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若林正恭的、娘へ



娘へ。

こうやって「娘へ」と書き出すだけで、なんか少し照れくさいな。君がまだ小さいから、これを読めるようになるのはずっと先の話だろうし、もしかしたら一生読まないかもしれない。でも、今こうやって文章にしておきたいと思うんだ。僕が君に対してどう思っているのかを、言葉に残しておきたいからね。

君が生まれた日、僕は本当に不思議な気持ちだったんだ。どこかの本で「子どもが生まれると、心に穴が空いていたことに気づく」みたいな話を読んだことがあるけど、僕の場合は少し違った。むしろ、心の中に新しい部屋が突然できたような感覚だった。その部屋はまだガランとしていて、家具も何もない。でも、そこに君が住み着いたことで、少しずつ家具や小物が増えていく感じがしてね。

最初は正直、怖かったよ。赤ちゃんを抱くなんて経験、もちろん初めてだったし、君があまりにも小さくて壊れそうで。病院で看護師さんに「どうぞ抱っこしてみてください」って言われたとき、心の中では「いやいや、無理です」って叫んでた。でも、君を抱いた瞬間、不思議と安心したんだよね。体の中に流れていた緊張がスッと消えて、「ああ、この子は大丈夫だ」って思えたんだ。

それからは、あっという間の毎日だった。君が寝返りを打った日、初めて立ち上がった日、そして最初の一歩を踏み出した日。どれも驚きの連続で、僕はそのたびに「えっ、もうそんなことできるの?」って声を上げてたよ。もちろん、泣き声で夜中に起こされたり、おむつ替えで四苦八苦したり、大変なこともたくさんあった。でも、不思議とその大変さも嫌じゃなかったんだ。むしろ、君がいてくれるからこそ味わえる特別な時間だって思えた。

君が少し大きくなって、言葉を覚え始めたころのこと。最初に「パパ」って呼んでくれたときは、本当に嬉しかったよ。言葉の意味を理解してるかどうかはさておき、その一言が僕にとってどれだけ特別な響きだったか。僕は普段、あんまり感情を顔に出すタイプじゃないけど、あのときばかりは顔がニヤニヤしてたと思う。

最近、君はすっかりおしゃべりが上手になってきて、僕と一緒にいる時間もずいぶん賑やかになったよね。例えば、ドライブをしているとき、君が窓の外を指差して「あれなに?」って聞いてくる瞬間が好きなんだ。僕が答えると「ふーん」って興味なさそうにするけど、次の瞬間にはまた別のものを指差して「これは?」って聞いてくる。それが何だか面白くてね。君の目には、世の中がどれだけ新鮮に映っているんだろうって想像するだけで、僕までワクワクしてくるんだ。

でもね、君がこれからもっと成長していく中で、きっといろんなことがあると思う。楽しいこともあれば、つらいこともある。世の中って、思っていたよりも不公平だなって感じる瞬間もきっとあるだろうし、自分がどうしても納得できないような出来事にぶつかることもあると思う。そのときに、君がどんなふうにそれを受け止めるのか、僕にはまだわからない。でも、君にはその一つひとつに向き合って、ちゃんと自分の気持ちを大事にしてほしいなと思う。

君が泣いたり、怒ったり、笑ったりする姿を見るたびに、僕は「この子はちゃんと自分の感情を生きているんだな」って感じるんだ。それが一番大事なことだと思う。大人になると、つい感情を隠したり、ごまかしたりすることが増えるけど、君にはそうならないでほしい。自分の感情に正直でいることは、強く生きるための大切な力だからね。

僕はこれからも、君のそばにいるよ。君が一人で歩き出す準備ができるまで、ちゃんと支えていきたいと思う。もちろん、いつかは君が僕の手を離れて、自分の道を歩いていく日が来るんだろう。それは寂しいけれど、同時に楽しみでもある。そのとき、君が自分の足でしっかりと立っている姿を見られるなら、それだけで僕は満足だよ。

最後に、これだけは覚えておいてほしい。君が何を選んでも、どんな道を進んでも、僕とお母さんはいつだって君の味方だってこと。困ったときには遠慮なく頼っていいし、楽しいことがあったらぜひ教えてほしい。君の人生がどんなふうに進んでいくのか、僕たちも一緒に見ていきたいからね。

だから、これからも元気で、笑顔でいてくれること。それが僕の一番の願いだよ。

君の父より。

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