(ネタバレ無し)宗教家が映画「わたしの魔境」をレビュー

今回は映画のレビューをしたいと思います。
流石に宗教に関する作品に絞っていきますが、今回はこちらの作品になります。


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1・主なあらすじ

ざっくりと解説すると、オウム真理教をベースとした架空の宗教が、令和の時代にあったらどうなるのか、という作風になっております。
ですが、デジタル化が進んだ現代とカルトの融合がメイン、というわけではなく、実在の宗教家や元オウム真理教の信者などの、テーマに関わる方々のインタビューと架空のストーリーが混ざって話が進行するため、大分好みが分かれる構成かと思われます。個人的には観辛い印象を持ったため、オリジナルストーリとドキュメンタリーを分けて評価する必要があると考えております。

2・オリジナルストーリーの感想

冒頭から入信するまでのストーリーは、結構雑な印象を受けました。入信してからのストーリーには迫力があり、カルトの恐ろしさをしっかりと感じ取れました。トータルの評価としては、今一かなぁと思います。
いっそのこと、インタビューを最小限に削って、最後に持って行き、ストーリーをがっつりドロドロな感じにした方が観やすかったのかなぁ…


3・ドキュメンタリーの感想

一方、こっちのインタビューは非常に見ごたえがあり、非常に面白いです。
個人的に考えさせられた、平野喜之住職の発言を抜粋致します。
この方は、偶然にもオウム真理教の元幹部・井上嘉浩元死刑囚と同じ高校の出身で、井上元死刑囚と面会を行ってきたお方でして、死刑執行後は彼の遺志を受け継ぎ「Compassion(コンパッション) 井上嘉浩さんと共に、カルト被害のない社会を願う会 」を創設しました。また、同氏は「日本脱カルト協会」の理事も務めております。

人間には、自分で判断して、そして自分で責任を取る、ということが、とても重いので、自分よりも優れた人に、自分についてのことを判断してもらって、それについていくと、失敗しないし、仮に失敗したとしても、その人の責任に出来ると、そういう、自分の判断を人に預ける方が楽だという面が、あると思うんですよね。
そういう面があると、カルトに引っかかっていく可能性が高いと思います。
それから、もう一つは、カルト教団に入った時に、おかしい、と思うことが多分起こってくると思うんですよね。おかしいと思ってることが起こった時に、どういう振る舞いをするか、ということなのです。その問題に関しては恐らく会社に入った時に、この会社はブラック企業である、この会社は不正をしていると思ったときに、自分がどうするかって問題と、かなり重なってくると思います。
これは宗教の問題だけではないと思います。組織の中にいる、個人の問題だと思います。
その時に、今まで自分はこの会社に命を捧げてきたのに、この会社が変な会社だったと。だからもう辞めてしまおう、というのは、そこに時間と労力を掛けたものが無駄になってしまうから、だから後戻りしたくない、という気持ちがあって、それがその会社を辞めない理由にもなってしまう。

「わたしの魔境」より抜粋

「カルト」に関する平野氏の意見を聞けるのは、非常に貴重でかつ、的を得ているのではないでしょうか。組織に在籍している個々人の自己判断の問題が、カルトの付け入る隙である、と平野喜之住職は考えているようです。
その他にも、アレフに潜入したルポライターの村田らむ氏や、あの上祐史浩氏のインタビューもあるため、是非とも観てみて下さい。

4・感想

題材や着眼点は非常に興味深く優れているので、この手の宗教がメインの作品をもっと見たいなと思いました。しかし、邦画に絞ると結構少ないのが難点です。また、どうしてもエログロやホラー描写と切っても切り離せないテーマなので、バランスが難しいのでしょうね。



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