宗教は性善説と性悪説、どっちなんだろうか問題＿前編
今回は、前々から書いている性悪説シリーズです。
以下はそのシリーズです。
今回も表題の通り、性悪説に何かを絡めていこうと思います。
今回は宗教をテーマに述べていきます。
１・このテーマを書いた経緯
ある日、宗教法人に関する調べものをしているときに、ある資料を発見したのが発端になります。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/shukyohojin/kanri/pdf/93980601_01.pdf
こちらは日本文化庁宗教課が発行している『宗教法人のための運営ガイドブック』という資料でして、宗教団体が法人化するにあたって、何が必要なのかをまとめたものになります。
教祖として未熟な私は、この資料を基に勉強をしていた所、引っかかる記載がありました。それが今回の記事のタイトルへの疑問でした。
ガイドブックには、このような記載がされております。
（４）性善説
宗教は国民の道徳基盤を支えるものです。したがって、宗教法人には非違行為はないという考え方から、財産の処分等について、所轄庁（都道府県知事又は文部科学大臣、以下同様）の許可等は必要ありません。
現代日本社会における(特に新興)宗教の現状を見ていると、大分突っ込みどころが多いなぁ、と感じるでしょうが、今回私が引っかかったのは性善説というワードになります。
宗教は、果たして性善説が前提の概念なのでしょうか。
２・結論
筆者の感覚としては、宗教は性悪説がベースの概念じゃないかと思います。
少なくとも、性善説が前提の宗教の方が少数だと捉えております。
以下は、その論拠になります。
３・キリスト教と仏教は性悪説寄りの宗教、という考察
以前、このような記事を投稿いたしました。
キリスト教においては、人は生まれながらにして神に対する罪を背負って生まれる、という世界観を有していることを解説いたしました。
また、仏教の浄土真宗にとって重要な教えである「悪人正機説」に関しましても、自身の罪を自覚し、苦しむ人こそが阿弥陀如来に救済されるべきである、と唱えました。
今一度、性悪説の定義を記載いたします。
性悪説→人間の本性は、本来的には悪であり、このままでは社会秩序が乱れたままになってしまうため、修練によってその悪を押さえつけ続けるべき、という思想。
今回の宗教＝性悪説という命題に置き換えたとき、
2つの宗教に共通している点として「生まれながらにして罪を背負っている」という特徴がございます。
罪＝悪として語る、ということに違和感を覚える方もいるとは思います。確かに、罪を犯すことと、それが悪である、ということは必ずしも一致しない場合があります。法律上の犯罪行為が、社会正義になるケースが実際ありますし(最近ですと、2023年のパナマの環境活動家を射殺した弁護士を思い出します。確かに殺人犯ではありますが、何日も高速道路を勝手に封鎖している環境活動家が悪いでしょうし、国民感情としても殺人犯を称賛するはずです。そもそもの話、活動家を逮捕しなかった国家権力が一番無責任でしょうから)。
ですがそれは、罪をguiltyで捉えているからの違和感ではないでしょうか。
罪には、法律上の違反という意味合いが強いguiltyと、宗教上の悪徳などの意味合い強いsinの２種類あります。
今回の投稿に限り、sinの罪で解釈するなら、とある宗教の教義的に「生まれながらにして」罪があるか否か、或いはそれに対し贖罪をしているのか、理解しているのかが重要になります。
sinの解釈で行うのならば、宗教上の悪と性悪説には類似性が認められる可能性が高いと考えております。
逆説的に宗教上の悪と性善説との親和性が高いことへの証明の方が難しいと感じます。
また、全く異なる時系列や場所での教義に類似性が確認できるのも論拠の１つです。キリスト教は元々はユダヤ教に反発したイエス・キリストからスタートしました。紀元後のイスラエル周辺での出来事です。
一方で浄土真宗は師の法然(ほうねん)の意志を継いだ親鸞(しんらん)が、それをもっと深化した結果が浄土真宗です。13世紀の日本は京都での出来事です。
少なくともキリスト教や一部の仏教には、共通して性悪性がベースの教えが浸透していると主張出来るのではないでしょうか。
４・ここまでの感想
キリスト教神学と仏教の浄土真宗という２つの宗教の教義や基盤をベースに宗教＝性悪説であることへの解説をしてきましたが、他の宗教であるイスラム教やユダヤ教などの教義にも当てはまるのか否か、筆者の知識では語るのが難しいため、別の機会に出来ればなと思います。
次の記事では、もっと抽象的な宗教論でもって、宗教＝性悪説、の解説を予定しております。
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