ソが冷戦真っ只中のイギリス。
元MI6のスマイリーは「サーカス内部にスパイがいるかもしれない」という国の偉い人の要請によって、引退したのに調査をすることになる。
ちょっと危ない橋も渡りつつ、しかし相手に気づかれることなくスパイを見つけ出すことに成功し、ラストはサーカスのトップに就任するのだった。
そう、まとめるとこんなに簡単な内容。
でも中身は全然簡単じゃない!
まず時系列。なんのご説明もなしに現在と過去回想が行ったり来たりするので、「今はいったいいつの話なんだ…?」となりがち。
次に登場人物。苗字、名前、コードネーム計3種を覚えないと行けない。これが1週目が非常に辛い。
全体的な情報量が多いので、初回は吹き替えの方がいいのかもしれません。私はいつものように字幕から見てしまいましたが…。
そして個人的に一番ネックだったのが「カーラ」という名詞。
この名詞がなんなのか説明がないおかげで、私は途中まで迷子でした…。
この「カーラ」というのは「ロシア諜報機関の偉い人の名前」ということが理解できると話がグッと入ってきます。
この「カーラ」という人、なんと作中で1回も顔が出てきません。袖しか出てこない。すごくない?めっちゃ重要人物なのに!むしろラスボスなのに!
おかげで「カーラ」という名詞が一人歩きするんです。作中でも、視てる側の頭の中でも。
作中で「カーラ」についての印象が「顔が思い出せない」とか「しょうもないような男」とかだったりするんですけど、日本のスパイ作品「ジョーカーゲーム」で結城がスパイに必要な要素にそんなことを挙げていたな〜とちょっと思ったのでした。
(ジョーカーゲームはアニメも成功して知らないオタクいないような気もするけど、原作も面白いのでぜひ読んで欲しい。亀梨には悪いが映画などなかった)
長くなったが、以上の3点の障壁を乗り越えると、この映画がとても面白いということが理解できる。
というかある程度ストーリーを頭に入れてから見ると、序盤から伏線の嵐だったということが分かる。とんでもなく情報量が多い映画。
犯人を当てるストーリーではないからバシッと言ってしまうが、(というか途中からもうスマイリーがこいつの話しかしないな、という感じになってしまうのだが)、スマイリー(ゲイリー・オールドマン)とビル(コリン・ファース)の心理戦が本当に面白い。
こんなに、こんなにもコリン・ファースは初期の初期から仕組んでいて優位なポジションに立っていたのかと。そしてゲイリーは上司なのに弱点をつかれたせいで、無力化されているのが明らかになっていくのが辛かった。
これは男同士のマウントの取り合いの話なのだ…。
そして語らずにはいられない、ビルとジム・プリドー(マーク・ストロング)の関係性。
作中でどういう関係だったかという明記はないが、ビルの「男(愛人)がいるんだ」というセリフ、互いのアイコンタクト、作中でちょいちょい出てくる二人のツーショット写真の扱われ方。
愛人だったのか親友だったのかはともかく、お互いに確かに特別なポジションだったのだということは分かる。
(とはいえツーショ写真は最初の方で出てくるのだが、私がこの二人の関係性を察したのは最後の最後だった苦笑)
親友、愛人、裏切った男と裏切られた男、そして殺された男と殺した男。
エモすぎて気絶しかけたわ……
その関係性のマイナスな方向の変化に…もう縁は切れているのに一概に恨むことができていないあたり…そして最後には救ってしまうあたり…
ビルが撃たれたときの血の涙の演出。むしろ監督が憎い。
最後はスマイリーのスマイルで閉じられるのだが、作中で笑って終えられるのはスマイリーだけです。他のみんなは何かしら大切な人を失って終わる。スマイリーだけが取り戻している。あの奥さんはまた不倫するかもしれないけれども。
兎にも角にも何回も観たくなるような映画でした。ありがとうございました。
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