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報告 豊田市民文化会館
9月29日、とても演奏と準備のかいを感じたコンサートが終わりました。初めての会場でありながら、今までにないほどリラックスした状態で演奏をすることができたとおもいました。
そんな豊田市民文化会館で行った音心コンサートの報告をさせていただきます。
会場を目指して
お天気は秋らしい青空というほどではなかったのですが、移動するときには曇り到着する頃には少し晴れ間も見えるという感じでした。
浜松から高速道路を使って一気に飛んでいったという印象です。
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こちらが会場の概観なのですが、この中の多目的ホールという場所をお借りしてのコンサートでした。
そして今回のコンサートは久しぶりにナチュラルカメラマンH氏によるものでございます。最近は機材のセットが台車に乗って登場するようになっており、圧巻です。
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セッティング
荷物を運び込んだら早速会場のセッティングです。今回の会場は2階にあるので、到着した皆さんがすぐにその存在を感じることができないのです。スタッフのみんながいろいろと話し合いながら、2か所看板を設置してくださいました。
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その頃えんじろうは会場スタッフの方から照明器具と音響機器の使い方をレクチャーしてもらっていました。それぞれが持ち場を生かして行動できるというのは素敵なことだと感じます。機材の説明に対する理解ははやいですが、看板をどのようにおいたら効果的かということに関しては判断できません。僕の場合、どこに置かれても目に入る可能性が低いので、ないのと一緒になってしまうんですよね。まさに餅は餅屋です。
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照明テスト中
以前会場の下見にでかけた際に、照明機材の操作方法の大まかなことは理解していました。基本的には音響のボリュームと同じようにスライドさせて明るさを決定するというものでした。
大量にあるスライダーの中から、どれがどの照明に対応しているということを教えていただき、練習をしてみる。
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たっ楽しい!
特に背景色を作る照明は、三原色のスライダーを操作して絵の具を混ぜ合わせる要領で作ってゆくのですが、ホームページ制作などで光の三原色の混ぜ合わせ方に少し慣れている自分にとっては非常に面白くて、それはもうリアルタイムで照明に座ってつきっきりで操作して痛くなるほどでした。自分の中にまだまだ視覚に対する執着があるんだなということにも気が付いたひと時でした。
音響の準備
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続いて音響機材のセッティング。いつも使っている機材をまずセットし、そこから会場のスピーカーにつないでいただくという方法をとりました。最終的な調整だけしていただき、あとは手元で細かく調整できる状態を作っておくこと。これが一番精神的に安心できます。
リアルタイムで音の監督と修正ができない条件である以上、それらを忘れて演奏に没頭することができないのです。しかし、操作する手段がなければ問題を発見したにしても何もできないわけです。手出しできない問題に対して、演奏中も常に警戒してしまうというのが一番意味のないことです。
それならば奏者兼音響監督もしながら、問題点を発見した時には手元で修正が出来る状態を作っておくというのが自分の考え方です。一見、大変そうに見えると思いますが、精神的にはこの方が楽なのです。
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スタッフのみんなが物販ブースといす並べなどをしてくださり、ついに演奏の準備は整いました。
ここからがリハーサルです。普段の演奏では、この辺りでもう時間が迫っているというか、時間を超えていることが多いのですが、今回も若干リハのスタート予定時刻を超えていました。
リハーサル
リハーサルで特に大切にしているのは楽器の配置です。演奏の快適さがかなり左右されます。今回はウィンドチャイムを利用するので、その配置には特に気を配りました。
専用のスタンドを購入すればよいのですが、ついつい運ぶ手間をケチってマイクスタンドに兼任させればよいやとなってしまうわけです。
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ピアノとのバランスの調整なども含めて、ひととうりのリハが終わったのはだいたい1時間ぐらいしてからでしょうか?
今回リハーサル用の時間はかなり長く確保していたので、意外にも時間が余るという状態でした。時間をあせらずにリハーサルができることはどれだけ大切なことなのかということを今更ながら思いしります。自分で煽られることが一番苦手だと言っておきながら、自分を追い立てるようなスケジュールを組んでしまうことを深く反省しました。
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オカリナと聖域
皆さん、準備を終えて控え室に移動。お昼を食べながらのんびりとしたひと時が流れてゆきます。しかし、えんじろうはなんとなくその空気感に違和感を感じていました。その空気に完全に身を投げてしまってはいけないと感じたのです。
とりあえずその場を離れ、再び会場に入りました。人毛もなくしんと静まりかえっていた会場には、本番を思わせるピリッとした空気がありました。
そこで、なんとなくオカリナを吹こうという気持ちになりました。休憩するほど疲れているわけでもないし、2食の自分にとっては食事も必要ない。この空気感を楽しもうじゃないかと思いついたのです。
「オカリナになる」そんな言葉がよく似合うようなひと時でした。オカリナを拭きながら会場のあらゆる場所をぐるりと回っていく。それはただ散歩していたのではなく、会場の中でも更に響きが変わる場所を探す旅。そして特別な空間を見つけました。
特別な空間では、そこにふさわしい音楽があります。それは僕が大好きなオカリナ奏者「宗次郎」氏が作られた「水心」という曲です。あの方もステージの最初で演奏することの多いオカリナ独奏曲。2月にご一緒させて頂けた際にもそうしていました。その音を聞くと、その場の空気が一気に変わります。神社やお寺などで感じるあの神聖な空間。いわゆる聖域ってやつじゃないでしょうか?あの曲はそれが広がってゆくのを肌で感じられる曲なのです。
実のところ、あの曲がそう感じさせているのか、宗次郎氏の演奏だから、そう感じさせられるのか?その疑問を解明していないままでした。
だから自分も吹いてみたのです。宗次郎氏が吹かれた時に感じる聖域の広さとはまるっきり違うのですが、その1/100ぐらいは自分の周りに聖域が出来上がったのを感じたのです。
これは世紀の大発見といいたくなるほど嬉しい気持ちでした。16年もやっていて、今更かよと笑われてしまうかもしれませんが、これほど強く聖域を感じられたのは初めてだったかもしれません。他人ではなく、自分が作る聖域があるんだということは、とても励みになりました。
同時に聖域が生まれる原理はあの旋律にあるのだということも思い知りました。オカリナの真価を表現できる旋律。それが作れるというのは本当に素晴らしいことだなと改めて尊敬します。
本番開始
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開場と共にお客様が入ってこられました。えんじろうはその間、誰もいなく鳴った控室にいました。
実はここで1つ事件が発生していたのですが、それは内緒にしておきます。もしかしたら改めて別の記事で書くかもですが。
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今回は大半の曲がオリジナル曲で占められています。1曲目はソロスタートが際立つ「カナリヤ」でした。珍しくいつものオカリナと違うものを使います。いつも使っていたパッキオーニというイタリア製オカリナはパワーがものすごくインパクトがあります。今回使ったアケタオカリナは、日本製の中ではパワーもありますが、豊かな感情表現ができるのも特徴の一つです。というわけで、今回は「心がそのまま音になる」の部分を強調するために、あえてこちらを選びました。
自分の行動の大半には説明できる理由があります。そう思うように行動して行きたいと考えています。
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最初だけえんじろうが曲紹介を行ない、その先は相方りょうこが中心になってMCをしてゆきました。しかし、オカリナに関する話題などでここは喋っておこうと思い立った時には、すかさずマイクで口をはさむと言うことをしていました。
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えんじろうが人前でオカリナを演奏するようになったのは、別に目立ちたいからとか、かっこ良く見られたいとか、そういう感じではないのです。
自分に人生の光を見せてくれるこの楽器に対して「これ、本当にすごい心を持った楽器なんだよ」という気持ちを伝えたいだけなのです。だからそれが伝えられそうな雰囲気になったときには、すかさず口を挟んだという感じでした。
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久々の愛知県でのコンサートということもあり、今回は瀬戸市のオカリナと豊田市のオカリナを連れて参りました。
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今回それを意識して造られた会場なのかと考えてしまうほど、ピアノの音色が引き立つ空間になっていました。会場は程よい感じで響を与えてくれるものの、その響く音域がとても上品な感じで、長く演奏していても疲れないという雰囲気でした。
そしてピアノに対しては低音と高音がしっかり分離して聞こえてくる感じがあり、後ろの方で聞いていても近くで演奏しているかのように聞こえてくるのが特徴だと思いました。
りょうこさんが気持ち良さそうな姿で演奏しておられるのもその影響ではないかと感じました。
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模様替え
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休憩を挟み、後半になってからは舞台背景色と衣装を別の色のものにしました。イメージが変わります。ビジュアル的な変化はやはりお客様にとっては大きな印象になると思います。しかし、それを着る自分にとっても心境の変化を誘発する要因にできます。いよいよ後半の佳境に入って行くんだなという気持ちになるのは大切なことだと思いました。
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今回自分でもとても不思議に思ったのは、MCで非常に自然な喋りができたことです。いつもだと割としゃべりながら、次に喋ることを考えていたりするのですが、今回は頭の中がバタバタすることなく落ち着いてゆっくり喋る事ができた方だと思います。
ゆったり喋る声はもちろん、自分の耳にも届きます。その声によってさらに自分の心が落ち着くのです。焦っているときはそれと全く逆の原理が起こります。つまり、どっちの方向であっても時間とともにエスカレートしてゆくんですよね。せっかくなら良い方向にエスカレートして行きたいものです。
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今回の演奏曲の中でも特にゆったりと演奏できた1曲が、この「秋空を漂いながら」というオリジナル曲です。この曲で使用したのは森の音オカリナというものです。この子は一定の息の強さに達すると声がかすれるという特徴を持っており、そのギリギリのところを攻めるのが非常に楽しいオカリナです。
あるときは声にならない声だったり、またあるときは訴えるような仕草だったり、非常に様々な表現をすることができます。
青空と雲が織りなす秋の空の世界はずっと一定のものではありません。次々と場面転換して行くような、そんな雰囲気をオカリナと共に歌いあげたい。そんな気持ちを叶えてくれる楽器です。
入り込み写真
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えんじろう、意識飛びかけてないかシリーズの写真を集めてみました。おそらく本番前の聖域づくりの影響を多分に受けて、今回は演奏中にも豊田市民文化会館の多目的ホールのステージに立って、今オカリナを吹いているという状況をすっぽり忘れてしまう瞬間が多々ありました。
そこにあるのはオカリナになっている自分という図式だけなんです。終演後にこの曲がとても良かったという感想もいただきました。
ところでこれ、すべての曲で同じくらいの入り込み方で演奏していたなら、全部良かったのかといえば、そうではないと思うんです。さまざまな熱量とその分配先が違うからこそ、この曲がこの曲として生きるのだと思います。
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アンコール
最後の曲を終えてステージを立ち去ると、皆さんからのアンコール。この幸せな感覚を少しでも長く味わいたいという思いとは別で、そそくさと背後の照明を切り替えて、後ろを通って戻ってくるえんじろう。
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実は今回の演奏では、背後に色を作る照明のみえんじろうが担当していました。第1部では黄緑の稲穂のようなイメージ、第2部では抜けるような青空のイメージ、アンコールはコスモス色にしようとしました。
でもどうにも時間がなく一瞬で作る色は今一つ納得いく結果にはなっていませんでした。
でも今回は初回ということですし、これからさらに煮詰めていけるんじゃないかなとも思っています。何よりもここまでワクワクして楽しいと思えている間は進化し続けられると信じられます。何せ単純ですから。
新曲披露
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そしてアンコールにして新曲を披露しました。背景色はこの曲に合わせて変更したようなものです。曲名は「コスモスの舞」と名付けたのですが、もうちょっとセンスがなかったのかと今思います。もう発表しちゃったけど、後から名前かえるかも知れません(笑)
コスモスの花はとても軽く、風に揺られて踊りを踊るかのようにゆれますよね。そんなイメージからできました。
でも実際に曲名がついたのは曲が完成し終わってしばらく経った後です。というか、曲目リストを作るときに「曲名つけてないや」と思ってつけたという感じです。えんじろうにとって曲名はそんな感じのポジションなんですよね。
実はこの曲、先日から連載している DORICO の楽譜入力に慣れ親しむ目的で練習用に作ったという曲なんです。
メロディーを入れ出したらどんどん良いものになってゆき、そのまま「こりゃ演奏に使えるぞ」となったわけです。まさにイメージの海から勝手に湧き上がってきた1曲という感じです。最初は譜面入力の練習のために始めたのに面白いですね。
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終演後
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Car-Den の時のように、終演後はお客様とのコミュニケーションタイムができました。そそくさと立ち去ってしまうのではなく、後ろにいる僕らのところに声をかけに来てくださるお客様がいらっしゃることがとても嬉しく、自然に笑顔になります。
毎度ながらあまり気のきいたことの喋れるえんじろうではないのですが、それでも嬉しい気持ちだけでも伝えることは出来ているのかなと思っています。
楽譜やCDを手渡したり、サインをしたりしているうちにうれしいひと時も終了。
ここからは片付けという感じでした。
ご褒美
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今回のご褒美はステーキ屋さんでたっぷり食事を食べました。肉汁のたっぷりで熱々のチキンステーキをいただき、カメラを取ってくださったH氏とたくさんお話をすることができました。
和やかな時間は嬉しいものです。あっという間に時間が過ぎ、解散の時間となりました。
ただいまの楽器
今回は11本のオカリナとシェイカーとウィンドチャイムが活躍しました。
シェイカーやウインドチャイムがオカリナとは別の目的で使われる楽器であることは明白ですが、オカリナ自体もそれぞれの楽器が明確な違いの下で使い分けられています。
だからこの中の1本でも欠ければ、この日のコンサートは成り立ちません。本当に大切な楽器です。
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良い響きの中で演奏させて頂けたこと、とても感謝しています。会場のスタッフの方々もとてもやりやすい距離感で見守っていただけて、自分としてはとても気楽に準備を進めることができました。
本番に負けないぐらい準備の時間というのは大切なものなのだということを今回のコンサートで非常に強く学びました。
準備が始まる時点で、自分の精神コントロールは始まっている。その結果は本番に大きく影響する。これはこれからも大切に活かして行きたいなと思いました。
スタッフの皆さん、お越しくださったお客様、ありがとうございました。
記事制作時間 3:30
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