見える世界が変わるとき
お洒落なビーチ、テラスのあるカフェ通り、西洋風の街並み、美味しいごはんにお酒が楽しめる観光地で、ハイテク企業が揃うベンチャーの垂涎の国、イスラエル。建国からまだ72年で先進国の座を手にしています。
今回はこの国に私が伝えたいことを綴ります。
イスラエルの印象
私もイスラエルに行ったとき、冬でも温かいし、あまりに旅がしやすいので、思わずビーチにも散歩に行ったし、夜の旧市街で雑貨屋を巡ったりもしました。常に迷子になるのでそのたびに周りに尋ねると、イスラエルの人は笑顔で丁寧に道案内をしてくれる。乗るバスが分からないでいるとその場にいた何人かで協議してくれたりもしました。
一方で、同じ町でも「このエリアには近づかないほうが良い。歩かずにバスに乗れ」などとアドバイスをする人もいて、そのエリアをよく通っていた私は複雑な気持ちになりました。そのエリアというのは有色系の移民が多く、確かに公園はそういう雰囲気のおじさんで溢れています。でも、反抗するような気持ちで水を汲みに近づき、そのうちのひとりと笑顔で順番を譲り合って、なんて経験もしました。
そして、日本ではほとんど知られていないけれど、イスラエルは、植民地と占領地を持ち、そこに暮らす人々を日夜抑圧している国。
中東、難しくはない問題
パレスチナ問題というと、小難しいことは読みたくないという人が出てくるかもしれないので、世界最年少のジャーナリストの少女が投稿したFacebookを共有したいと思います。
イスラエル占領下のパレスチナのとある村に、家族と住んでいるジャンナさん。昨日の夜中3時、皆が寝静まっている頃、彼女がふと目を覚ますと窓の外にイスラエル軍の兵士が立っていました。
兵士はジャンナさん一家をたたき起こし、家宅捜索し、最終的に最近出所したばかりのジャンナさんの従兄を連れ去っていきました。ビデオはこのあともうひとつありますが、バルコニーに逃げていた女性たちに兵士が近づいてきたところで突然終わります。
そのあとの投稿で、ジャンナさんは
兵士が録画していたスマホを全部回収しようとしたので、自分の分だけでも隠そうとして録画を切った
と話していて、録画が終わったあとのことについて、
家族全員が一つの部屋に集められて、逃げられない状態でスプレーを撒かれた。あれを撒かれると呼吸が苦しくなるのに、他の場所へはいけないし、換気扇も回させてくれなかった。しかも一回じゃない。今度は私たちの顔面めがけて噴射してきた。病気の祖母は吸入器を使わなければならなかった。
と綴ります。
複雑に聞こえるパレスチナ問題を簡潔に表すなら、こういうことだと私は思います。日本からは確かに遠いところにあるけれど、パレスチナという場所にただ暮らす一般市民が、日々抑圧を受け、自由に生きられない問題です。
兵士という生き物
動画を見ていて感じるのは、兵士の表情の欠如です。
彼らも、家族や友人がいるはず。でも、この表情なのです。仕事だから、同じ人間に対して、夜中の3時に押しかけておいて、銃口を向けて、こんな顔が出来てしまう。
私が基本的に軍隊を作るべきではないと思う理由は、「兵士」という生き物になってしまう人を生み出したくないからです。知識がないので他の国のことは分かりませんが、イスラエルではパレスチナの人を敵として扱うよう軍隊学校で教育されます。そして若い兵士を争いの激しい地域に配属して、実地でもどのようにパレスチナの人を扱うべきか学ばせるのです。
ビデオの中で、ジャンナさんは兵士に対し
「あなたがたはいつもこうして村に押し入って、子どもを恐怖に陥れ、逮捕し、時には命さえ奪っていく。いったいどういう気持ちで自分の家族がいる家に帰るの?」
と問いかけていますが、答えはありません。
イスラエルの例に限らず、兵士や警察として職務上力を与えられると、人は暴力的に振舞えてしまうことがわかっています。人が人を人として扱わなくなったら終わりだと思うのです。
兵士の例をもうひとつ挙げるなら、以前ヨーロッパを旅していた時、ドイツ人の車に乗ることがありました。パレスチナの話になると、彼女はイスラエルでの経験を話してくれました。
歴史を踏まえると、ドイツ人としてイスラエルを訪れるのは難しい。
イスラエルで仕事のワークショップがあったから町で電車(トラム)に乗っていたら、兵士が私たちに気づいて近づいてきた。そうして目的地までずっと銃口をこちらに向け続けていたの。私の同僚はすっかり怯え切ってしまっていた。
彼女らの祖先が仮に当時ドイツに暮らしていたとして、果たしてユダヤ人を迫害していたのか、匿っていたのかはこの兵士たちにはわからないことです。でも、「ドイツ人だから」銃を向けた、そういうことになります。
終わりに
イスラエルという国は、私にとっては世界に転がるたくさんの問題を考えさせられる場所です。縮図と言ってもいいかもしれません。
大学一年生でイスラエルのやっていることを、つまりは発展の陰にあるものを知ってしまってから、私はイスラエルの製品を身に着ける気にもなれないし、煌びやかな宣伝を見ても空ぞらしい気持ちにさせられます。まして「中東で唯一の民主主義国家です」と言われると、返す言葉が見つかりません。
最近も、スタバが軍にお金を出していると聞き(ずっとアメリカ軍にだと思ってたのがイスラエル軍だったらしい)、ソイラテももう飲めないなと思ったところでした。
経済と人の命が天秤にかけられる。ここだけの問題ではもちろんないのだと思います。
でも、パレスチナの人が安心して眠れる日が来たっていいのではないでしょうか。