特許情報プラットフォーム(JPP)における筆記具の検索方法
この記事は随時更新していきます。
Ver.1.0(バージョン情報の詳細は記事の末尾に掲載します)
大前提
●図面の著作権は企業が持っている。スクリーンショットでの共有は避け、きちんとリンクで共有する必要がある。
●本記事は、あくまでも"筆記具を趣味とする人が必要な情報を集める"ことを目的とする。
●スマホでも閲覧が可能だが、もし手元にPCやタブレットがあるならそちらを使うほうがよい。大画面の方が図面が見やすい。
●企業秘密を守るため、あえて特許出願しないパターンもあり得る。その場合、企業関係者以外が確認できる手段はないので諦める。
1…簡易検索
特徴
キーワードをいくつか入れるだけで検索できるお手軽なシステム。
使うシーン
・比較的新しい商品を知りたいとき
・慣れていない分野(詳細検索が困難)の調査
に使う。
使い方
STEP 1 キーワードを入れて検索する
検索窓に、調べたい筆記具に関するキーワードを入れる。以下に具体例をいくつか示す。
STEP 2 目的の資料の選択
一覧には、期日、発明の名称(タイトル)や出願人/権利者(メーカー名、またはメーカーの代表者の名前)が記載されているので、それをもとに自分が知りたいものを選んでいく。
STEP3 資料の見方
目的の資料を選択したら、最初に図面をよく見ることを推奨する。図面は下の方に載っているので、スクロールする必要がある。図面だけで理解できれば詳細な説明を読む負担が軽減されるので複数の資料を短時間で見ることができる。
構造が複雑であったり、自分が詳しくない分野であったりすると図面だけで理解するのが難しくなる。その時は、「要約」「請求の範囲」「詳細な説明」を読む。日常的に使わない単語があるが、このnoteの最後に単語の軽い説明を掲載しておく。
「詳細な説明」を読んでも理解ができない場合は、その筆記具の実物を持っている人物に補足説明を求めるのも良いだろう。
2…詳細検索
特徴
年代・詳細な種別・メーカーなど、詳細な情報を入力して検索することができる。
使うシーン
・ジャンルで絞り込むことで、同業他社の類似品を比較するとき
・検索対象の筆記具が明確な場合に、最短ルートで目的としている資料にたどり着きたいとき
・簡易検索で表示されづらい古い製品(廃番品など)を検索したいとき
使い方の例
※ここでは、わかりやすい例として「Pentel Mechanica」を検索してみる。
↓ここにたどり着くための方法を説明する。
詳細検索画面…
ホームの右上の三本線のマークをクリックすると、以下のような画面が表示される。
ここで、「特許・実用新案」の右にある∨をクリックすると、以下のような画面が表示される。
ここからは分岐して説明する。手持ちの情報に応じて使い分ける必要がある。
特許・実用新案番号照会/OPD
番号が判明している際に使用する。番号が正しければ、ピンポイントで目的の資料にたどり着ける。要は最短ルート。
具体例:Pentel Mechanicaの番号は、以下の画像に示す通りである。それぞれ説明していく。
実願昭48-058230
→実用新案出願番号 1973-058230
昭和・平成・令和等の元号は西暦に修正して入力する。入力方法↓
実登=実用新案登録番号
入力方法↓
実公=公告実用新案番号
入力方法↓
ここまでで示したように、目的の文献の番号がなにか一つでも判明していれば目的の資料にたどり着くことができる。
特許・実用新案分類照会(PMGS)
FI(ツリー形式でジャンル分けされた分類用タグ)などを選択し、特許・実用新案検索画面に飛ぶことができる。
筆記具全般に割り振られたFIは「B43K」である。
適切なFIを選択する。今回検索するPentel Mechanicaは先端保護機能を搭載しているため、B43K23/00(筆記具用保持具または接続具;筆記尖端を保護する手段)が適切である。
➕B43K23/00 と表示されるため、➕マークをクリックする。それをスクロールしていき、さらに絞り込んでいく。
関係するすべてのFIを入力する必要はなく、目的のペンの特徴のうち、わかりやすいものを一つか二つ選べばよい。
今回、MECそのものを見ただけで容易に分かるFIは、たとえば「B43K23/10」(筆記具用保持具または接続具;筆記尖端を保護する手段>>鉛筆用)である。これを検索にかけてみる。
「特実検索にセット」を押すと、「特許・実用新案検索」の画面に遷移する。以下、その説明をする。なお、PMGSを経由せず、いきなり特許・実用新案検索を使用することも可能。
外国文献の☑を外す。
判明している情報を入力していく。
入力例↓
先ほど調べ、セットした「B43K23/10」が入力された状態。
検索項目は様々なものがある。
例:
・メーカー名で検索したければ「出願人/権利者/著者所属」を選択する
・FIで検索したければ「FI」を選択する
など。
検索オプション>>日付指定をする。大体の時期がわかっていればピンポイントでも良いが、詳細が分からない場合は10年間程度の広い範囲で指定するとよい(後で絞り込んでいく)
ここまで入力したら、一番下までスクロールして「検索🔍」ボタンを押す。
検索結果一覧が表示されるため、その中から求めているものを見つける。
青字になっている部分をクリックする。
①古いものはPDF表示にする。(比較的新しいものはテキスト表示のままで良い。)
②ページ数を選択する。
下の方までスクロールし、「開く」を選択。
以上の操作により、目的の資料を閲覧することができます。このnoteでは著作権の都合で図面や文章を掲載することができませんので、ご自身で以下のリンクを踏んでください。
検索のヒント
●表示された検索結果が0件の場合は検索範囲を広げる(例えば、B43K23/10と入力していたものをB43K23/00に変更する。※/00は/の前にある範囲をすべて検索することを示す)。
●表示された検索結果が多すぎる場合はいくつかの方法で更に絞り込む。
・除外キーワード>>検索対象でないメーカー名または開発者名を入力することで、無関係な情報を排除する。
・オプション>>期間をさらに絞り込む。
今回示した例では、FI:B43K23/10、出願:19700101〜19750101 の条件で20件程度まで絞り込めるため、一覧に表示されているタイトルや出願者名を見て目的のものを見つける。MECの場合、出願者:「ペンテル カブシキガイシャ」タイトル:「シャープペンシル」である。
求めるものが見つからない場合、シャープペンシルであれば以下のように「B43K21/00@Z」(繰り出し鉛筆>>その他)を選択する。
●NEWMAN製品を検索する際、「ニューマン」(社名)ではなく「ミナガワ タツゾウ」(社長さんの名前)で検索すると良い場合がある。
3…詳細な説明を読む上で気をつけること
・詳細な説明において、「実施例」として複数の構造、複数の材質に関して言及されている場合がある。このような文章構成の場合、最初に書いてあるモノが実用モデルに搭載されている場合が多い(例外あり)。
・芯戻り止めのことを保持チャックと表記しているものが多数存在する。筆圧に抗して筆記芯を強く保持するチャックと混同しないよう注意。
4…単語リスト
単語リストは適当に追加してくよ
あ
●圧接…バネなどによって、押し付け力が働いた状態で部品が接していること。
●圧入…部品同士をキツくはめて固定する組立方法
●圧力…加わる力/力が加わる面積 で定義される。
●円周方向…円筒の表面(曲面)に沿う方向
●押圧…手やバネなどで部品を押すこと。
●応力…圧力と同じく、加わる力/力が加わる面積 で定義される。部品にどれだけ負担がかかるか?を考慮するときに使う概念である。要は、同じ力でも、断面積大きいところに均一にかかるのと断面積小さい部品に集中的にかかるのでは負担が違うよね、ということ。
か
●介装…複数の部品が、別の部品を挟んで関わりあって存在していること。(例:部品Aと部品BにコイルばねCを介装する)
●拡開…チャックなどの開閉装置が開くこと。
●片持ち梁…棒状、または板状のものが片側で支えられていること。
●外嵌…外側にはめられていること。
●嵌合…はめ込むこと。
●カム…原動カムと従動カム(それぞれ入力側・出力側とも言う)が接触した状態で相対移動させ、複雑な動きをさせる機構。ボールペンのノック機構、MECの保護機構などが有名。
●緊締…チャックなどの開閉装置が締まる(閉じる)こと。
●楔効果…物理の教科書を見よう、基本的には三角関数が理解できれば耐える。
●クラッチ…回転動作を伝達するための機構。入力側クラッチと出力側クラッチが接しているときにはトルクを伝達し、これらが離れているときはトルクを伝達しない。筆記具の分野においては、クルトガ関連でのみ出てくる単語。
●径方向…軸方向に垂直 ペンの内側から外側に向かう方向(径方向内方/径方向外方)。
さ
●算術平均粗さ…主に、紙面と接触するパーツの説明をする際に用いられる「滑らかさを表す指標」であり、数値が小さいほど滑らかである。
●軸方向…径方向に垂直 ペンの後端から先端に向かう方向で、基本的にペン先側が前方である(軸方向前方/軸方向後方)
●摺動…すべりながら動くこと。
●挿通…芯やリフィル・パイプ等の棒状のものが、筒状の部品内部を貫いていること
た
●撓む…部品がしなる(力を受けて変形する)
●弾性体…コイルバネ、もしくは板バネであることが多い。弾性力は機構の挙動を考える上で重要で、弾性力の大小関係や弾性体が機構のどこに搭載されているかを考えながら読むと機構が理解しやすい。弾性素材による片持ち梁・両持ち梁によって構成されていることもあるが、この場合は大抵摩擦力が関わってくる。
●弾発…弾性体によって部品が押されている(力がかかっている)状態を指す。(例:コイルバネによって軸方向前方に弾発されたガイドパイプ)
●ダンパー…速度に比例した抵抗力を発生させる装置を指す。振動等を減衰させるのに用いる機構であり、流体(油など)の粘性抵抗を利用するものが主流である。
●当接…部品同士が当たって接していること。
●同一軸線上(同一軸上)…複数の円筒部品の位置関係が共通の軸線上に配置された状態。あえてこの文言が使われている場合、筆記具の動作サイクルの中で部品の軸がズレて傾斜するパターンがある。
●トルク…回そうとする働きのことで、
(回転半径)×(働く力)で定義される。
な
は
●ファイルインデックス(FI)…ツリー構造の分類体系のこと 筆記用具・製図用具はB43Kであり、その下にも細かい枝分かれがある。これを覚えれば検索がかなりスムーズになる。
●バネカツラ…キャップ内に金属板を入れ、首軸と摩擦的に半固定する構造の筆記具用キャップ。現行品だとケリー、エリート95Sなどのキャップに採用されている。
●フランジ…段付き部品の径が大きくなっている部分のこと
●ボールチャック…芯の前進を許容し、後退を制限するシャープペンシル用チャックセット
ま
●摩擦力…接している部品に関して、接している面に垂直に加わる力×摩擦係数 によって定義される力。摺動部に使われるような部品では摩擦係数を下げる努力がなされていることが多い。
や
●遊嵌…部品同士が、相対的に動けるようにはめられていること。ここで言う相対的な移動は基本的には直線的(軸方向)なものを指すが、ごく稀に傾斜可能に遊嵌されてるパターンがある。 ※部品の内部に遊嵌されている場合、遊挿という言葉が使われることもある。
●揺動…部品が揺れ動くこと
ら
●螺着…ネジ接合のこと
●両持ち梁…棒状、または板状のものが両側でささえられていること
わ
5…リンク集
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6…バージョン情報
Ver.1.0 2023-11 公開時
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