腹をくくる、覚悟を決める、前を向く 『転職の思考法』 #熱狂書評
北野唯我氏 著『転職の思考法』をご紹介します。
本書は6月の発売以降、Amazonの転職カテゴリーで1位を取り続けている転職界のベストセラー本です。なぜそれほど読まれているのかというと、転職したい人に限らず働き方に不安を感じる人にも響く言葉が綴られているからでしょう。「今の会社に特に不満を感じないけれど転職は気になる」という方が想像以上に多くいらっしゃるのではないかと推測しています。
転職してました
本書はストーリー調で転職思考を身につけていく構成になっています。
30歳になり何かを成し遂げたわけでもない自分に焦りを感じて転職を考えている物語の主人公「青野」と、青野が勤める会社の社員たち、転職コンサルタントの「黒岩」を中心に話が展開して行きます。
転職市場における勝ち筋が載っているのですが、すべてを身につけることは難しいと思います。
僕が転職をした時に意識していたことも書かれていて、やはりそうだったのかと納得する部分もありました。
僕自身も一度転職しており、その時の経験も交えて、本書『転職の思考法』をご紹介していきます。
熱狂書評する本がことごとく自分が経験してきた内容で驚きが隠せません。(経理かじったことがあった=『ファイナンス思考』、転職経験=『転職の思考法』)
付加価値を意識した転職
僕は情報系大学を卒業した後にIT系の業務委託を行う会社に就職しました。5年ほど働いた後に製造業へ転職し、そこからは主に社内のシステム管理をしています。
転職の動機は、前職がITスキルの高い人材が多くいる会社で、そこそこのITスキルがあっても埋没してしまい烏合の衆になっていたから。また結婚して数年が経った頃で、今後の給料の伸びに不安を感じていました。
そんな折、親族から「システム業務で人が足りていないから、うちの会社にこないか」と打診がありました。聞くと待遇も悪くありません。
その会社は製造業を生業としているのでITが得意な人は少ない=僕の付加価値が出せるのでは、という思惑もあり入社を決めました。
それでは『転職の思考法』の内容に移りましょう。
マーケットバリューを理解する
■マーケットバリューとは
市場価値のこと。「市場価値とは、今の会社での価値ではなく、世の中からみた君の価値、君の値段だ。」
■マーケットバリューの測り方
マーケットバリュー=技術資産×人的資産×業界の生産性
技術資産=どんな会社からも必要とされる高い技術力
人的資産=どんな人間とも仲良くなれ可愛がられる力
生産性が高い業界=とくに才能がなくても、安定して高い給与をもらい続けられる業界
■マーケットバリューの高め方
「20代は専門性、30代は経験、40代は人的資産でキャリアを作れ」
「業界の生産性は市場により20倍も違うので、優先すべきは業界選び」
マーケットバリューを高める方法は、企業に勤める者として一番気になるところだと思います。
20代の専門性、30代の経験と書かれていますが一般的に言われていることと逆に思えます。しかし、きちんとしたロジックがあります。
「貴重な経験を積むことができるのは、エース級の社員である」ということ。
一定の成果をあげた社員でないと、社内の困難な事業は任せてもらえないのです。
これを読んで、僕は理想的なキャリアを進んでいると確信できました。
20代ではITスキルを積み、転職先で30代になり数十年ぶりの基幹システムの全面刷新を担当することになったのです。
まさに20代で専門性、30代で貴重な経験を積むことができています。
「『転職が100%失敗する、唯一の条件』というものがある。それは腹を括るべきタイミングで、覚悟を決めきれなかったときだ」
これは転職に限るものでもありません。何回強調してもいいと思います。
もし転職先の企業が、基幹システム刷新プロジェクトを別の人材に託していたら、転職は『叶わぬ夢』でした。あのタイミングで思い切って転職できたことは幸運でした。
「(『転職の思考法』をなぜ書いたのか?の回答)すべての働く人が「いつでも転職できる」という交渉のカードを持てば、結果、今の職場も絶対によくなると確信しているから。」
自分の市場価値を正しく認識できれば心に余裕が生まれます。社員全員がそんな状態になれば、自ずと自社の発展を目指して事業に取り組むことができると思います。間違ってもその集団は社内政治で疲弊したりなどしません。
「とある大企業勤務の男性が、大企業での仕事がものすごくつまらなくて、入ったことを後悔した。それである日、辞表を書いてそれを胸ポケットに入れたんです。すると不思議なことに、その日から仕事が楽しくなった。
なぜなら、彼のなかで「転職する」というカードを手にした瞬間から、会社に対して自分の言いたいことも言えるようになったから。」
引用元:映画の主人公も、“使命”には途中で気付く。やりたいことがない人のための転職入門(前編)|新R25
会社や仕事に対して「いつでも辞めてやる」と達観すると、自分自身や周囲を客観的に俯瞰できるようになります。そうなってしまえば、より自分らしく振る舞えるようになり、結果的に仕事に手応えを感じ成果をあげられるのです。目の前の仕事をこなしているだけでは見えてこない世界があるのです。
僕が転職で得られたもの
・会社に貢献しているという実感 (ITに疎い人が多いので)
・時間に余裕ができた (前職の職場が遠かった&現職では残業なし)
・年収増 (ありがたい)
・住宅ローン&郊外の庭付き新築一戸建て (奥さんの実家まで徒歩5分という好立地)
転職してからは、おかげさまで家族を持つことができ、家族が飢えない程度のお給料をいただいています。
「典型的なサラリーマン」といえばそうですが、今の時代にはいろんな価値観があることも重々承知しています。むしろ多様性にすごい興味があります。Twitterでは多様性を認知できるようなツイートをリツイートすることが多いです。
僕の例がどこまで参考になるのかはわかりませんが、こういった事例もあるんだと覚えておいてもらえれば嬉しいです。
腹をくくり覚悟を決めて前を向く
「私はこの本を通じて、すべての人が、『いつでも転職できる状態』をつくりたいと本気で願っています。なぜなら、全ての働く人がいつでも転職できるだけの「市場価値」を持てたとしたら、あなたの生き方すらも変わる可能性があるからです。そしてそのために、必要なのは単なる上部の「転職情報」ではなく、情報を見極める「思考の軸」です。」
「転職」は社会人として働いていると一度は頭をよぎる言葉。
なぜ思い浮かんでしまうのか、焦がれてしまうのか、それはやはり現状への不安・不満があるからでしょう。
しかし腹をくくって仕事に取り組み始めると「わたしは転職可能である」という心の余裕が生まれて、人生に大きな恩恵をもたらします。もちろん実際に転職をしてもしなくても、です。
『転職の思考法』を手にとって『転職思考』を身に付けましょう。
腹をくくり覚悟を決めて前を向くと、想像もしなかった明るい未来が視えてくるのですから。