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妄想物語
先日の明け方、何か生き物の悲鳴のような声が聞こえました。割と甲高い声で、それは小動物のようでもあり、鳥のヒナのようにも聞こえました。
お日様が出る頃になると、いつもの3倍ぐらいの量のカラスの声が聞こえてきました。その声はいつもよりもけたたましく、迫力に満ちており、その数も普段とは違うものでした。
自分には集団に対する恐怖心というものが昔からあり、人間以外からそれを感じたことはちょっと久しぶりでした。同時にこんなシナリオがうかんできたのです。
巣から落ちたヒナ
寝ぼけた気分で足元を見た時、背筋に寒気が走った。巣の中のいつもいる場所じゃない。半分以上地面が見えている。体がすくむ。片足に踏ん張ろうと力を入れた瞬間、その足がつるんと滑って目に映る景色がめまぐるしく変化する。
硬い地面に打ち付けられたヒナは、痛みに耐えながら辺りの様子をうかがう。思うように動かない体を引きずるように体を捻って辺りの様子を確かめようとする。
まだ薄暗い早朝の闇の中に、2つの光る物体を見た。仲間に助けを呼ぶ声を必死に張り上げながら、どうしてあの時周りの様子をしっかり確かめる前に足に力を入れてしまったのだろうか?そんなことを考えていた。
暗闇から飛び出してきた得体の知れない物体。それが何かを知る術ももたぬまま、カラスのヒナの時間はそこで止まった。
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発見と推察
通りかかった大人のカラスがその光景を見つけるまでには、さほど時間はかからなかった。
これは大変なものを見たといわんばかり、仲間のカラスたちに知らせて回った。やがて数羽のカラスがやってきて、ヒナの状況を確かめる。
死んでる。怪我してる。まだ子供。誰だ?誰がやった?
その様子はほかのカラスにも伝わり、みんなが噂をし合ったり見に来るようになる。
決起
日の出の時間がやってきた。そこにはカラスたちが大量に集まってきており、ヒナの家族が所属して居た団体の血の気の多いカラスが口火を切った。
俺たちの家族が殺された。誰にやられたか分かんね。また同じようなことが起こるかもしれね。
そうだそうだ。
誰にやられたかを発見して、もうやられないようにしないといけない。
そうだそうだ。
この場所を中心に、範囲を拡大しながら調べていくぞ。何かあったら近場の仲間に知らせるんだ。どんなに小さな変化でもいい、てめぇら情報を集めてくるんだ。頼んだぜ。
おー!
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まとめ
雛が落ちて襲われたという事実は分かりませんし、カラスの行動の真実も分かりません。なんだよ全然わかんないんじゃないか?ということで、完全にえんじろうの妄想物語なのですが、ちょっと感情移入して頂けたら幸いです。
こんなカラスたちの行動を想像して、カラスってえんじろうよりもはるかに社会性の高い生き物ではないかと考えてしまいました。自分の事で精1杯なえんじろうと比べ、すごいなあと思ってしまいましたとさ。