「テロ」の意味とよくある誤解

記事を読んでいただき誠にありがとうございます。
焉明教の教祖、宇治味アヤメです。

今回はこのようなテーマで語らせていただきます。




1・経緯

テロリズム_いわゆる「テロ」と聞くと、思わず宗教やカルトを連想するかと思われます。
投稿者自身もこれらのワードを聞くと、どうしても読者の皆様方と似たようなイメージが出てきます。
ですが、よく意味を調べると「テロ」という言葉を正しく使用している方が、かなり少ない印象を受けたため、改めて論じてみたいと思います。



2・「テロ」の語源

先ずは、投稿者の手元にあった、いくつかの書籍を参照してみます。

暴力的手段を用いて、敵対する勢力に対し圧力をかけること、威嚇することをテロルと呼び、そのテロルによって政治的な目的を果たそうとする姿勢・主義・傾向をテロリズムと呼ぶ。

『戦慄のテロ事件FILE』はじめに

どうやら、「テロル」という言葉が変質したものが「テロリズム」というそうです。
どのような歴史的経緯で「テロ」は概念化したのでしょうか。

1792年9月、フランス革命でのことである。パリの牢獄内では1万6000人が殺害された上、恐怖政治が敷かれていた。その行いはフランス語で恐怖を意味する「テラール」という言葉で表現された。それをドイツ語化すると「テラル」、さらに英語では「テロ」。これと思想の「イズム」が合成され、「テロリズム」として定着し、現代に至る。

同上 p52

語源は仏語の「恐怖」から来ているとのことです。個人的にはかなり納得のいく語源となります。
語源の補足をしておくと
テロル→ドイツ語の「テラル」=恐怖
テロ→フランス語の「テラール」=恐怖
になります。
「テロ」は我々人間にとって深い問題です。もっと詳しく見ていきましょう。



3・テロリズムの定義とその類型

次に、テロリズムの定義をします。

ペープは、「テロリズムとは、国家以外の組織が、彼らが設定したターゲット層を攻撃、威嚇することを目的とした暴力行使」とし、一般的にテロリズムには支持者を獲得することと、敵対者の行動を変えさせることの二つの目的があると述べている。テロ組織は、その攻撃によって敵対する政府の政策を変更させると同時に、テロを行うことの正当性を広く民衆に訴え、支持を獲得することを目指す。

※太黒字は投稿者
※ロバート・ペープ(Robert Pape) シカゴ大学の政治学者

『テロと救済の原理主義』 小川忠 p182~183

テロリズムには①支援者確保②敵対者の行動変更、2つを目的に行う、組織ぐるみの暴力行為を指すようです。

続いて、テロには主に三種類に分けられるとも述べています。

ペープはテロリズムを「示威的テロ」(demon-strative terrorism)「破壊的テロ」(destructive terrorism)「自爆テロ」(suicide terrorism)の三つのタイプに分類している。
示威的テロは、それがもたらす政治的衝撃を計算したテロである。すなわち、味方側のより広範な支持をひきつけ構成メンバーを獲得することを目指したり、敵対者のなかに存在するハト派の関心を喚起したり、第三者による敵対者への働きかけを狙って仕掛けたテロだ。攻撃によって敵対者に対してダメージを与えることに主眼を置くものではない。人を殺めたりする行為は彼らが掲げる政治的大義を傷つけ、世論の支持を失う可能性が高いので、極力避けるというのが基本的なスタンスである。
破壊的テロはより攻撃的で、敵対者に対して損害を与えることを主目的とする。とはいえ、損害がおよぶ範囲、攻撃対象となるのは軍・警察や政府高官等、限定したターゲットだ。犠牲者が増えて世論の支持を失うことに対する政治的配慮がそこには働いている。
敵対者にとって最も損害が大きく、恐怖感を植え付けるのが自爆テロだ。巻き添えの犠牲者が出ることで、世論の支持を失い、第三者からも非難される可能性が高い。それにもかかわらず、自爆テロを敢行するのは、敵対者との力関係において、テロ組織がより弱い立場に置かれているケースが多い。自爆テロにおいて、世論獲得を狙った示威的な動機によるもの、限定されたターゲット層の暗殺といった破壊的な動機によるものもあるが、近年はより多くの人間を無差別に殺傷しようという意図をもったテロ行為が増えている。

※太黒字は投稿者

同上p183~184

テロリズムには
(1)示威的テロ
(2)破壊的テロ
(3)自爆テロ
に分けられます。
表にするとこのような感じでしょうか。

こうして見ると、「テロ」=自爆テロの印象が大分強いのかな、と感じます。
以上が基本的な「テロ」の解説になります。
ここから、本題に入っていこうと思います。



4・投稿者の意見と感想

先ず真っ先に挙げたいのは、「テロ」=宗教、ではないという点でしょうか。テロの語源の発生要因_歴史的背景を考慮するなら、人類最初のテロ(集団)はジャコバン派を率いるロベスピエールの恐怖政治になります。
彼は彼なりに自由主義や民主主義を実現しようと躍起になりましたが、行動だけ見るなら、ただの粛清であり、彼のイメージは断頭台に転がる無数の首でしょう。テロは政治思想と独裁から誕生していると言えるのではないでしょうか。
また、過激派のイスラーム組織の活躍以前には、ロシア革命や、日本で言えば浅間山荘やよど号ハイジャック事件などの、いわゆる赤色テロが約一世紀にわたって行われました。
このように羅列していくと、宗教、政治、経済思想、犯罪組織…etcとテロは多岐にわたることが理解できます。
また、近年話題?になっているヴィーガンや、環境活動、シーシェパードの一連の行動も、非常に政治的である以上、彼ら少数の思想をもった団体が、特定の国家や団体に不利益を被る場合、それらが単なる友愛的活動、環境保護、生態系保護の範疇を超えて「テロ」の定義に当てはまる可能性は非常に高いと思います。
あるいは、逆のことも言えます。業務中の迷惑行為を「バイトテロ」と称したり、高齢者ドライバーの衝突事故を「暴走テロ」などと揶揄するのは、意味的に間違っています。
投稿者としては、テロリズムの行為=暴力には、反対の立場ではございますが、彼らの行動理念については、その都度調査を心掛けるようにしております。なぜならば、彼らのテロ全てを否定することは、彼らの中の、もしかしたら有益な、政治的理念をも批判するからです。
例えば、三島事件は好例かと思います。
三島を含めた5人組が自衛隊駐屯地で総監を拘束し、駆けつけた幕僚8人に重軽傷を負わせ、演説の後に三島が切腹自殺を図った事件になります。
彼の行動だけを取り上げるなら、間違いなく「テロ」でしょう。ですが、彼の行動理由は憲法九条の改正でした。現代では、憲法_特に九条の改正は政権与党である自民党の悲願となっております。
このように、後世の人間から評価されるような「テロ」もあります。
彼らのような評価に値する「テロリスト」(目的が達成したら「革命家」と呼ばれるのでしょうか)の信念や思想に賛同できるケースがあります。
それを考慮した時に、バイトテロや暴走テロには、政治的な信念が存在しません。そのため、そのような行為に「テロ」と付けるのには問題があると考えます。
何れにしても、同じ思想を有している個人なり組織のうち、「テロ」に走る過激派が総じて目立ち、穏健派が目立たないのは、世の常なのでしょうか。

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