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良い点と残念な点

2024年8月に突然開発終了を発表した記譜ソフト Finaleフィナーレ。やっと慣れてきたところで難民となったえんじろうは、DORICOドリコ という記譜ソフトに挑戦することになりました。

体験版を導入し1ヶ月近く使い勝手を検証した結果を、Finale との比較も交えながらまとめていこうと思います。えんじろうと同じ難民の方のお役に立てれば嬉しいです。


比較するにあたり

良いニュースと悪いニュース、どっちから先に聞きたい?なんかアニメとかでそういうセリフ、時々ありますよね?
Finale 難民から DORICO 住人に加わるに当たり、今回は嬉しいなと感じた部分と、ちょっと残念だなと感じた部分をまとめてゆこうと思います。

残念ポイント

では先に、残念に思っている部分を書いてしまいましょう。残念ポイントを先にゆってしまえば、残っているのはすべて良かったポイントということになるのですから。

装飾音符の再生

音符を装飾する記号の中にトリルというものがあります。例えばハ長調の曲でドにトリルがついているなら、ドレドレドレドレと演奏することになります。オカリナの世界では、時々使うことがある方法になります。
しかし、もっと使用頻度が多いと感じる物の中にプラルトリラーというものがあります。これはショートとリルとも呼ばれるようで、字のごとくトリルを短く行うという奏法です。先程の例ならばドレドーとなるわけです。これを下方向に行う場合はモルデンとと呼ばれます。こちらは僕はあまりオカリナでは使用しません。

画像 装飾音符

こんな譜面を作ってから再生してみると、1小節後半のトリル以外は再生しても再現されません。そのままドードーという音が再生されるんです。
Finale ではプレイバック再生のときに限ってですが、しっかり再現されていました。

ヘルプをよく確認してみたところ、今のところは再現されていないが、いずれ再現する予定のようなことが書かれていました。耳で確認したいものにとって、こういう細かなところまで再現することはとても重要です。この記号をちゃんとつけたかどうか、間違った記号になっていないだろうかというものを耳で確認できるかどうかの瀬戸際なのです。見りゃわかると思っている人たちにとっては大した問題ではないことでしょうが、見てもスルーしてしまいがちな視覚障害者にとっては大変重要な機能と言えます。

いち早く導入を進めて欲しいと感じる部分です。

Swing 記号の存在

8分音符が続く「タタタタ」というノリを、音符表記は変えずに「タータタータ」というノリに変えてくれる便利な演奏指示が Swing です。
Finale では Swing させたいところにこの記号を置くだけで、わかりやすい記号と再生した時のノリも変化します。さすがにリアルタイム入力のノリまでは変化しませんが、ノリも含めて確認したい再生のときに再現されていることはとても大切です。

画像 Finale の Swing 記号

しかし、この楽譜を DORICO に持ってくると、Swing の表記は単なるテキスト文字に置き換えられ、再生してもノリは再現されていません。
これについても一生懸命検索をかけて調べてみたところ、どうやら DORICO には Swing 記号が存在していないようです。

画像 DORICO の場合

さらに調べていった結果、再生にノリを反映する方法は見つかりました。それはリズミックフィールというものを変更すると言う手段です。
シフト+Tでテンポを入力するポップオーバーを表示できるので、そこに Swing または数字の8を入力すると選択肢から選ぶことができます。
ただしこれはあくまで再生のための指示であり、譜面のための指示ではありませんので、印刷された譜面にはそれにまつわる記号が一切ない状態になってしまいます。

画像 DORICO の Swing

面倒くさいが慣れるのみ

というわけで、今のところはこのリズミックフィールで再生しじを行った上で、スイングという文字をテキストとして入力する必要があるというのが現状のようです。面倒くさいですね。
Finale でもこういうことがたくさんあったのですが、面倒くさいと思いつつも、何度も繰り返して作業を続けているうちに、それが当たり前の儀式になってしまうというものがあります。慣れの恐ろしさでもあり、人間の進化の素晴らしさでもある。とは言っても本来不便だと感じたものなので、そこはソフト側で対処して欲しいところではあります。
でも慣れてしまうことで、誰も要望を出す必要が無くなってしまうというところが慣れの恐るべきところだと感じます。Finale の数多くの不満点はそういうところにも及んでいました。

変人と挑戦と悪意

ところで音楽をやる人には変人は多いと思います。ないなら作ってしまうという発想の人も多いと感じるのです。それは曲だけでなく、こういったソフトの扱いに関しても向き合い方の部分で反映されていくものだと感じるのです。つまり「あの機能がないのか。ならば、なんとしてでも再現してやろうじゃないか」と考えてしまうのです。努力の末再現出来たものはある意味財産です。ソフトが進化し、その財産が無効になってしまうのは若干悔しささえ感じてしまう。
そんなふうに考えてしまう人が大勢いたとしたら、進化がなかなか進まなかったことも説明ができる気もします。俺たちが苦労したんだから新参者も苦労しやがれという精神。ルサンチマンってやつに近いのかな?

まーこわい。いやいやえんじろうはそんな人じゃないですよ。でも記事のネタとは言え、そういう発想が全く無い人間にこの文章を書くことはできないのです。ってことは自分にもあるってことか?などと自問自答しながら頭を抱えそうになっています。

要望の数々

さて、ここからは小さな不満点・・・ではなく、要望を書いていこうと思います。

譜面別レイアウト保存

画像 テンプレートを開いた直後

DORICO は、なぜかファイルを開くたびに画面表示の大きさが変更されてしまうことがあります。記譜に集中したいときに限って、こういう変化が起こると結構イラッときてしまうんですね。しかも画面右下の倍率表示を見て驚きます。
はっ、何ですか?「587%」って?

しかもパート譜とフルスコアとの間で倍率が保持されることもあるかと思えば、そうでないこともある。AIが柔軟に機転を利かせてそうしているのならまだしも、全く意味のない変化が起こることが多いから、倍率数値も含めて単なるバグなのではないかと感じます。せめて固定できるオプションが欲しいところです。環境設定にそれっぽいものもあるのですが、実際やってみても変わる時は変わりますから。

アルペジオの再生バグ

画像 再生オプション

これは以前にもお話した内容なのですが、再生オプションのタイミングの中にあるアルペジオの項目を、ビートで停止にしていると、次のような楽譜を作った際に変なことが起こります。

画像 テスト楽譜

ファイルを開いた瞬間に最初の和音が突然再生されます。アルペジオがビートで停止するように行われるということは、実際のビートよりも手前にくる音符があるということになります。これがこのバグのトリガーになっているとしか考えられません。
もちろんアルペジオ記号を最初の音符から取り外すとこの問題はなくなります。

心臓に悪いから、早く直して。

インストゥルメント定義の保存

こちらも以前に触れた内容ですが、苦労してこさえた移調楽器を定義した情報を、外部に持ち出せる仕組みを加えてほしいです。ほかのパソコンに持ち出せたり、仲間とシェアしたりできるようになるのでとても有効だと感じます。なおインストゥルメントの手動持ち出し方法については、下記記事をご覧下さいね。

上品な音源の割振り

画像 再生モード

こちらは音源に関する設定などが行える再生モードという画面です。
それぞれのプレイヤーに割り当てられた楽器に割り当てられた音源を調整することができるのですが、これが結構煩雑になっているんです。

画像 割り当てチャンネル

例えば、コードの音を再生するための「和音」というトラックがあるんですが。その音色は「02 HALion Sonic」と表示されており、そのセットに含まれる音源が使われています。
では上の画像のようにオカリナに使われている音源を探ってみると、なんと「03 HALion Sonic」と表示されているんです。何ゆえ、音源セットをわざわざ2重に立ち上げるんでしょうか?と思ってしまいました。

これはインストゥルメントを変更したり、加えたりするたびに行われるので、それらをやればやるほど煩雑になってゆきます。実は和音とボイスとピアノを1つのセットにまとめたのは僕で、最初はこれらもバラバラに複数の音源セットが立ち上がっていた状態でした。
こういう煩雑さをなるべく除去するような仕組みを取り入れ、少しでも軽い動作ができるようにしてほしいなあと思います。

良いポイント

思っていた以上につらつらと残念ポイントが増えていってしまいましたが、逆に考えればこれを除けば、あとはすべて満足してると言うことができます。

見栄え調整の軽減

何よりも浄書の確認の際に、段に対する小節の切り替える場所と、段ごとの高さ調整をするのみで済むというのは画期的です。
Finale ではコードの記号が反復記号にかぶっていたりするような場面も非常に多く、視覚を使った確認が必須になってしまうのです。楽譜を作ることは目を悪くすることだと認識してしまうほど、それはつらかったのです。

DORICO で何かと何かの表示が被って見えるという場面はほぼ起こっていません。全部自ら気が付いて修正できるのならば問題ない話なのですが、視覚障害者にとってそれはなかなか厳しい話で、どうしてもどこかに被ってしまう記号が残るのです。そして、それを見た人から指摘されるのが悔しいというか、悲しいというか。あれだけ頑張って見直したはずなのに、どうしてと言う思いでいっぱいになります。
だからこそ、本当に何もせずとも記号被りが起こらないという記譜ソフトとして当たり前じゃないのと思えることが、ものすごく嬉しいのです。

追加音源

楽譜にそこまで必要かと思えるほど、大きな音源をインストールしなければいけなかったというのも、考え方を変えれば新しく使える音色が転がり込んできたと考えることができるのです。こういう部分は割とおめでたい性格でよかったなと思います。

まとめ

というわけで、数回に分けて書いて参りました Finale 難民の DORICO への乗り換え関連の記事でございますが、このあたりで一段落かなと思います。ここまで読み続けて下さった方々には感謝致しますし、この記事が同じような難民の方の役に立てたなら、とても嬉しいなあと思います。

これから長いことお世話になるであろうドリちゃんにはますます改善に改善を加え、よいものになってくれることを祈るばかりです。
ただアップデートという言葉の中には、情報や機能の整理というものも含んでいると思います。あとからあとから機能を追加するだけでなく、追加した機能の整理整頓は怠らずに置いてほしいなあと思うのです。

ソフト開発を進める上では、あらゆるセクションに分かれてさまざまな担当者が開発をしてくださっているものと思います。
Finale では、それぞれの開発者がそれぞれの思惑に基づいて仕組みを組み立てていった結果、統制が取れなくなったというのが開発打ち切りの真の原因ではないかと感じています。同じような結果を得られる機能が複数存在していたというのがその証だと感じています。最近のアップデートに至っては、機能の追加に関するものはほぼなく、ただフォントが追加されただけでした。
もちろんもう追加できる機能はないというほど盛りだくさんになっていたのですが、だからこそ、機能の整理整頓が必要だったのではないかと感じています。DORICO には是非その轍を踏まずに機能追加と整理整頓や統合をしっかりと続けていってほしいなあと願っています。

最後になりますが、楽譜について新参者である自分が偉そうなことをいっぱい書いてごめんなさい。怒られる前に謝っておく作戦です(笑)



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