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CBDを語るうえで切り離せないCoAの話【その3:アメリカにおけるCoA、考察/まとめ】

Twitter上で@GixTanvという名前でADHDあるあるを適当につぶやいたり、CBN/CBGリキッドをメルカリECサイトで販売している株式会社ENFRIARTEのがっちゃんというものです。
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本記事はCBD部まさきさんに研究員として弊社にjoinしていただき、初めて執筆していただいた記事になります。
あれもこれもと詰め込んでいったら、とても長くなってしまったので3分割してます。

流れ

気になるところだけでもかいつまんで読んでいただきたく、以下に流れをまとめました!!
その1では、CoAについてまとめてみたいと考えるに至った背景や、CoAの定義、歴史についてまとめています。
その2では、アメリカのラボ(検査機関)が実際にサンプルとして公表しているCoAを例として実際のCoAの見方、我々の考える消費者が注目すべき点/事業者が注目すべき点についてまとめています。(CoAを見る際の参考になるので、ぜひ読んでいただきたいです)
その3では、アメリカにおけるCoAにかかわる制度これまでに起こった問題についてまとめています。


4.アメリカにおけるCoA

4-(1)アメリカにおけるCoAの現状

日本では輸入の際に必ずCoAが必要となってきますが、海外ではCoAはどのように考えられているのでしょうか?アメリカの現状を参考に、CoAの認識を深めていきます。
アメリカは連邦法と州法があるので、まずは大きな枠組みである連邦法について調べました。

まず、アメリカではCBD製品のCoAが義務付けられていません。2018年農業法[7]によってTHC含有量が0.3%未満であることを証明しなければならず、CBD製品のTHC含有量を証明する必要がありますが、CBD濃度や農薬などの汚染物質を証明する義務はありません。多少の違いはあれど日本の条件と似ているように感じますが、アメリカではCBD製品の安全性を証明する重要さをめぐる議論が進んでおり、それらは州法に反映されています。

たとえば、インディアナ州、テキサス州、フロリダ州、ニューヨーク州などの州では、CBD製品にラベルを付けなければならない規制があります。ラベルには、製品に含まれる成分を調べられるQRコードが義務付けられており、消費者がCoAにアクセスできるようにしなければなりません。
中でも、もっとも興味深かったのはインディアナ州のラベル規制です。インディアナ州は2018 年3月21 日にSenate Bill 52(上院法案 52、以下SB52)[8]が成立し、THCが0.3%未満かつ、規制物質を含まないCBD製品の流通と小売販売が許可されました。このSB52では、インディアナ州に認定された研究所によって検査されたヘンプから抽出されたCBDである場合にのみ、インディアナ州での販売が許可されることになっております。他の州に比べると厳しい規制となっていますが、消費者の安全を第一に考えられた法案といえるでしょう。

4-(2)アメリカでこれまでに起こった問題

CoAに関して、アメリカでこれまでに起こった問題を調べました。前述した通り、州によって異なりますが、アメリカはCoAを義務付けていません。CBD濃度や農薬などの汚染物質を証明する義務がないことなどの規制に関することで、アメリカでは様々な問題が起こっています。

4-(2)-(a) CBDの過大表示
2017年にMarcel O. Bonn-Miller氏らによって行われた調査[9]では、オンライン上で販売しているCBD製品のラベルに表示してある含有量が正確であるかを調べました。84製品の内、正確であったのは26製品と少なく、36製品過少表示22製品過大表示という結果でした。さらに、正確でなかった58製品の内の18製品THCを含んでいました。「CBDは乱用の危険性がないため、過少表示はそれほど懸念点ではありませんが、THCを含有していることは、特に子どもの間で中毒症状や機能障害を引き起こす可能性がある」
と調査の結論で語り、CBD製品のラベルが正確に表示されていないことを問題視しています。FDAはCBD製品の過大表示をした企業に警告を出しており試験結果と併せてFDAのサイト(https://www.fda.gov/news-events/public-health-focus/warning-letters-and-test-results-cannabidiol-related-products)で確認できるため、興味のある方はチェックすることをおすすめします。

4-(2)-(b) 残留物が取り除かれていない
2017年にEthan Russo氏によって行われた調査[10]では、農薬規制がされていないワシントン州で無作為に選んだ嗜好用大麻26製品の内、22製品農薬陽性であり、複数の汚染物質が見つかるという結果が出ました。
さらに、2013年にNicholas Sullivan氏によって行われた調査[11]では、栽培の際に使用された農薬の種類によっては、69%が大麻に残るという結果が出ました。当研究では、農薬を取り除く作業を怠れば、農薬に汚染された大麻が消費者に重大な健康被害を与える可能性があることを示唆しています。
これらは大麻に関する研究ですが、規制がないことにより残留物が取り除かれていない可能性を表しており、規制がないことで消費者の健康が脅かされていることを物語っています。

4-(2)-(c) 規制が厳しいことによる業者の負担
米国最大規模の大麻市場であるカリフォルニア州では、66種類の農薬を含む100種類を超える汚染物質について検査をする必要があります。2020年にPablo Valdes-Donoso氏によって行われた調査[12]では、業者がラボに検査を依頼する費用よりも、検査に通過できなかった製品を廃棄する損失額の方が大きいという結果が明らかになりました。
規制が厳しいことで安全性は高いですが、検査に費用がかかってしまう分、製品の値段もあがってしまう可能性があります。

アメリカのCoAに関する問題を調べると、含有量の過大表示残留物といった規制が緩いことで発生する問題もあれば、規制が厳しいことで事業者の負担が大きいという課題もあることが分かりました。


5.考察と推測

CBD製品の規制に関しては、塩梅が非常に難しいように感じます。規制がなければ消費者の安全が脅かされる可能性が高まります。一見、消費者からすると規制は厳しければ厳しい方が良いように感じますが、事業者の負担を考えるとそうとも限りません。事業者の負担が大きくなることで市場の流通量が減ったり、製品の金額がとても高くなる可能性があります。
業界の発展を考える上で大事なのは「段階を踏んだ規制の強化」「ユーザーと業者がお互いにリテラシーを高め合う」ということだと考えます。

アメリカのいくつかの州でQRコードを表示する義務があるように、まずはCBD原料/製品とCoAを結びつけることから始めるのが良いのではないかと考えました。カリフォルニア州のように汚染物質検査に必須の検査項目を設けることは、将来的には必要になってくることですが、まずはCoAが紐づいていることが重要です。

そして、業者とユーザーがお互いにリテラシーを高め合うことも重要になってきます。業者が信用性の高いCoAを作成して公開すると同時に、ユーザーも信用性の高いCoAのある製品を買うようにする姿勢を持ちます。その結果、業者は安全性を徹底するために検査に力を入れ、ユーザーは安全性の高い製品を購入することができます。お互いにリテラシーを高め合う正のサイクルが生まれることで、粗悪なCBD原料/製品は市場に出回らなくなり、業界がより良く発展していきます。

つまり、はじめから徹底した規制を行うのではなく、段階的に規制を進めていく。そして、規制のかかっていない安全に関わる要素も十分に踏まえ、ユーザーと事業者がお互いにリテラシーを高め合うことが今のCBD業界に必要なことだと考えました。

6.まとめ

本記事ではCoAについて調べました。
要点を下記にまとめます。

CoAとは

  • CoA(Certificate of Analysis) = 分析検査証明書,品質証明書

  • CoAとは、特定の商品が検査を受け、どのような結果であったかを証明する文書。

  • CBD原料/製品を輸入するにはCoAの提出が必須である。

  • CoAは、WHOによって2002年に初めてモデル化された。

CoAの見方

【ユーザーが注目すべきポイント】

  • THCなどの規制物質が含有されていないか?

  • 安全性検査に納得ができるか?

  • 検査しているラボは信頼できるか?

【事業者が注目すべきポイント】

  • ラボ選び

  • 安全性検査の判断基準の設定

  • カンナビノイドの含有量が過大表示になっていないか

  • CoAの有効期限

海外におけるCoA

  • アメリカではCBD製品のCoAが義務付けられていない。

  • 州によってはCoAを義務化している州もあり、州によって様々である。

  • 規制がないことで含有量の過大表示や残留物による健康被害が起こっている。

  • 規制が厳しいと業者側の検査コストが大きくなってしまう。

筆者の感想

CBD業界のCoAについて今後重要なことは
「段階を踏んだ規制の強化」「ユーザーと業者がお互いにリテラシーを高め合う」ことが必要になってくると筆者は考えます。

CBDとCoAは切っても切り離せない関係です。ユーザーと事業者がCoAの重要性を再認識し、リテラシーを高めることは、CBD業界にとって良い影響を与えると考えます。筆者自身も今回の記事執筆で新たな気づきが多くありました。今後も、学んだことや考えたことを文章に起こし、皆さまに記事を通して共有していければ嬉しいです。

次回以降の記事で、ガスクロマトグラフィーやカラムクロマトグラフィーなどの成分分析の検査手法について調査し、記事作成を予定しております。CoAについてはさらに踏み込んだ記事を作成したいなと思っておりますので、今後もよろしくお願いいたします。

7.参考文献

[1]
株式会社矢野経済研究所 (2022, August 25).CBD製品市場に関する調査を実施
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3013

[2]
厚生労働省 CBDオイル等の CBD 製品の輸入を検討されている方へ
https://www.ncd.mhlw.go.jp/dl_data/cbd/guidecbd.pdf

[3]WHO Model certificate of analysis
https://cdn.who.int/media/docs/default-source/medicines/norms-and-standards/guidelines/quality-control/trs1010_annex4_who_model_certificate_analysis.pdf?sfvrsn=efb98179_1&download=true

[4]WHO EXPERT COMMITTEE ON SPECIFICATIONS FOR PHARMACEUTICAL PREPARATIONS, Thirty-sixth Report
https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/42424/WHO_TRS_902.pdf;jsessionid=CBDF924AE668C0ED376E1A3DBB3770FE?sequence=1

[5] SCLab https://www.sclabs.com/company/

[6]農林水産省(March 20, 2019) 食品中のカドミウムに関する基準値
https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/kome/k_cd/04_kijyun/01_int.html

[7]FDA.(JULY 24, 2019). Hemp Production and the 2018 Farm Bill
https://www.fda.gov/news-events/congressional-testimony/hemp-production-and-2018-farm-bill-07252019

[8]Indiana SB52
https://medicalmarijuana.procon.org/wp-content/uploads/sites/37/indiana-sb52.pdf

[9]Marcel O. Bonn-Miller, Mallory J. E. Loflin, Brian F. Thomas, Jahan P. Marcu, Travis Hyke, Ryan Vandrey. (2017) 
Labeling Accuracy of Cannabidiol Extracts Sold Online
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2661569

[10]Ethan Russo.(2017)
PESTICIDE CONTAMINATION OF CANNABIS IN THE LEGAL MARKET
https://nurturingnature.com/wp-content/uploads/2021/05/2017-Russo-PESTICIDE-CONTAMINATION-OF-CANNABIS-IN-THE-LEGAL-MARKET.pdf

[11]Nicholas Sullivan, Sytze Elzinga, and Jeffrey C. Raber(2013)
Determination of Pesticide Residues in Cannabis Smoke
https://www.hindawi.com/journals/jt/2013/378168/

[12] Pablo Valdes-Donoso ,Daniel A. Sumner,Robin Goldstein(April 23, 2020)
Costs of cannabis testing compliance: Assessing mandatory testing in the California cannabis market.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0232041


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