オーストリア 1
目を覚ます。いつものようにスマホのアラームで。
いつもとは違う高い天井。
朝日が差し込む。清々しい朝。
ヨーロッパはもう完全に冬を越した。
何より、日本では新しい元号「令和」が今日から始まった。
時間を確認する、出かけるまでは十分に時間はある。朝ごはんを食べて早めに出よう。電車の時間は決まっているが、駅の事はさっぱり知らない。
初めてくる土地、オーストリア、ウィーン。
オーストリアで新元号を迎えることになろうとは。
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バーミンガム空港から出発し、昨夜、ウィーンの空港に着いた。飛行機は流行りの格安飛行機だ。
かなり、準備はバタバタしてしまった。時間もなければお金もない。さらにはビザの問題がこのオーストリアへの訪問を断念させる可能性もあった。
幸いな事に、ビザは大丈夫だった。しっかりとした確認を取るのに手間取ってしまったが、イギリスで学生ビザで就活をするには全ての授業、課題の提出が終わったのちに一歩でもイギリスを出てしまうと学生ビザの優位性が失われてしまう。
課題の最終提出前に合間を見つけ、予定を立てることできた。
お金。今回の旅費は全て、会社持ちだ。
そう、インタビュー(面接)に呼ばれたのだ。旅費を全て持つから会社にインタビューに来ないかと。
半年前には想像も出来ない事だった。確かに、最近は確実に手応えを感じるようになっていた。会社側から興味を持ってもらうことが増えた。電話やスカイプでのインタビューの約束をする機会が途端に増えた。
空港に着くと、そのまま急いでウィーンの街まで向かう電車に向かう。あまりだらだらしている時間は無い。あらかじめ、全て予約していたので移動自体はかなりスムーズにいった。
駅に着くとグーブルマップを見ながらホテルを探す。夜で観光しようもないしそのままホテルへ向かった。
雰囲気はいい。会社持ちだから、自分だったら絶対に予約しないだろうホテルにした。チェックインを済ますと、一階にあるバーのドリンク券をもらった。
明日のインタビュー終わって、帰ってきたら飲みに行こう。
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朝食といっても、普段は食べないのであまり食べることもない。
パンをひとつだけ食べる。なんの変哲もないただのパンをオレンジジュースで流し込む。
準備はできた。出かけるとしよう。
また、Googleマップを見ながら駅へと向かう。スーツケースを引かなくていい、身軽だ。
駅に着く。電車までまだ少し時間がある。
そうだ、どうせなんだからレッドブルを買おう。
オーストリアでもレッドブルは高い。
ウィーンからは電車で2時間ほどかかるところに会社はある。モーツァルトの故郷にほど近い。
電車に乗ってしまえば、特に心配することもない。ゆっくりしよう。
iPhoneで音楽を聴きつつ、天気のいいオーストリアの景色を眺めながら目的地へと向かった。
音楽と音楽の間にふと、日本語が聞こえる気がする。
音楽を止めて、よくよく聞いてみても日本語だ。
どうやら、ゴールデンウィーク休暇中に旅行に来た日本人OLのようだった。彼女たちはザルツブルグの駅で降りて行った。モーツアルトのファンなのだろうか。
僕の目的地はもう少しだけ先だ。
会社はかなり田舎にある。
インタビュー用に準備して来た資料などを読み返したりしているうちに、会社の最寄り駅に着いた。
駅自体はかなり小さい、とは言ってもプラットフォームは4つほどある。
小さいながら割と新しめの駅に見えた。
早めの電車を選んだから、インタビューの約束のまだ時間まではまだ余裕がある。
タバコでも買おうか。
普段は当然、タバコを買うお金などない。今日は特別だ。
駅の売店に向かう。
40本入りのタバコがイギリスの半額程度で買えた。安い。
良い国だな、オーストリア。
そういえば、ドイツに行った時にも驚いたが、ヨーロッパではまだまだ駅のホームで喫煙が出来る。タバコもそのまま線路に投げ捨てている。ヨーロッパは未開の地だ。
会社までは駅からタクシー。駅前のロータリーに止まっていたタクシーに乗り込む。スマホを見せながら目的地を伝えると、出発した。
英語はどうやら、話せないらしい。
ほどなくして、会社前に到着した。15分くらいだ。
タクシーの支払いを済ませ、降りると、たまたま従業員らしき人が前を通ったのでそのまま門を開けてもらう。
そのまま、その人に案内されて受付まで行く。
受付に話をすると待つように言われた。