必須機能スクラブ再生
2024年8月に突然開発終了を発表した記譜ソフト Finale。やっと慣れてきたところで難民となったえんじろうは、DORICO という記譜ソフトに挑戦することになりました。
体験版を導入し1ヶ月近く使い勝手を検証した結果を、Finale との比較も交えながらまとめていこうと思います。えんじろうと同じ難民の方のお役に立てれば嬉しいです。
耳で作る楽譜
小学生の頃の音楽の成績は結構高い方でした。それは盲学校(視覚特別支援学校)という性質上からなのか、楽譜の読み描きよりも実演が評価の大半を占めていたからだと感じます。
だって年に1度くらいしかなかった筆記の試験では、5点とかとっていました。それでも5段階の成績表では4か5をいつもとっていました。
楽譜の必要性
本当につい最近まで楽譜の読み書きは全く出来ない状態だったし、必要性は感じていなかったのです。だって耳で覚えられるし歌えるのだから。
こんな風に言うと「自慢してるのかこいつは」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。でも聴いた歌を覚えるなんてことは子供だってできるんですよ。えんじろうに言わせれば、あの楽譜を見ただけでメロディが頭に流れるというお話のほうが特殊能力というか、とんでもない能力に感じるのです。
要するに必要性を感じなかったから覚える気にもならず、全く身に着かなかったというのが現実です。そしてそれはとても自然なことだと思います。
理由があれば学べる
しかし、楽譜を出版するとなれば、当然、それを作らなくてはなりません。大金払って、その道のプロに作ってもらうのが最も確実なのですが、そんな資金があるわけでもないし、作ったところで元が取れるほど売れるという補償が一切ないわけですから、そんな勇気は持てません。
モチベーション
そうなると結局自分で作るということになるわけです。作るならやっぱりしっかりしたものを作りたい。そう思ってしまうのは性なのだと思いますが、それがきっかけに良いモチベーションになります。
それこそ最初は「ト音記号」と「ヘ音記号」でドの音の場所が変わってしまう?なんだこの面倒くさい世界はと思いながらちょっとずつお近づきになる気持ちで粘り強く頑張りました。
そして記譜ソフトを導入し、その仕組みや挙動を知りつつ、楽譜の仕組みも覚えていきました。
見えたこと
楽譜を学ぶ中で見えたことがあります。
それは楽譜というのがただ単に演奏を指示する記録ではないということです。作曲者の意向や思いに触れさせ、さらには音楽の理論にまで触れさせ、その上でなければまともに理解できないように作られているということがわかってきたのです。
成り立ちについて調べてみると、ちょっと面白いことが分かりました。楽譜はもっと簡素なものから始まり、音楽の発展とともに進化して行ったということです。だからこそ理論もそこに含めようとしてしまったのでしょうか?
とにかく「初心者お断り感」が強いというのは感じます。
そこいくとコンピューター間でやりとりをする楽譜のような「MIDI」という規格は、非常に合理的な考え方がとられています。シンプルに「音階名」と「強さ」と「長さ」の情報で構成されているのです。これぞ本来の意味の記録だと思います。だからどうしてこの音の次にあの音がくるんだろうかということについては一切関わりを持っていません。でも楽譜の場合は、その理由すら含んでいるというところが違うんですね。
これは面倒くさいと思いつつも、自分で学ぼうとしたからこそ得られた結果です。やってよかったと思っています。
楽譜を読む
楽譜を書くという行動は記譜ソフトの力を借りることで比較的できるようになりました。しかし読むという動作はそう簡単にできるものではありません。まず自分の場合は視覚障害が壁となり、五線が五本引いてある線に見えていない時点で話になりません。ルーペを使ったところで、線を1つずつ数えていくのもバカバカしいと思ってしまうのです。
したがって、いまだに楽譜を読むという行為は成せていません。でもモチベーションとなっていた目的は楽譜を書くことなので、それができれば充分満足です。
再生機能
さて、楽譜を書くといっても、えんじろうは結局耳に通っています。パソコンの画面で楽譜を大きく表示できたとしても、見落としがたくさんあるんですよ。それを後から指摘されるのは非常に悔しいんです。でも自分の目を恨んだところでどうにもならないので、逆に発達している耳を使うことになるのです。
そこで役に立つのが記譜ソフトの「譜面再生機能」です。Finale の次に使うソフトを何にしようかと考えていた時に、真っ先に調べたことはやはりこれでした。どれだけ記述が優れていたとしても、再生してくれなければえんじろうにとっては入力の確認ができない状態になってしまうからです。あえて言おう、そんなものはカスであると!
DORICO の再生操作
ようやく本題に辿り着いたわけですが。DORICO での再生はスペースキーで行います。再生中に押せば停止します。再びスペースキーで再生が再開されるのですが、編集を確認するために再生する場合、同じ個所を再生するということの方が多いです。
えんじろうは環境設定にあるショートカットキーを変更することで、常に続きから再生、前回と同じ位置から再生、選択された音符から再生という機能を組み合わせるようにして使っています。これらに対するキー割り当ては自由に変更できます。
また、本来ですと DORICO でリアルタイム入力を行うときの開始ボタンはコントロールとRです。これを使い慣れている Studio one というDAWソフトの録音開始ボタンと同じ*キーにすると、混乱することなく録音を開始できます。ソフト毎にショートカットキーを覚えなおすなんてやってられませんからね。こういうところを自分用にいじっておくことはとても大切だと感じます。
スクラブ再生
さて、今回のタイトルになっている「スクラブ再生」とは一体なんなのでしょうか?それはマウスがある位置の音を再生してくれるという機能です。
右上のボタンが緑になっているのがスクラブ再生中である証拠です。この状態の時、楽譜上でマウスを動かすと、そのマウスがある位置に緑の線の再生ヘッドが移動します。同時にその場所の音符を再生してくれるというわけです。ピンポイントの和音を確認したいときには、もってこいの機能なんです。
ショートカットキー
これは右上のボタンをわざわざ押さなくても、コントロールを押しながらスペースキーを押している間にも一時的スクラブ再生状態になるので、その時にマウスを動かすことでその場で確認ができます。
さらにコントロールとシフトキーも押しながらスペースキーを押すと、マウスがある五線のみの再生を行うことができます。1つの五線をしっかり確認し、その後全体の調和を確認する。
えんじろうにとってはほぼ不要な楽譜を、音の世界とつなぎとめてくれるとても大切な機能です。この機能がなければ、えんじろうは間違いなくこのアプリを選んでいません。
えんじろうが重視している再生コントロールの一覧です。録音も付け加えちゃいましたが、
Finale ではどうだった?
これまで使っていた Finale にも同様の機能はありました。そしてこの記事を書くために試してみて気がついたのですが、ショートカットキーも全く一緒でした。一番良く使う機能なだけに、こういうのはとっても嬉しいですね。
まとめ
というわけで、今回はえんじろうにとっての再生という行為がどれ程大事なものなのかという話になってしまいました。きっと楽譜ありきで音楽を始めた方でない場合は、わりと分かってくださる人もいるのではないかと思っています。
シンプルに考えてみれば、楽譜の目的は「こう演奏してほしい」というものを伝えることなのです。だからそのとうりに再生されているかどうかを確認することはとても大切なのです。
乗り換えに際してこの機能がショートカットキーも含めて全く同じであったことはとても嬉しいことでした。
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