大豆ミートが同じ食卓をつくる
プラントベースフード研究家Masaeです。今回は、私が毎週活動している農業体験でのお昼でのある出来事をお届けしたいと思います。
農業体験という取り組み
相模原(神奈川)にあるアビオファームは、8年前から農業を始めました。オーナーは現役のバーテンダー。農業未経験だったところから、知り合いもいないこの農地を開拓してきました。ここは、生産農家になるほど広くはないので、この畑では様々な野菜や果物を育て、農業体験をやってもらいたいと考えており、来年の本格的な始動に向けて準備しています。
さて、先週の日曜は、20~30代の男女6人が農業体験に参加してくれました。農業体験では、収穫・種まき・草刈りなどを体験できるのですが、その合間のお昼を提供することもあります。前日までに食の好み(アレルギーも含め)を聞くのですが、そこでお肉が苦手だという方が一人おりました。
この日は、畑の野菜とイノシシ肉を使った青椒肉絲をメインとして提供するはずだったのですが、一人お肉が食べられないということに対してどこまでサービスとして提供するか、を考えます。”8~9割は野菜中心のメニューなので、食の好みにはできるだけ対応”という方針なので、当初、別メニューとしてヴィーガンカレーを提供しようかと考えておりました。しかし、ここで、メニューを聞いた私は、”青椒肉絲なら大豆ミートで対応できる”と提案しました。この時点で、大豆ミート料理をお客さんに提供したことはありません。しかし、オーナーは”やってみたい”という私の意欲をかってお昼のメインに大豆ミートを取り入れてみようということになりました!
ヴィーガン・オーガニック・エシカルは、港区のキラキラ女子のものではない
※「キラキラ女子」という表現は、世間一般のイメージを勝手に表現した筆者の幻想です((笑))
ここで、ジビエとヴィーガンについて少し触れておきたいと思います。「ジビエとは、フランス語で、狩猟で捕獲した野生鳥獣の肉や料理のことです。農村地域で深刻な被害をもたらす野生鳥獣の被害防止対策により、野生鳥獣の捕獲数が年園増加する中で、これを地域資源としてとらえ、野生鳥獣肉(ジビエ)として有効に活用する前向きな取組が広がっています。」(引用元:農林水産省)
農業をする側にとってはイノシシとの戦いは結構深刻です。それを食べることに関しては、飼料などによって肥沃に育てられた牛・豚・鶏とは全く違う面があります。ヴィーガンの方は、動物性のものを一切食べないという方針です。ただ、それは誰のためでしょうか。自分のため、地球のため…いろいろな考えがあると思いますが、その背景にあることが大事なのです。
畑の作業、みんなで一緒にご飯を食べる
さて話は、畑に戻ります。朝の畑作業が終わり、いよいよお昼がやってきます。畑で収穫した野菜をメインに青椒肉絲を作ります。作り方は、オーナーが用意したイノシシ肉、私が用意した大豆ミートを別に調理します。調理工程は全く同じで肉を炒める鍋が違うだけです。味付けには、オイスターソース(動物性)は使わずに、ごま油、味噌、みりん、醤油というシンプルなものになりました。
少量作るついでに、他の皆さんにも少しずつ分けで食べてもらいます。
ジビエ、大豆ミートを食べたことがある人の方が少ないのですが、そんな驚きの感想を聞くことができました。
そしてお肉が苦手な女性との話では、「私は小さい時に犬を飼っていて、犬は食べないのになぜ牛は食べるの?」ということに疑問を持ってそれ以来、肉は積極的には食べていないそうです。ただ、全く動物性を受け付けないというわけでなく、ジビエに関してはむしろ賛成だそうです。畜産された肉と、野生の肉を食べることは全く違い、人との共生には重要なことでもあります。
”大豆ミートを使った青椒肉絲”は、イノシシ肉の青椒肉絲と見た目はほとんど変わりません。同じ食卓で、一人だけ違うものを食べる選択しかない、別メニューになるのではなく、一緒のメニューが食べれられるという環境を作れたことに意味があるだと思います。
まとめ
食の好みは人それぞれです。辛いものが苦手、甘いものが苦手、その中にお肉が苦手な人も同じように並べると思います。今回のできごとは、そんな方にサービスとして提供できるものが一つ増えただけですが、一つの「青椒肉絲」を通していろいろ考えさせられました。何より、大豆ミートを使いたいという私の要望に応えてくれたオーナーは、今後、こういうメニューをどんどん取り入れたBBQならぬVBQ(ヴィーガンバーベキュー)をやって体験してもらおうという話もしてくれ、その可能性を見出すきっかけにもなりました。
ヴィーガンでも、ジビエならOKという人もいます。それは、宗教やアレルギーで食に制限があることとは少し違ってモラル的な考えからです。今回のように、本人の事情を一人ひとり汲みとっていくことは提供する側としては難しいこともあるのですが、大豆ミートなどのプラントベースフードを使っていくことが、誰もが選んで楽しめる食事の環境づくり「食のバリアフリー」化に繋がるのだと改めて感じました。