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今更ながら『メタバース進化論』の感想とか

少し前に発売された『メタバース進化論』をやっと読み終わりました。データに基づいてメタバースを取り巻く現状が分かりやすく丁寧に、そして正直に記されている。すごくバランスのいい本だと感じました。徹底したデータに基づいた分析はさすが『バーチャル美少女』と思いました。

私が特に印象に残ったのは『メタバースで生きていく覚悟』というフレーズです。

私に「メタバースで生きていく覚悟があるのか?」…と問われると正直「わからない」が答えです。
3Dモデルを作りたくてVRCを始めて約4年。色々あり今はVRC内のイベントのお手伝いをさせてもらっています。VRCを始めてから数々の素晴らしい出会いがあり、VRCをしていなければ出会う事のない尊敬できる人や大好きな人にたくさん出会う事が出来ました。

そこで「良い出会いがあり、良い趣味が見つかって良かったね」で終われば、この話はここで「めでたしめでたし」で終わります。
でも現状はそうはなりませんでした。

休日など大半の時間をVRC関連の事で費やす自分は、リアル世界とのズレがどんどんと大きくなっていきました。
もともとインドアな性格もあり、VRCを始めてからはただでさえ少ない外出機会も減り、休日はほとんど家から出なくなりました。会社の人などと話しが全く合わなくなり、またただでさえ狭い脳容量の大半をVR関係が占めており、仕事やリアルで覚えないといけない事が頭に全然入ってこないような事が多くみられるようになりました。
もともとの不器用で要領の悪い性格が原因なので「VRCが悪い」とは言いません。でもリアル世界を「リアル世界」と認識してしまっている時点でそこは自分が専属で生きる世界ではなくなっているのだと思います。常にネトゲを2つ同時進行している状態。各世界に割ける時間も当然半分。専属プレイヤーには適わなくなっていきます。
「VRCは所詮ゲームなのだから、趣味にする努力をしよう!」と頑張った時期もありましたが、やっぱり馴染めず無理でした。かといってVRCでお金を稼げるわけでもなく、プログラミングができる訳でもない、つよつよモデラーでもない、Vtuberでもなければ、イベントディレクションや外国語ができる訳でもない、ただのバーチャル一般人。そもそも「メタバース大好き!絶対普及させるんだ!」って意欲もない。
VRCを始めてから私の生きる世界は、メタバースの世界でもリアル世界でもなくなりました。

では最初の問い「メタバースで生きる覚悟があるのか?」に戻ると、答えは「わからないけれど、きっとリアル世界には戻れないんだろうなと思っている」が答えになります。

『生物の進化』と聞いて、私が思い出すのが「生物が海から陸へと上がった瞬間」です。専門家ではないので詳しい進化の過程などは知りませんが、きっと「陸に上がらないといけない事情」「海には居られない事情」があったのだと思います。
一番初めに陸上に上がった生物はどうなったのでしょうか?海から出た瞬間呼吸できずに死んだんでしょうか?きっと海の生物からは「陸に憧れたバカなやつだ」と罵られたのかも知れません。そんな数多のバカの死体を踏み越えて、肺呼吸を習得し、重力に耐える筋力を付けたモノが陸に上がり、進化をしたのだと思います。 

「進化」とは案外、非効率な事なのかも知れません。メタバースが流行る流行らないは分かりませんが、私は「海から出た瞬間呼吸できずに死んだ魚」と自分を重ねずには居られません。「海で静かに暮らすこともできず、でも陸に上がるだけの肺も筋力もない。それでも海には居られない、行かなければいけない気がしている」きっと苦しかったんだと思います。

『メタバースに生きる覚悟』とはその愚かな死体になる覚悟があるか?『メタバースで生きていく覚悟』とは裏を返せば「メタバースで死ぬ覚悟があるか?」なのだと思います。極端な話ですが。 

現代日本ではすぐに死ぬ訳ではありませんが、仕事をしてお金を稼いで結婚して子孫を残さなければ血筋は途絶え私という存在のDNAは滅びます。リアル世界でも生きられる可能性が低いのならば、「陸に憧れたバカな魚」として死ぬのもありなのかな?とは思っています。

ただ生物の進化とは読めないもので、かつて繁栄を極めた恐竜が滅んだように、環境は移ろい時勢は常に変化しています。生きていればいつかチャンスが巡ってくるかも知れない。服を着たサルが地上を支配したように、何もできないバーチャル一般人でもメタバースに生きられる日が来るのかも知れない。そう思いながら「ただ生きてみよう」とは思っています。
そして例え道半ばで倒れようとも、この世界で出会った大切なフレンド達の道標くらいにはなってフレンド達の幸せを祈り続けたい。私はそう願います。

『メタバース進化論』この本を読む人は覚悟したほうがいい。あなたは『メタバース』という未知で魅力に満ちた大陸を知ってしまう。
そのメタバースへの入り口は『メタバースで生きていく覚悟』という鍵で開く。別の世界の出来事として傍観者として生きるのか?当事者として戻れない未知の旅へと飛び込むのか?

親切で可愛らしいバーチャル美少女は本書を通じて問いかけているのかもしれない。

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