12/24 クリスマスの話 朗読文
今からするお話はね、僕のお母さんのこと。
一緒に住んでいても、住んでいなくてもクリスマスを指折り数えるお母さんのこと。
お母さんが僕と同じように小さかった頃、
僕と同じようにサンタさんをまって、
背伸びしてのぞいた押し入れの奥、見つけちゃったんだ「小さな白い箱」を。
だけどお母さんは気付かないふりをして…
小さな白い箱のてっぺんにはダンボールの星を乗せた小さなクリスマスツリーがあって、絵本で見ていたクリスマスとは違ったんだって。
だけど、テーブルにはお寿司と苺のケーキは絵本の通りならんでいたんだって。
お母さんはその時決めたんだって。いつの日か僕のお母さんになったら、今日と同じようなクリスマスを作りたいって。
君がお腹に宿った冬は、寒く凍りついた空を瞬く星に願い事をした。
「君が元気に産まれてくること」を。
それ以外、願うことが何一つなくて。
君と手を繋いで歩いた商店街は光を纏って揺れていた。
なのに君は雪を蹴りあげて駆け出していく。
そんな小さな背中がまるで昨日の事のように思う。
だから私は決めたんだ。いつの日かおばあちゃんになっても、君を胸に抱いたクリスマスを忘れないって。
君が今年も帰ってくるのかと、押し入れの奥にある小さな白い箱の埃を払って。
私は嬉しそうにツリーを眺めては、クリスマスを指折り数えて今日も君のことを待っているよ。
ねぇ、聞いて。お母さんが何よりも悲しいことはプレゼントを貰えなくなることじゃなくって、
「いつかあげられなくなることだから」
だからお母さんは毎年そう言って、テーブルにお寿司と苺のケーキを並べるの。
おかえりなさい。クリスマスの話。
Happy Christmas. 家族をつなげる星。