『本物の英語力』(2016.講談社現代新書) 烏飼久美子


本物の英語力を身につけるためにはどうしたらよいか。著者は4つ述べている。
まず英語学習の目的だ。ほとんどの中高生は、目的なく英語を学習しているので上達しないし、嫌いになる。しかし、英語の達人たちでも、初めは英語が苦手であった。しかし彼らの多くは、身の回りにある興味・関心などがきっかけとなり、それについて英語で読み、聞き、話したことで英語が日常に入り込んでいった。つまりは身の回りにある些細なことが英語学習の意欲を上げていくのだ。
次に、発音だ。発音は、最低限の音を身につけることが重要だ。なぜなら、多くの日本人学習者は完璧な発音を身につけようとして英語が嫌いになるからだ。また、発音は独学が難しく、音だけを聞いても口、舌の動かし方は分からない。この本では、日本語と英語の音の違いについて述べられている。日本語の母音は、5音素なのに対し、英語は20音素あり、英語と口の動かし方が全く違う。また、日本語の子音は16音素だが英語は24音素あり、摩擦音もある。また英語の子音は母音を後につけず子音で終わることもある。また英語を日本語のように母音を強く言うと音節が増え、相手に通じなくなる。また日本語は一定のリズムで喋るが、英語には抑揚が必要である。これらを身につけるには、まず英語の音とリズムの特徴を把握すべきである。
次に語彙だ。まず、語彙数は目的に合わせて変えていくべきだ。仕事で使うには、8000〜10000語必要だ。しかし中高で習うのは3000語、そして大学では増えるどころか減っている。我々は圧倒的に単語数を覚えられてない。次にその莫大な単語の習得方法だ。無理な暗記はせず、回り道を覚悟してゆっくり着実に語彙を取り込むのが最善だ。そのためには英文をたくさん読むことだ。英文の読み方には2種類ある。多読は楽しく読め、また分からない単語は無視してどんどん読みすすめることでその単語の意味を推測することができる。精読は、自分の関心のあるテーマをじっくり読み、分からない単語は調べることで、目にその単語を焼き付けられる。つまり、語彙を増やすには、読むことが重要である。これが英語を聞く力、話す力、書く力などの、全ての土台になる。また単語はコンテクスト(その場の状況)によって意味が変わってくるので、読むことは英語力の大いなる可能性を引き出す。
最後に文法だ。文法はまず最低限のルール、5文型を勉強すべきである。5文型を抑えた上で高度なルールを肉付けしていく。また、英文法は、英語文化の特徴が表れており、異文化理解のつもりで学ぶことで楽しく勉強でき、そこに英語を学ぶ意義がある。


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