#105 ペペロミオイデス
ペペロミオイデスをご存知だろうか。
ある日、街を歩いていたら気になるお店を見つけた。漂う日本ではないどこかの雰囲気。古き良きものがありそうな外観だ。
入ってみたらそこは、北欧のセレクトショップだった。
赤、黄、オレンジの食器たち、独特な絵柄の絨毯、丸や三角、複雑なカタチをした時計、灰色の毛皮の椅子、
こじんまりとした空間の中に、これでもか というくらいに選ばれし家具や生活雑貨たちが集合していて、小宇宙的な特別さが広がっていた。
見たことのないものたちがたくさんあったが、その中のひとつに見たことのない葉のカタチをした植物があった。
「この植物はなんていう名前ですか?」
「あ〜それはペペロミオイデスです。はじめは小さかったんだけど、今ではこんなに大きくなってね〜」
ペベロミオイデス?!
呪文みたいな名前だ。パキラ、ガジュマル、ペペロミオイデス。私が知っている観葉植物の中でいちばん長く、覚えにくい名前。
でもなんだかそれが良い。知っている人だけに伝わる感じが、良い。
気に入ったので家に帰ってから調べてみた。
ぺぺロミオイデスは、「ピレア」という植物の一種。特徴的なまん丸の葉の形から「パンケーキプランツ」とも呼ばれているそうだ。なんともかわいらしい。葉はやや多肉質で、ぷにぷにとした触りごごち。日光をとても好むそうだ。これは人間だったら絶対に性格も明るい。花言葉は「救われる人々」。
今まで見たことがないものだから、あのセレクトショップにしかない植物に違いない。
そう思っていたのだが、心奪われたあの日から、他のお店、お花屋さんなどで何度かペペロミオイデスに遭遇するようになった。
きっと今までも私は出会っていたのだろう。だけど、気付かなかった。ペペロミオイデスを知ってから、ペペロミオイデスが一観葉植物としてではなく『ペペロミオイデス』として私の視界に入るようになったのだ。
知っていることが増えると、日々の中でちょっとした発見が増えてうれしい。
こちらのサイトに載っているペペロミオイデスが一番あのお店で見つけたものと近かった。
この華奢な茎から生えた丸い葉。
机の上にあったらさぞ癒されるだろうな。