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Snus危機【注意喚起】

こんにちは。オスロに留学している大学生です。
今回はノルウェーに来たら間違いなく身近に存在するものになるSnusとその危険性について書いていきたいと思います。

私はSnusについてよく知らないかつ喫煙習慣がないながらも人生経験だと思って体験してみたのですが、結論から申し上げるとそのあまりの効き目の強さにかなり恐怖を感じました。おそらく症状としては急性ニコチン中毒などにあたるのではないでしょうか。覚えている限り正確に私が実際に経験した症状を書いていきますので、北欧に行かれる方はぜひご注意いただければと思います。

なお、私の実際の症状を全て書いているため尾籠な表現が含まれます。ご留意ください。


Snusとは

そもそもSnus(以下スヌース)がなんなのか、知っている方はいらっしゃるでしょうか?私はノルウェーに来て初めて知りました。日本では、名前を聞いたことも実物を見たこともなかったと思います。

スヌースとは、「嗅ぎタバコ」というジャンルに分類されるタバコの種類の一つです。厚生労働省は『「スヌース」は、加工したたばこ葉を入れた「ポーション」と呼ばれる小袋を口に含み上唇の裏にはさんで使用する無煙たばこの一種です』と説明しています。このスヌース、どうやら北欧で特に人気のようで、発祥はスウェーデンなのだとか。

ノルウェーにおいてはこの深緑の色をしたパックが主流です
コンビニやスーパーでも販売しています
中にはこのような小さなパックが複数入っています

上の説明にもあるように、タバコの葉を詰めた小さなパックを口に入れているだけなので、匂いや煙といった一般的なタバコにつきものの敬遠要素がないどころか、ガムと違って噛まないので咀嚼音もありません。こうした非喫煙者から嫌われる要素を全て省きながらも、タバコと同じ快感が味わえるとのことで、オスロではどこに行ってもこれを使っている方を見かけます。街中や電車内はおろか大学では授業中に、ジムではトレーニング中に使用している人も多く見かけられます。

このようにノルウェーではどこでも見かけられるごく一般的なものですが、スヌースの人体への有害性の高さからEUではスウェーデンやフィンランドといった一部国を除いて販売が禁止されているようです(厚生労働省公式サイトより)。

使用したきっかけ

私は非喫煙者なのでつい先日までその存在は知りつつも関わりはなかったのですが、つい先日バディーウィーク(新しく来た留学生に大学を案内したり、交友を深めてもらうための期間)のパーティに参加した時にその場で出会った留学生と話しているうちに、スヌースの話になりました。

彼は大学院生で、すでにこちらへ来て1年半とのことでノルウェー生活の先輩としていろいろ話を聞いていたのですが、その流れで「この国では一度スヌースの蓋を開ければ必ず『ひとつ分けてくれないか』と誰かが寄ってきて話が始まる。基本的にシャイなノルウェー人と交友を深めたかったらこれほど便利な道具はない」と話していました。

私もノルウェー人のシャイさは常々実感していたので、彼らをそこまで外向的にさせるというスヌースに興味を持ちました。そこで彼にお願いして一つ分けてもらい、人生経験として試してみたというのが使用に至った経緯です。

すぐに現れた症状 ⚠️尾籠な表現があります

今思えば口に入れた瞬間、使用し始めた瞬間から私の体は拒絶反応を起こしていたのだと思います。確かに上唇と歯の間に挟んだ時から、妙に上唇の裏側、スヌースが当たっているところが熱いというか痛い感覚がしていました。しかしこれは口に異物を入れているからだと考え、スヌースをくれた彼の説明通り2分ほどそのままにしていると、突然強烈な酩酊感に襲われました

今となってはこの表現が適切かどうか確認のしようもないのですが、飲酒による酩酊感を数倍強烈にした感覚がありました。実はそれまでにビールを2杯飲んでいたのですでにほろ酔いではあったのですが、これまでの飲酒経験では味わったことがないレベルの酔いがほんの30秒ほどの間に襲ってきたような気持ちでした。この段階で自身の異常な反応に怖くなり、スヌースを口から出して処分したので実際に口に含んでいる時間はたった3, 4分程度だったと思います。

あまりにも強烈な酩酊感に恐怖を覚え、席を立って水を取りにいこうとしたのですが、足取りがおぼつかなくなり視界が回るような感覚があり、すぐに立っていることが辛くなりました。おそらく側から見たらこの段階ですでに千鳥足だったかもしれませんが、それでもなんとかトイレに辿り着きました。顔をはじめ全身が強く火照る感覚があり、鏡を見たところ少し頬が紅潮していました。そのまま個室に入って酔い覚ましのために座っていたところ、5分程度たったあたりで急激に吐き気を催し、戻してしまいました。

この吐き気も今まで経験したことがないもので、一般的な体調不調時の吐き気と比べて平静な状態から吐き気を感じて戻すまでの時間が圧倒的に短く、明らかに体内の異物を出そうとしている感じがしました。これを含めて計3回戻したあたりでかなり回復し、戻したことによる気だるさはありつつも酩酊感は飲酒時と同レベルまで収まっていました。

この酩酊感が解消されたこと自体もまた不気味でした。というのも、飲酒によって激しく泥酔した場合その酔いはかなり時間を置かなければ回復せず、場合によっては二日酔いになることもあります。しかしスヌースの酩酊感は、3度戻したあとはほぼ収まり、時間としては1時間ほどでかなり改善された感覚がありました。もちろんその時も平常時と比べればひどく体調が悪い状態だったと思いますが、その後家に無事に帰りつきシャワーを浴びて寝て起きたら何事もなかったかのような体調に戻っていました。あれほど強烈な酩酊感を感じ、3回も戻したのにも関わらず、家に帰る頃にはかなり回復している即効性とその強烈さは二度と経験したくない感覚です。

翌日調べてみたところ、急性ニコチン中毒という中毒症状があるようで、私の場合はこれに陥ってもおかしくない状態だったように思われます。小谷はその症状を「軽度の中毒症状として悪心, 嘔吐, 眩暈, 頭痛, 手指振戦などを来す」と説明しています(1994 小谷)(参考文献は本文最後に記載)。

注意喚起

今回私は使用開始後すぐに使用を中止したことで先述のような軽い症状だけで済みました。しかしながら、私のような喫煙習慣がない人がスヌースを使用すると重篤な症状を発症する可能性があります。また喫煙習慣がある人でも、スヌースのニコチン含有量の高さから危険な目に遭う可能性があります。ノルウェーで販売されているスヌースはニコチン含有量が1パックあたり8mg から 14mg であり、中には22mg に上るものもあるそうで、かつこれを一般の有煙タバコ(紙巻きタバコ)にあるフィルターを介さず直接摂取するため、多量のニコチンが一気に吸収されることになります。先ほど引用した症例報告書では、以下のように言及されています。

ニコチンの中毒量については1~4mg, 血中濃度は5~10μg/ml, 致死量につい ては成人で30~60mg (幼児では10~20mg) が目安と思われる。中毒量と症 状を対応させ, 1mgで不快 感, 2mgで頭痛, 眩量, 聴力・視力障害, 多呼吸, 3~4mgで下痢, 四肢冷感, 意識障害を呈するとした記載もある。

1994 小谷, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1952/43/4/43_4_991/_pdf
引用内太字表現に関しては筆者による

このことからも、いくら北欧にしかないものだからといってスヌースに手を出すことはおすすめできません。私は今回嘔吐の症状だけで済みましたが、あの感覚は二度と経験したくもないですし、何より恐怖を感じるので他人に勧められたとしても金輪際使用することはないと思います。

今回は以上になります。この経験から、好意で一つ分けてくれた友人の留学生には申し訳ないことをしたと思いつつ、身をもって自分が喫煙に向いていないこと、そしてスヌースの恐ろしさを知ることができました。今後、ノルウェーおよび北欧に来られる方はスヌースに十分お気をつけください。自分から自衛の意識を持ちさえすれば、一切関わることなく生活ができると思います。

参考文献

  1. 厚生労働省. "無煙たばこ・スヌースの健康影響について". https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/muen/ (参照 2025-1-21)

  2. 小谷和彦. "急性タバコ中毒の2成人例". 1994-11. 日本農村医学会雑誌. 43巻4号.  p,992. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1952/43/4/43_4_991/_pdf. (参照 2025-1-21)

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