#15 「過度に適用する」 / JINENコトハジメ
・ Podcast「JINENコトハジメ」の文字起こしを中心としたpostです
・【文字起こし】の部分は無料でお読みいただけます
・【解説】【参考文献】の追記後は、その部分は有料公開にする予定です
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【Podcast #15】
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【文字起こし #15】
山田:
はい、皆さんこんにちは。JINENコトハジメのPodcast第15回を始めたいと思います。このPodcastは、「自然経営って何?」っていうことを、自然経営研究会の発起人の1人である私山田の立場から語っていこうというシリーズです。
聞き手役を毎回お呼びしていて、今回は可奈さんをお呼びしてます、よろしくお願いします。
可奈:
よろしくお願いします。
長谷部可奈
創業56年、従業員数約1,000名のシステムインテグレーター(SIer)に勤務。社員の人柄と温和な社風にひかれ新卒で入社、現在15年目。SE、プロジェクトマネージャー職を経て、現在はサービスデザインやデジタルトランスフォーメーション(DX)案件の支援を担当。サービスデザイナー。
学生の時のアルバイトでチームで成し遂げる楽しさを味わって以来、組織のマネジメントに関心を持っており、ティール組織きっかけに自然経営研究会と出会う。幼少のころから動物が好きで自然とのつながりを感じながら育ったため、自然経営研究会の生態系をイメージさせる「自然(じねん)な在り方」に共感している。
社外ではアクティブ・ブック・ダイアローグ(ABD)主催のほか、女子大学生を社会変革の担い手にすることを目指すNPOハナラボでの活動など、自分の問題意識やワクワクに忠実に活動。「好奇心に突き動かされて学ぶ楽しさ」を感じる学びの場づくりを行っている(ワークショップデザイン、ファシリテーター)。
山田:
初回と2回目以来、可奈さんにご登場いただいてます。
前回と前々回、「ありがちな誤解」が自然経営を始めるとか考えるに当たって色々あることを語っています。その3回目として、今日は「過度に適用する」ことについて。
可奈:
はい。
山田:
これまでの2回は「過度に期待する」と「過度に軽視する」と言っています。
「過度に期待する」って、「自然経営が万能だ」「これが一番いいんだ」とか、「必ず誰しもが幸せになるんだ」とか、夢を見すぎて過度に期待しすぎるのも違う。
逆に「過度に軽視する」、例えば「戦略とかもういらない」とか「計画なんて無駄だ」とか。そうじゃなくて、これまでの良いやり方はちゃんと踏襲しようということを語っています。
今回はそれとちょっと違って、「過度に適用する」。
これは何かというと、大前提として、組織の根底の思想とか作り方みたいなものって、善し悪しがあるわけではなく、ある種「個性」みたいな話です。
どれがベストだとか、どれが違うとかではなく、健全に自分たちの組織にとって良いものを選ぼうねっていうことが、組織作りをするにはすごく大事だと思っています。
「個性」だと捉えると、相性みたいなものがある。自然経営でこれまで言ったようなことがやりやすい環境もあれば、できなくはないけど結構大変ですよ、みたいな状況もある。
本当に自分たちの相性を見た上で作ろうということが、ぜひ捉えられるといいなと思っています。
自然経営について、前に話しているのをちょっとだけ振り返ると、大事にしているのは1人1人が自分の「熱量」を持っていることだし、その熱量をなるべく発揮して自ら判断して行動することが、結果的に会社とか組織全体が良くなる方向に行くと捉えて、組織を運営することです。
そういうやり方をしたときに、今日は3つの観点から、ここの相性は見極めようということを考えたいと思っています。
1つ目が「事業」。事業の特性、ビジネスモデル、あと市場の環境とかとの相性ってすごくあるなと思っています。
例えばビジネスモデルでいくと、基本的にシンプルで、分かりやすいビジネスモデルほど相性が良い。一人一人がその場で判断することが、事業全体、会社全体にどういう影響が出るかがわかりやすいほど、自分の判断が本当に全体にとっても良いかなって考えやすい。そこがシンプルだということは、ビジネスモデルの相性として大事。
逆に、同じような高いクオリティを再現することが求められるものとかは、あんまり相性が良くない。例えば日本全国どこにでもあるATMが「いやここでは個別の判断をしよう」とかをみんながやってしまうと、良くないじゃないですか、ビジネスモデルとして。
可奈:
うん、なるほど。
山田:
マーケットの環境としても、特に私が長くいたITベンチャーとかに多いんですけど、”winner takes all”みたいなマーケットってあるじゃないですか。会員を一番取った者の勝ちみたいなモデルって、いかに早く戦うかが大事なので、それは組織の力を集めてみんなで一気にやりに行った方がやっぱり勝ちやすい。
色んなプレイヤーが生き残れる市場だと、自然経営もやりやすいと思うんですけど、「全部取った人の勝ち」の市場ではやらない方がいいだろうなと思います。
この辺のビジネスモデルとか環境の話はすごく大事だなと思ってます。なんか分かりみが深い感じですね(笑)
可奈:
そうですね、うんうんと思いながら聞いてました(笑)
山田:
あと残り二つを簡単に言うと、2つ目が「歴史」とか「文化」との相性はすごくあるなと思っています。
組織を生き物みたいに捉えると、組織には生い立ちがある。今日の時点で存在している組織の文化って、過去に「そのときに一番良い」と決めたことの積み重ねでできている。それが間違ってるわけではなくって、それの延長に組織の未来はあるので、過去と相性がそんなに良くないものはやっぱり大変だと思います。
組織文化ってもちろん変えられるので、そっちに舵を切っていこうってやることは間違ってないですけど、積み重ねが多いとか長いほど、それを変えに行くのはすごく時間がかかる。
そことの相性は見極めが必要だし、「これ結構遠いぞ」って思うんだとしたら、時間がかかるんだと腹決めてやらないといけない。半年か1年やって「全然変わらない」って言うのも違って、それだけ時間をかけてほぐさなきゃいけないよっていうことが大事だなと思います。
最後の3つ目、関係する「人」の見極め。
今の「歴史」や「文化」みたいな話にすごく近いんですけど、今の時点でその組織に関わってるっていうことは、濃淡はあっても何かしら今の文化に惹かれるとか、相性が良いと思って残っている。
文化とか、そこにいる人がどういう特性を持ってるか?ということとの相性とか見極めって、すごく大事だなと思ってます。
基本的に人って外から変えられないじゃないですか。「お前変われ!」とかって話ではなくて、「どうすれば変わっていくか?」を時間をかけて考えないといけない。
特にこの関係する「人」の見極めって言ったときに、それまでの組織の経営者や創業者とか、強く影響を持ってる人がいて、その人の考え方とか大事にしてることはすごく大事だし、相性を見極めなきゃと思ってます。
よくあるのが、自然的な経営考えるときに、良かれと思って「うちの従業員をとにかく俺が守りたいんだ」と本当に強く願っているような愛の深い方の場合。
「1人1人で自分で決めていけばいい」し、その結果は「間違いが起こるかもしれない」けど、「それ自体が組織の基礎体力を強くしていくものなんです」っていうことって、ある瞬間に「痛い思いをするかもしれない」ということを飲み込むことでもある。
自分の子供のように、とにかく本当に大切にしたいっていう愛情の深さを持ってる場合には、それが許容できないこともあるかもしれない。
それはどっちが良いとかでは全くないので、本当にどっちをやりたいっていうことをきちんと考えるのは大事だと思います。
この辺のことは無理やり「人を変える」とか「組織を変える」のではなくて、相性を見極めながら、「どっちに変わっていくかな?」と一緒に伴走する、付き合ってくみたいな関わり方をするのが良いなと思っています。
可奈:
全体的に思っていたのは、私は従業員が1000人ぐらい居る大きい会社に勤めている。元は工場からスタートしてる会社なので、身内が仲良くするっていう文化がある。厳しいことをあんまりお互いに言い合ったりすることはなく、上の人の言うことを聞くみたいな文化がもともと発端にあって、そこに合う人が残ってきてるんだよな、確かに辞めていった人はそういう人じゃなかったな、って思いながら聞いてました。
今この場に適応して残っている人たちに、いきなり違うとこ行こうよって言われても、それは抵抗されるよねっていうのはすごくわかりみが深いですね。
その人たちも「そういうのがいいね」って思って変わってもらわないと、本当に変わっていく力にはならない。当然1年や半年っていう時間ではないし、もっと長い目で見てやっていく必要があるんだとはすごい思いました。
一方で、全くこういう考え方が取り入れられないわけではなく、大きい組織だからこそ、一部では簡単に始めやすい。
山田:
そうですね。
可奈:
例えば「うちのチームの中」とか「うちの組織の中」ということは結構やりやすかったりする。そこで実際に体験してもらって、「ああいうやり方っていいよね」って思う人を増やしていく。
過去にいいと思ったことの積み重ね、って山田さんがさっき言ってましたけど、本当にその通りで、今それがいいっていう人を増やしていくことでしか、この先が作れないって考えると、そういう社内の布教活動みたいなことはめちゃくちゃ大切なんだなと思いました。
山田:
本当そうだなと思うのが、いきなり全部を変えようとするのって、とても大変で、それって基本的にはティール組織の文脈でいえばオレンジなパラダイムじゃないですか。「トップが号令をかけてこっちに変える」って。
それでやろうとすると、きっとこういうやり方って、あんまりうまく浸透しなくて、「だって社長がやるって言ったから」みたいなことになった瞬間に、社長の言うことは聞くよね、みたいなことになる。
やるとすると、やっぱり価値感が共有できるとか、共有できる仲間たちがいるところでまず始めてみて、その非公式なプロジェクトとか横断的なプロジェクトに有志メンバーが集まるとかが最初は始めやすいし、その熱量が高まると、じゃあどっかのチームで、そのマネージャーの責任でやってみようとか。小さな範囲から始めて、徐々に大きくするっていうことが一番いいんだろうなって気がしています。
可奈:
そう、それに合わせてやっぱりトップからのトップダウンも必要で。どんなに「それがいいよね」って人が増えてても、上が変わらないと絶対的に少数派になってしまう。そうすると今度はそこで「いいよね」って思った人たちは、そういうことができる環境に旅立っていく現象が起きる。
トップの人もそういうことがいいよねと発信することが大事だし、トップが評価軸を変える、何かのレビューをしたりするときに、今までと違う問いを投げ、「それはどれぐらいの周りの意見を聞いて作ったものなのか」「お前のとこのメンバーはどう言ってるんだ」みたいなことを質問すると、「そういうの聞いておかなきゃいけないんだ」と一気に行動が変わると思う。
そうやって両方行くと変わってくんだよな、ただでもトップダウンだけでは難しいよなとも思います。
山田:
そうですね。この間、ザッポスの新しく出た本を読んでいて、あそこがやったのってトップダウンで劇的だったんですが、「ティール的な方に一気に変えます」っていうのを宣言して、「乗りたい人はぜひ一緒に行きましょう」「いかない人は結構な退職金を払うから辞めてね」っていうオファーを出して、2割ぐらいは辞めたらしい。いまだに語り草になってるような大変な時期だったらしいんですけど。
これは本当に劇的なトップからのメッセージの発し方だと思うんですけど、やり方によってはトップの関わり方って色々あって、その人だからこそできることも一杯あると思う。
一方で、既存のこれまで積み重ねた文化が全然違うところが変容するってとても大変なので、そこは時間がかかるものだし、関わり方は色々と作らなきゃなと。
何にも種がなくて、トップがいきなり変えることも、それはそれでできないと思うので、さっき可奈さんも言われたみたいに、草の根的にというか、共有できる仲間がきちんと増えてることも、それはそれですごく大事だと思う。どっちもなんだなっていうことを改めてお話聞きながら思ってました。
可奈:
超パワーはいりますけどね(笑)。草の根続けるのは結構大変。気持ち的にもう無理だって思うときもあるので、そういう同士が増えていくといいですよね。外の人と繋がって。
山田:
そうですね。そうやってより大きなところが変わっていくこと自体には、とてもインパクトがあるし、意義があると思うので、そういう事例が増えればいいなっていう思いは個人的にすごくあります。
どうすればいいかなっていう知恵を集めるのか、いろんな人が組織を超えてねぎらい合うなのか、いろんな形があるといいなというのは改めて思いました。
今日は15回目、「ありがちな誤解」の中でで、「過度に適用する」ことについて、無理に自然的にすることが正義ではないし、相性を見ながら、自分たちにとってどうすれば良いかを考えられると良いなということをお話させてもらいました。
今日も可奈さんありがとうございました。
可奈:
はい。ありがとうございました。
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