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君が周りから思われている事。
君は周りからこう思われている。
この前、久しぶりに集まった高校の同級生たちとの飲み会で、こんなことを言われた。
「お前ってさ、昔からそういうキャラだったよな」
どういうキャラかって? そいつは詳しく説明してこなかったが、言い方から察するに、俺は「そういうキャラ」として、そいつの中ではもう何十年も前に分類を終えているらしい。
「昔から」とか「変わんねぇな」とか、そういう言葉を聞くたびに、俺はちょっとムズムズする。なぜなら、それが本当に俺のことを言っているのかどうか、確かめようがないからだ。
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考えてみれば、俺たちはたぶん誰もが、どこかで「こういう人」として周りからカテゴライズされている。例えば、会社では「真面目なやつ」とか「いつも明るい人」とか、学生時代なら「ちょっと変わり者」とか「頼れるリーダータイプ」とか。何かしらのラベルを貼られて生きている。
だけど、問題はそこじゃない。そのラベルが、たいていの場合、自分の意志とは関係なく貼られることだ。
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例えば俺が「面倒くさがりなやつ」と思われていたとしよう。確かに、合コンの幹事とか、会社の飲み会のセッティングとか、そういうのは積極的にやりたがらない。でも、それは「面倒くさがりだから」なのか? ただ単に、そういう場が苦手なだけかもしれないし、自分が仕切るよりも、誰かがやるのをサポートする方が向いていると考えているだけかもしれない。
でも、一度「面倒くさがりなやつ」というレッテルを貼られたら最後、それが俺の「キャラ」として定着する。で、そのキャラを壊すような行動をしたら、「え、お前、そういうタイプじゃないじゃん」とか言われる。
いや、知らねぇよ。俺がいつ「俺は面倒くさがりキャラでいきます」って宣言したんだよ。
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さらに面倒なのは、その「キャラ」が一人歩きし始めることだ。
例えば、誰かが「お前ってさ、意外と優しいよな」と言ったとする。「意外と」という言葉がついている時点で、俺のイメージは「優しくない人」になっているわけだ。で、その場にいた別の誰かが、「そうそう、こいつってクールぶってるけど、本当は気遣いできるやつなんだよな」とか言う。
その瞬間、俺のキャラは「クールぶってるけど、実は優しいやつ」に決定したことになる。
それはそれで別に悪くはないのかもしれないが、問題は、それが「俺自身が選んだものではない」ということだ。
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この現象が一番顕著に表れるのが、会社の飲み会だ。
飲み会の場では、みんな「こういうやつだよな〜」という話をするのが好きだ。
「〇〇さんって、やっぱりしっかり者だよね〜」とか、「□□くんは、ムードメーカーだもんな〜」とか、「△△さんって、なんか謎多いよね」とか。
そして、一度「そういう人」と認識されたら、そこからはみ出した瞬間に、変な空気が流れる。例えば、普段はおとなしいキャラとされている人が急に冗談を言ったら、「え、お前、そんなこと言うんだ?」と驚かれるし、逆に、いつも場を盛り上げる役割を期待されている人が静かにしていたら、「今日どうしたの?」とか言われる。
もうさ、ほっといてくれよ。
俺たちはロボットじゃないんだ。たまたまその場のノリで静かにしていたり、たまたま気が向いて冗談を言ったりすることだってある。なのに、そこにいちいち「キャラとの整合性」を求められるのが、すごく息苦しい。
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たぶん、みんなそんなに意識していないんだろう。でも、無意識のうちに、「こいつはこういうやつ」という枠を作って、そこに他人を押し込めようとしている。
そして、そこから外れた瞬間、「あれ? なんか違うな」と違和感を持つ。
これ、逆の立場になったらめちゃくちゃ理不尽だってことがわかるはずだ。
例えば、ある日突然、会社の人たちが「君は周りから、めちゃくちゃロックな生き方をしている人だと思われているよ」と言い出したらどうだろう?
「え? そんなこと一度も言ったことないんですけど」と思うだろう。でも、周りは勝手に「いや、だってさ、普段あんまり会社のイベントとか出ないし、一匹狼っぽい雰囲気あるし」とか言ってくる。
それで、「いや、普通に出るのめんどくさいだけです」と言おうものなら、「やっぱりロックだな!」と勝手に解釈される。
…怖すぎない?
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もちろん、全部が全部悪いわけじゃない。たとえば、「こいつは気が利くやつ」と思われている人が、そのおかげで頼られたり、人間関係がスムーズになったりすることもある。
でも、そういうのは本人が納得している場合に限る。
もし「いや、別に気が利くキャラになりたいわけじゃないんだけど」と思っているなら、それはただの「勝手な押し付け」だ。
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人間なんて、場面場面で違う顔を持っている。ある時は真面目で、ある時はいい加減で、ある時は社交的で、ある時は人見知り。それが普通のことだ。
なのに、「お前はこういうやつだよな」と決めつけられるのは、正直しんどい。
だから、俺はこれから、こう言おうと思う。
「いや、それ、お前の感想だろ?」
それぐらい、軽く受け流すぐらいがちょうどいいのかもしれない。