「言葉にできるは武器になる。」の書評・感想【ライターにおすすめ】 とりあえず読んでおけ!④
発言や文章といった「外に向かう言葉」を磨いていくためには、自分の考えを広げたり奥行きを持たせるための「内なる言葉」の存在を意識することが絶対不可欠である。
〜本文より
本の著者
「言葉にできるは武器になる。」の著者は、日本屈指のコピーライターの1人、梅田悟司です。
梅田さんは
「世界は誰かの仕事でできている。」
「この国を、支える人を支えたい。」
「バイトするなら、タウンワーク。」
など、有名なキャッチコピーを次々と生み出した人物として知られています。
本の概要
本書で語られるのは、小手先の文章テクニックではありません。そのため、「すぐに使えるライティングテクニック」を知りたい人には不向きです。
しかし、その内容はwebライターとして深く納得させられるものであり、書く、話すなどの「発信するスキル」を磨きたい人に、ぜひ読んでもらいたい良著です。
後半は具体的に使えるコピーライティングの技術論になりますが、本書の醍醐味は第1章・第2章にあります。
著者は冒頭において、「言葉が伝わらないのは、伝わるほどに考えられていないからだ」と言い切ります。
意見を伝えるには、まず自分の内にある意見を育てる必要がある。
意見とは「内なる言葉」であり、この「内なる言葉」が奥行きや幅を持つことで、自然と「外に向かう言葉」に深みが出てくる。
これが本書の主張です。
アウトプットしまくれ!の風潮
近年、「とにかくアウトプットしまくれ」という風潮をそこかしこで見かけます。
言葉が持っていた重みが失われ、安易に、かつ大量に扱われ、運用されている気がしてなりません。
そして私自身、webライターとして「とにかく書くこと」ばかりを考え、上っ面の軽い言葉をもてあそんでいる自分にうんざりする時があります。
ああ、自分の言葉って軽いなあ。
よくそんなことを思う僕の心に、本書の言葉はぐさりと突き刺さりました。
重みがあり、人を動かす力強い文章というものが、果たして世の中にどれだけあるのだろうか? 自分の中に、どれだけあるのだろうか?
人に伝えたい! と思うほど熱のこもった「内なる言葉」を、そもそも自分は持っているのだろうか?
これはすべてのライターを始めとした「言葉を伝える人」が自問すべき問いではないでしょうか。
インプットとアウトプットのバランス
また、本書を読んでいる中で、インプットとアウトプットのバランスについても考えさせられました。
最近では、インプットがアウトプットのための手段になり下がっています。
もちろん、インプットはアウトプットのためにあり、その相互関係は切っても切れないものです。
しかし、本来インプットとアウトプットの関係性は、
インプット → 内なる言葉を育てる → アウトプット
という形だったのではないか。
それがいつしか、
インプット → アウトプット
とインスタントになり、中間にある「内なる言葉を育てる」というプロセスがすっ飛ばされているのではないか。
その結果、吹けば飛んでいってしまうような軽い言葉が大量生産され、SNSやネットニュース、ブログ記事を侵食している。
本書を読んでいて、「本当に伝わる言葉を紡ぐ人間になりたい!」と心から思わされました。
人の言葉の力は、まだまだこんなものではないはず。
「力強く人に伝わり、共感を生み出すコンテンツを作りたい!」と願っている人の心を動かす本です。
というわけで、今回はライティング、というより、「意見を伝える」力を育てたい方におすすめの本の紹介でした。