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#5 目標は「状態」である / JINENコトハジメ

・ Podcast「JINENコトハジメ」の文字起こしを中心としたpostです
・【文字起こし】の部分は無料でお読みいただけます
・【解説】【参考文献】の追記後は、その部分は有料公開にする予定です
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【Podcast #5】

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【文字起こし #5】

山田:
皆さんこんにちはJINENコトハジメのPodcast、第5回を始めたいと思います。

このPodcastは「自然経営ってなに?」ということを、自然経営研究会の発起人の1人である山田の立場から語っていくというシリーズです。毎回聞き手をお呼びしていますが、今日は秋山さんにお願いしています、よろしくお願いいたします。

秋山:
よろしくお願いします。

秋山 瞬 / Shun Akiyama

慶應義塾大学卒業後、新卒で設立2年目の人材系スタートアップ企業に新卒1期生として入社。ベンチャー企業の経営幹部層に特化したヘッドハンティング・人材紹介を通じて、IT業界を中心に5年間で100社超の採用・組織コンサルティングに従事。
新規事業責任者や関西支社長を経験した後、「次世代を担うリーダー創出」を志し、2009年に株式会社ネットプロテクションズに参画。
2011年 人事総務グループのゼネラルマネージャーに就任し、ワーキンググループ制度をつくり、全社員で行ったビジョン策定の企画も実施。
2013年 主事業である「NP後払い」決済のセールスグループマネージャーを経て、2017年に執行役員に就任し、企業アライアンスを行うビジネスディベロップメントグループを立上げ。
2018年には、マネージャー職を廃止した人事評価制度『Natura』をリリース。
ビジネスディベロップメントグループと人事総務グループを兼務し、事業・組織双方で「つぎのアタリマエ」づくりを目指す。
社外でも10年以上継続する朝活の主催や『ティール組織』著者を招いた500名規模のカンファレンスの世話人として従事。

山田:
いつも通り前半はある程度山田から説明を中心にさせていただき、後半は2人でやりとりしながらということができればなと思っています。

今日のテーマ、目標は「状態」であると捉えることだと思っています。
これまでの4回は、前回含め自然経営ってどういう組織?を概念で理解するのが3つあって、1つ目は前回の「組織は『現象』である」ように捉えようということで、2つ目が、「目標は『状態』である」と捉えよう、という位置づけで、今回があります。

この「目標は『状態』である」とはどういうことかを前半で簡単にご説明させていただきます。
この話は前回もちょっと出てきたんですけど、その組織の目標の立て方って、大きく言うと二つに分けると景色が見やすいなと思っています。
一つ目が「達成型」の目標で、二つ目が「状態型」の目標、と僕が勝手に呼んでいます。

それぞれ何かっていうと、「達成型」の目標って、未来のある地点までにゴールを決めて、そこに向かって一丸となってみんなで進む、先にゴールを決めるっていうのが「達成型」の目標です。
「状態型」の目標って何かっていうと、今ある状態を維持しようとか、より良くしようとか、そのときの状態が目指すものを大事にするものだと思っています。これは逆算もできなくはないんだけど、どちらかというと、今ある状態ってどうなんだっけ?を前提に、これを良くしたいとか、これを維持したいとかいうことを、より重きを置いてやろうっていうことが状態型の目標なので、時間のベクトルとして、今から未来に向かうベクトルだなという目標だと思っています。

企業でいうと、基本的にみんな併用してどっちも使っています。事業計画とか中期経営計画って基本的には「達成型」の目標、いつまでに売上とする利益どれぐらい稼ぐっていうのがあって、そこに向けてどうやって事業を作っていくか?を考える。
よくあるバリューとかカルチャー、昔で言うと社是みたいなのも多分近いんですけど、それって「状態」としてこう良くしようねって話。なのでどっちも使いながら運営してるのが基本的にあると思っています。
どっちがいい悪いとかじゃなくって、目的とかやりたいことに対する相性の問題として、どっちを使うとよりいいか?が大事になる。

すごい安直な例えで言うと、人の体、健康っていったときに、「健康な体を目指そう」って、どっちかというと「状態型」の目標な感じがしていて、さらに言うと「健康って何だ?」とか人によって違って、多分解釈がいっぱいあってそれぞれだよね、っていう中で、自分にとって良い状態を目指そう、ていうことの「状態型」の目標。
「達成型」の目標でいくと、例えば「半年後までに体重を10キロ落とすぞ」とか「体脂肪率を3%落とすぞ」みたいなことが、期限を決めてそこに向けて、人によってはストイックに自分を追い込んで段々ダイエットしていく。
そんな感じで、企業もそうだし、個人もそうだし、そって目標を使い分けてるっていうことをちゃんと認識するっていうことが大事だと思っています。その上で、何を大事にしようとか?っていうことが考えられていいなと思っています。

というのが前提で、自然経営を説明するときに、「目標は『状態』である」っていう方がいいと思っています。
これは相性の問題だですけど、「達成型」の目標って、「いつまでに」「何を」を先に決めちゃうので、どうしてもやらねばならないことがすごく作られやすくなっていく構造としてがある。

それは決して悪いことではないっていう前提があるんですけど、自然経営で一人一人が持っている熱量をなるべく発揮してもらおうとか、なるべく各々の判断が活かされる状態で、結果的に良い状態が作れることを目指したいときって、「絶対に売上を1年で1億にするんだ」とか先に決めちゃうと、「そのためにはお客さん足りないからマーケティング頑張らなきゃ」とか、やらなきゃいけないことがいっぱい出てきちゃう。
そっちの「達成型」の目標を置くよりも「状態」が高くまずベースにあって、その上で、必要に応じて「達成型」の目標を入れてくみたいなとこの方がすごく自然経営っぽいことがやりやすいと思っています。

例えば自然経営研究会という団体も2年半か3年近く運営してきていて、基本的にはすごく「状態型」の目標、そんな言い方は全然これまでしてきてないんですけど、いかに「1人1人がやりたいことができるか」とか「無理なくやれることをやるだけで役に立ってる状態を作るか」とか、そういう心地よい運営をしたよねっていうことをずっとやってきていると僕は思って見ています。
一方で、例えば去年かな、秋山さんにも登壇してもらって200人ぐらい来てもらった大きなイベントがありましたが、ああいうのをちゃんとやろうっていうときって、日付も会場もキャパも決まってるんだから、みんな無理なくやろうねって言ってるんだとやっぱり難しくて、「4週間前には告知始めなきゃいけない」「集客状況モニタリングして会場を変えなきゃいけない」とか、色んなことを考えながら、ある日までに何かを達成しようっていうことが、プロジェクト的にやりたい中に入ってるっていうのは全然ありだと思います。
ただよりベースにどっちがあるかでいくと「状態型」の目標がより大きな、大事な目標として扱われてる中で、「達成型」のものを一部、意思を持ってる人たちが行くっていう組み合わせでやってくのが、すごく自然経営っぽいかなと思っている。その使い分けができていくのが大事だなと捉えています。

秋山:
なるほど。ちょっと聞いてみたいなと思ったんですけどいいですか?
使い分けをしているっていうのはすごい納得感があって、「どっちかじゃないよね」っていうところな気がしますって言ったときに、とはいえどっちかが「目的」でどっちかが「手段」みたいになっているイメージで使い分けって言っているのか、それとも内包してるっていう形で、その時々で使い分けていきましょうっていう形なのかってこれどっちなんだろうなっていうのはちょっと思いました。

山田:
いやーさすが、良いご質問ですね(笑)
感覚論でいうと後者に近いなと思っていて、手段というよりは内包関係っていう方が近いかなという気はしています。一方で自然経営ってどんなだろうっていう特徴を言葉で説明しようとしたときに、「状態」の方がより重きを置かれるっていう捉え方ができるって大事だなと思う。

特に自然経営研究会という団体の活動がここの整理の元の体験になってるんですけど、社団法人だよねって思うと、そこに対して、「この団体は何を達成するの?」っていう問いを持ってくる人ってやっぱり多いなって思っています。
それはそれですごく健全だし、いいなって思うんですけど、そこの「達成」することがあるっていう構造から自然経営研究会という社団法人を見ちゃうと、「この活動って何のためにやってるんですか?」とか「何を目指してるんですか?」っていう付属の問いがいっぱい出てくるんですよね。

そっちの「達成したいこと」は必要なときには扱うんだけど、その前に、あなた自身も含めての関わる人がやりたいことができるとか、自然経営が体感できる場にしたいんです、っていう「状態」の方が大事なんですということがかみ合ってる中で、「じゃあ何を達成したいかな?」っていう議論になるならすごく目線が合うんだと思います。
こういう構造だったときに、「目的」と「手段」って言うとちょっと違うかなって思ったので、内包っていう言葉が感覚的には近いかなって思いました。

秋山:
なるほど。聞いてて思ったのは、まさに自然経営とはこういう定義のもので、こういうものを達成するものだ、になっちゃうとまさに「達成型」になるしっていう話なんだけど、そうではなくて、多分前回の「組織は『現象』である」っていう話の中にそのあたりも含まれてくるのかなっていうのを聞いて思いました。

山田:
そうですね、まさにPodcastで語りながらやりたいと思ったのもそうで、ここの話ししてるあっちの話に繋がってくる、みたいなことばっかりなんですよね。
たとえば組織を「現象」的に扱いたいって思って見てるときに「達成型」の目標って本当に難しいと思うんですよね。逆も然りで「状態」の目標を置きたいよねって言ってるのに、組織が「達成」の目標を置きたい、いつまでにやりたいって思ってるのに組織は現象として常に動き続けるとかって言ってるのって、組み合わせとして難しいなと思っている。
色んな側面から同じようなことを見てるっていう感じが、結果出てくるので、すごい書くのが難しいなって思ってるところです。

秋山:
あと組織体で言ったときに、ゲゼルシャフトとゲマインシャフトみたいな話もあったりするじゃないですか。この辺りとの違いって何かあるんですかね。要は機能体か共同体かみたいな話だと思うんですよね、あれって。

山田:
近いですね、たぶん相関はすると思います。近似していると思います。「達成型」の目標って組織が存在するものとして、何かをやろうっていうのがより機能体っぽいし、現象として「状態」を追求しようって言ってるのが共同体っぽいなっていうのは、多分すごく近いんだなというふうに思います、と言われて思いました。

さっき言おうとしたことがやっぱりすごい似てるようなところを秋山さんが見てる感じがするのは、今の世の中で、資本主義的というか、組織を運営するってお金がちゃんと絡むことで、それがちゃんと回る状態にすることってやっぱり大事だよねっていうのは、否定することはなくて、今そこにある状態としてそこにうまく合わせなきゃっていうことが、よりこの活動を続けてく上でも大事だよなと思うときって、共同体っぽく「状態」が良ければそれでいいよね、って言っちゃうだけでも駄目だなって感じがあって、こういう自然経営とかが世の中で実践できるのが増えて欲しいなと思ったときって、目標も2パターンあるよねっていう感覚で、みんなが捉えられるってことだけはすごく大事だと思う。
そういう意味でも、2通りあるうちの、どっちがより合いそうだねっていうことを、ベースと選択肢みたいになってることが大事だなって思ってる感じがすごくありますね。

秋山:
たしかに聞いてて思ったのは「OR」じゃないんだろうなっていうのはまさしくあると思うし、それがときと場合によって動的平衡じゃないけれども、グラデーションで揺れ動くんだろうなっていうのもある。ある種、パワーを発揮するときにはもしかしたら「達成型」の目標が必要なことも出てくるんだろうなとは思ったので、その辺りは内包してるというのがすごいしっくりきました。

山田:
ありがとうございます。まさに達成型ってパワー出やすいですよねということとか、だからこそ一人一人が自分の思っていた限界をちょっと超えて頑張れるとか、そういう環境に合わせて自分も頑張ってより高い成果が出るみたいなことって、やっぱりいい世界だなと、一つのあり方としていいなと思う。
そういうこともあるよねっていう、おっしゃる通り「OR」ではなく内包と捉えるっていうのは大事だなということを改めて秋山さんとお話していて思いました。

山田:
ということで、こんなところで、目標は「状態」だよねというところ、「OR」ではなく内包だよねっていうことも含めて、自然経営によって目標ってどう捉えるのかなということを今日は5回目としてお話をさせていただきました。
ということで秋山さん、ありがとうございました。

秋山:
ありがとうございました。

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