#77 おくれ毛
おくれ毛というのはたいへん難しいと思う。
おくれ毛があると、 こなれ感 や 洒落感 が出て、雰囲気がぐっと大人びてみえる。
その適切なおくれ毛があると、
どこからどう見ても大人の女であり、手入れのいき届いた印象を与え、きっといつ訪問しても部屋がきれいなのだろうなということまで想像させられる。
でもどうしてだろうか、実際には、おくれ毛というのはほんとうに難しい。
まずはじめに。それは多すぎても少なすぎても違和感を感じる。必ず適量でなければならない。
巻くとき。左右非対称にわちゃわちゃしすぎてしまっていたら、寝癖のような印象を与えかねない。
かといって手を加えなすぎれば、だらんとつかれたようにみえる。ボサボサとおくれ毛は紙一重だ。
だから慎重に。ゆるく、ふわっと。
できあがってからもたいへんだ。
マスクをつけるときにはおくれ毛が絡まり、マスクを外すときにはおくれ毛が絡まり。絡まり事故多発だ。やり場のないおくれ毛へのストレスが発生する。
勝手に生み出されて勝手に邪魔もの扱いなんて、おくれ毛が1番ストレスを感じているだろう。すまない、最初はそんなつもりじゃなかったんだよ。
もうどうしようもない、鬱陶しい、と思って耳にかけたら最後。おくれ毛は耳の形になってしまう。耳の体温でアイロンのような効果があるのか、その曲線は1度ついたらなかなかにとれない。
そうなったら戻すわけにはいかないし、さも最初からおくれ毛なんてなかったかのような状態になる。
だから、私は街でおくれ毛を洒落た感じでだしている人を観察してしまう。あれはいったい、どのようにつくられてどうやって維持しているんだ。