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ビールのCMで、出会いと対話のデザインを考える その4

 こんどは、このCMの③~④の部分を見てみます。

③ 自分のことを「5つの形容詞」で表す
④ 相手と自分の「3つの共通点」を見つける

 1. Q & A
 「あなたを5つの形容詞で説明してください」
 「私とあなたが持つ3つの共通点を述べなさい」 というところです。

 動画
 https://www.youtube.com/watch?v=tdsFCgiVOdo

 話し合いを始める前に相手の警戒感を解こうと思ったら、大事なことは、まず「自己開示」をすることです。自分がどういう人間なのかを相手に知ってもらうこと。

 それはワークショップに限ったことではありません。
 たとえば、会社の上司と部下、学生サークルの先輩と後輩などの間でも、これができていないために、関係づくりがうまくいっていないことがあります。先輩社員が自己開示をまったくしないまま、新入社員にだけ「自己紹介をしてください」と言うような場合です。そう言われると、新人さんは緊張してうまくしゃべれなくなってしまいます。「自己紹介は、まず自分から」が大原則です。

 さて、このCMが上手いのは、その自己開示を「5つの形容詞で」と指示していることです。
 たんに「自己紹介をしなさい」と言われると、多くの人は「〇〇関係の会社で・・・・の仕事をしています。名前は〇〇〇〇です。よろしくお願いします」「〇〇大学3年の( 名前 )です。趣味は・・・・で、〇〇〇〇のサークルで活動しています。○○〇〇が好きです」のように、その人がいつもやっているのと同じパターンになりがちです。
 ところが、ふいに「5つの形容詞で」と言われると、そこで自分自身のことを改めて振り返らざるを得なくなります。これまでそんなやり方で「自分」を表現したことはなかったという人も多いと思います(とくに大人になってからは)。なので、30秒とか1分の間考えて出てくる言葉は、取り繕ったりしない、正直な気持ちが表れることが多くなります。しかも、1つだけなら「親切な」とか「明るい」など、自分をそう見せたいと考えている、表面的な部分を表すことばしか出てこないかもしれませんが、5つとなると、「臆病な」とか「ずる賢い」といった、「実は、そういうところもあるんです」みたいな、ネガティブな話も出てくるかもしれません。
 そういう「弱み」を見せられた相手は、「誰にだってそういう部分はあるよね」「そういう弱い部分まで自分に話してくれる人なんだ」と感じ、その人に対して親しみを感じるようになります。

 そのうえで、「④ 相手と自分の「3つの共通点」を見つける」に進みます。本当に上手いなあと思います。
 自分と共通の趣味や似たところが見つかると、互いの間に「仲間意識」のようなものが芽生えます。
 この時点では、組み立て作業をいったん休んで話をしているようですが、作業を再開したきには、「自己開示」「共通点探し」の前と比べて二人の距離がぐっと近くなって、場に安心感が生まれ、一緒に働く仲間として、この作業をうまくやりとげようという気持ちになっているのではないでしょうか。

 次回は、⑤と⑥について考えます。

ハイネケンのCM「価値観の違う他人と仲良くなれるか?」の流れ
① 何をするのか、相手が誰なのか、まったく知らずに会う
② 指示に従って何かを組み立てる
③ 自分のことを「5つの形容詞」で表す
④ 相手と自分の「3つの共通点」を見つける
⑤ 組み立てが終わって、それが「カウンター」だと分かる
⑥ カウンターにビールを置く
⑦ それぞれの主張を記録した短い動画を見る
⑧ 「選択肢」が示される
⑨ 「対話」を始める

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