《火消しの極意2》回復を最優先! 原状復帰に命をかけろ
おう、いらっしゃい!
酒場のマスター、シシャモだ。
あれから調子はどうだ?ボヤ騒ぎは落ち着いたか?
そうか、良かった。ひとまず一息つけるな。
だがここからが勝負所ってところだから、押さえるべきところは押さえておくに越したことはない。
火消しの極意、その2だ。
初動の後にすぐやるべきは、原状復帰だ。
これは不動産用語としてよく知られているが、システムの世界でも同じ意味で使う。
原状復帰でも原状回復でもほぼ同じ意味だから、どちらを使っても構わない。
前回話した流れの通り、まずは事実確認と情報整理。
そして手を打ってから謝罪と原因究明。
本格的な対処、とやっていく。
原状復帰は本格的な対処で完全な形にするが、応急処置の段階でも形では作る。
量と質よりもまずは速度、あとで堅牢にしていく。
少し規模や優先事項は変わるが、災害でイメージするとわかりやすいだろう。
大雨や土砂災害では、まずは被害のエリアを把握する。
その次に、これ以上の被害や影響が出ないよう、水の流れを一旦制御する。
川が氾濫しているのに、なぜ溢れたのか?をとやかく議論している暇なんかないだろう?
とにかく土嚢を積んで、水の流れを制御して、下流や周辺地域を水害から救うのが最優先だ。
火の手があがっていれば、出火の犯人探しよりもまず延焼を防ぐ。
隣の建物や、現場の倒壊自体を防ぐ。
人命が絡んでいればそいつを最優先だ。
システム屋のイメージに戻すなら、金融機関システムのトラブルであれば、
エラーの原因探しよりも、まず預貯金や送金ができる状態を何としても作る。
いつも通りの運用ができることが肝要だ。
とはいえ、闇雲に手を打っても暖簾に腕押しだ。
スピードだけを優先して後手後手に回ってもかえって遅くなる。
原因はある程度の特定は必要だろう。
最低限実行しなければならない決定的なものだけ着手する。
情報を取捨選択し、何が一番大切かを見極める。
根本対処までいかずとも、原因に近いところから対処する。
源流から抑えることはどの状況でも同じだ。
本格的な対処までみれば、どれだけ早く本来の状態に戻せるか。
この時間が信用やその後の状況に大きく関わってくる。
次の機会がないことが一番だが、もし遭遇してしまうようなことがあったら、
まずは口頭で状況説明や承認が取れるように練習しておくといいだろう。
資料作成や体裁なんかは後回しでいい。
お客様最優先、サービス最優先、価値提供を最優先するので、最速で必要なアクションだけ取らせてほしい、と上を動かすのもお前さんの力量次第だ。
その対応スピードと熱意、要点を押さえた動きが見えれば、信頼を勝ち取るチャンスにもなる。
何事も経験だ、普段から土壇場力を発揮できるように虎視眈々と磨いてみてくれ。