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30'sが描くエネルギーテックの未来-エネルギーテック勉強会#4 パネルディスカッション-

2020年3月3日、第4回エネルギーテック勉強会が開催されました。株式会社シェアリングエネルギーと株式会社エナーバンク、株式会社X-Scientiaが共同主催する「エネルギーテック勉強会」は、20兆円という巨大なエネルギー市場を、クリエイティビティとテクノロジーを駆使して、イノベーションの創出にチャレンジすることに関心の持つ人達のコミュニティです。

業界の基礎知識、国内外のユースケース紹介、最新技術など、エネルギーテックの全体像の理解と最前線の情報の共有に重きを置いています。お互いの知見をシェアしあう双方向的なコミュニティを志向しており、エネルギーテックをテーマに、さまざまなコラボレーションの創発も期待しています。

今回の開催テーマは「30'sが描くエネルギーテックの未来」と題して、前半のキーノートスピーチは海外を中心にエネルギーテックの事例と世界観をご紹介し、後半のパネルディスカッションでは国内のエネルギーテックの可能性とチャレンジ、エネルギー業界でのキャリア等について議論します。

モデレーター 井口 和宏さん はい、お待たせしました。本日のメインコンテンツの2つ目、パネルディスカッションです。30’sが描くエネルギーテックの未来、ということで、1時間ほどお話を進めていきたいと思います。

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塩出 晴海 | Nature株式会社 代表取締役CEO
13才の頃にインベーダーゲームを自作、2008年にスウェーデン王立工科大学でComputer Scienceの修士課程を修了、その後3ヶ月間洋上で生活。三井物産に入社し、途上国での電力事業投資・開発等を経験。2016年ハーバード・ビジネス・スクールでMBA課程を修了。ハーバード大在学中にNatureを創業。

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豊田 祐介 | デジタルグリッド株式会社 代表取締役社長
2012年東京大学大学院工学系研究科修了(技術経営戦略学専攻/阿部研究室卒業生)後、ゴールドマンサックス証券に入社。証券部門において為替・クレジット関連の金融商品組成・販売に従事し、戦略投資開発部においては主にメガソーラーの開発・投資業務に従事。2016年よりプライベートエクイティ(PE)ファンドのインテグラルにおいて幅広いセクターにおいてPE投資業務を行い、2018年よりデジタルグリッドに参画。2019年7月2日にデジタルグリッド株式会社代表取締役社長に就任。

モデレーター 井口さん  流れとしましては、まず自己紹介を簡単に、自社紹介と自己紹介をしていただいて、その時に、エネルギーテックに関わった理由みたいなところをですね、原体験みたいなところをお聞きできればなと思います。

その後私から、時間によって2~3問、質問させていただいて、その後質疑応答という形にしたいと思うんですけども、エネルギーテック勉強会のコンセプトの1つとして、双方向性というものを掲げていまして、ぜひ参加していただいている皆様にですね、ディスカッションみたいな形でできればなと思っていますので、どしどしご質問いただければなと思います。

登壇メンバーの自己紹介

はい、では早速、こちらから、塩出さんから順番にご紹介いただければと思います。塩出さんは特にスライドはない、という言う形ですので、ぜひ、フリートークでお願いいたします。

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塩出 晴海さん はい、はじめまして。Natureの塩出です。今ですね、Natureでは、スマートリモコンという、これ(指で四角を作る)ぐらいのちっちゃいサイズの、赤外線リモコンを作っています。スマートリモコンとは何かというと、家の外からエアコンを付けたりとか、Google Home とか Amazon Echo とかと連携して声でエアコンとかテレビとか照明を操作できるようになるデバイスです。、家電に付属の赤外線リモコンの代わりになるので、今使っている家電をそのまま使えるところが特徴です。

最近は、Nature Remo E (https://nature.global/jp/nature-remo-e) というエネルギーマネジメントのデバイスを発売しました。…簡単に言うと、HEMSコントローラです。太陽光とか蓄電池とかスマートメーターと連携できます。これからは、EV Stationとかエコキュートとか色々(接続先を)広げていって、電力の消費が激しいようなデバイスをうまく連携していくようなハブにしていきたいと思ってます。

これも最終的には単純なエネマネデバイスだけじゃなくて、これをテコにしてこれからマイクログリッドを作って、電力でP2Pで売電できるような仕組みを作っていきたいなと思っています。

今の事業を始めたきっかけなんですけど、僕はもともと三井物産で、4~5年ぐらい電力事業の開発や投資をしていたました。いちばんよく覚えているのが、色んなところでよく言っているんですけど、インドネシアのパートナーと一緒に石炭火力発電所の入札案件をやっていた時に、石炭の炭鉱に行った経験です。

インドネシアの石炭ってオープンピットっといって、階層的な堀になっていて、たまたま本当にもう僻地なところで、車で行けないから、ちっちゃい4人と5人しか乗れないようなセスナに乗せられて行った時の光景がすごいショックだったんです。

石炭の山ってこう、大きな穴のように開発された炭鉱のすぐ横に普通に住んでいる人がいたりして。実際そういうところのオペレーションってものすごい大きなスケールの掘削機とか使うんで、結構いろんな人が怪我されたり、亡くなったりっていうのが、日常茶飯事であります。実際、炭鉱で亡くなっている人って相当数います。それで、今まで電気は普通に使っていたけど、これだけの犠牲の上に成り立っているんだっていうことに衝撃を受けました。それで、自分はもっと分散化したクリーンな電気を作るような事業をやりたいうのが、原体験です。

はい、今日はよろしくお願いします。

皆さん よろしくお願いします。(拍手)

モデレーター 井口さん 今こちらにお手持ちの、Nature Remoはこれは今どれぐらい販売されているんですか?

塩出さん どれぐらい、というのは?

モデレーター 井口さん 何個ぐらい?

塩出さん これはまだまだこれからですね。最初のNature Remoはようやく10万台突破しました。

皆さん 拍手

モデレーター 井口さん 10万台はすごいですね!

塩出さん こちら(Nature Remo E)はまだまだこれからです。

モデレーター 井口さん はい、ありがとうございます。では、次はデジタルグリッドの豊田さん、お願いします。スライドをご用意いただいていますので、切り替えますね。

豊田 祐介 さん ご紹介に預かりました、デジタルグリッドの豊田と申します。本日はみなさんよろしくお願いします。私の自己紹介だけさせていただくと、P2Pで電力を識別をしながら、誰もが電力取引できる「デジタルグリッド」という技術を提唱している阿部力也先生に大学3年生の時に出会いまして、彼の下で研究を進めるうちに、これはインターネット以来の革命なんじゃないかっていうことを本気で信じる様になりました。

4年間勉強をしてみたんですけど、やっぱり社会もそうあまり変わらず、で実際どうなっているかっていうところは不透明だったんですけど、深く心に焼き付いていまして、その後私は証券会社に就職するんですけれども、その証券会社でたまたま、エネルギーをやっていたんだろと、じゃあちょっとお前太陽光のビジネスやるから、太陽光(発電所)案件を探してこい、というので、4年ぐらいですね、実際に2012年から始まったFITって呼ばれる補助金で太陽光発電を作るというようなプロジェクトをずっとやっていまして、投資条件を交渉してお終いではなくて、メガソーラーを作るのに現地にスパイク式の長靴を履いて、蜘蛛の巣対策にマスク被って、レインコートを着て、汗かきながら行って、最後は温泉にお客さんと一緒に入って帰ってくるみたいな。そういうことをやって、実際に分散電源っていうのが、どういう現場で設置されているのかっていうのをすごく、4年ぐらい体験をしたという形です。

それで、やっぱりこのデジタルグリッドっていうのが忘れられなくてですね、ちょくちょく大学の研究室に顔を出していたんですけども、ようやく2017年にこのコンセプトがビジネス商用化しようという話があって、創業をしたと、そんな経緯になります。

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最後に我々が提供しているものは何かというと、まずプラットフォームを提供しようと思ってます。今まで電気の世界って、いわゆる本当にプロの人、ものすごく洗練されたプロの人しか電気を、生の電気を取り扱うってことができなかったんですけども、そうじゃなくて電気という商材を、他のインダストリーの人とか、色んな人が使えるともっと電気の世界に広がりが出てくるかなと思っています。小売電気事業者とか等の専門資格がなくても誰でも電気を売買できるプラットフォームというのをつい先日、2月上旬にローンチをさせていただいたというところでございます。本日はよろしくお願いいたします。

皆さん 拍手

モデレーター 井口さん デジタルグリッドさんは、非常に企業さんや株主の会社さんとコラボして進めていくっていうところですよね。

豊田さん そうですね。珍しいかもしれないんですけど、今までに52社さんに出資していただいて、ほとんどは事業会社様なんですけど、皆さんこのプラットフォームをどう活用していただくかっていうので、日々一緒に対話いただいています。

モデレーター 井口さん ありがとうございます。では最後に、エナーバンクの村中さん、自社紹介をお願いします。

村中 健一さん はい、よろしくお願いします。エナーバンクの村中です。もうこのエネルギーテック勉強会で何回も自己紹介させてもらっているので、はじめましての方がいらっしゃれば、というところで簡単にさせていただければと思います。

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今日は本当にお集まりいただき、ありがとうございます。僕、これ結構やりたかったっていうのが、やっぱり「若さ」。このエネルギー業界に必要なのは「若さ」っていうことで、今回30代がテーマっていうところなんですけど、僕がエナーバンクを2018年7月に起業させてもらったんですけど、30歳。僕の人生の中でキリのタイミングで、この業界、すごくレガシーだし、まだまだテクノロジーが入っていないし、課題は山積みのように残っていて、将来、自分が生きている間に何が起こるか誰も予測が完璧に描けている人がいないことに対して、新しい波を自分たちの代で作っていきたい。そこに対して自分たちの主張する、ビジネスとして主張するっていうものが何なのかっていうのを追いかけていきたいと思って、そういう志を持って起業したっていうところがあります。

私の背景なんですけども、大学時代にシステムの最適化工学をやっていた時に、スマートグリッドの色んな本を読んでて、その当時もエネルギー業界、もしくは電力会社に入りたいなーって思っていたんですけども。
スマートグリッド、スマートメーターが来るっていう風には言ってたんですけど、中々その社会実装っていうところが、やらなくても日本ってそもそも結構最先端な、その当時最先端な取り組みをしていたので、既にスマート化されていた、っていう背景感があって。中々その本質的な課題解決のところまでやる必要がないのかなっていう、そういうモヤモヤしていました。でも、それでも電力会社に入ろうかな、っていう風に決めていた矢先にですね、東日本大震災があって、原子力発電がみんなを苦しめている姿を見て、自分がここに行きたいなって思っていたところに対して、そうではないのかもしれないっていう気づきを得まして。で、そこからちょっとITっに興味を持っていったようなところがあります。で、ITをやりながら、最初のファーストキャリアはソフトバンクに入って、通信系でやっていたんですけど、ちょうど自由化の2年前に、塩出さんもやっているHEMSのプラットフォームを開発するっていう案件が社内にありまして、それが技術の人たちと進めていこうっていうプロジェクトに抜擢されまして、その中でエネルギーを4年間ぐらい、がっつりソフトバンクとして色んなビジネス検討だったり、サービス、ルール制度の問題、そういうところを経験しました。このノウハウとか色んな経験値を若いときに手に入れたので、世の中にどんどん発信するチャンスっていうのがあるのかなと思いまして、起業しました。

今はですね、「エネオク 」という小売電気事業者、今600社ぐらい出てきているんでけども、それをB2Bで法人向けのリバースオークションのプラットフォームっていうところを、第一のプロダクトとして提供しております。
昨年の10月にですね、もう一つプロダクトとして、これちょっとデジタルグリッドさんと近い領域のビジネスになるんですけど、「グリーンチケット」という環境価値の取引プラットフォームっていうところで、グリーン電力証書の枠組みを使って、発電する人たちの環境価値部分を、自分たちでは使わないけど、提供したいなっていうそういった発電事業者の方からお預かりをして、今後SDGsとかRE100がというところに使っていきたい、こういった法人のお客様に売却をしながらビジネスをしていく。
こういったプラットフォームを提供しながら、エネルギーテックを盛り上げていきたいと考えていますので、今日色々ディスカッションさせていただくことを楽しみにしています。よろしくお願いします。

皆さん 拍手

エネルギーテック領域の面白さとは


モデレーター 井口さん
 今回のパネルディスカッションメンバーの経歴が超サイヤ人のバーゲンセールといった感じになっていますので、そういった方々が今どうしてエネルギーテックに取り組もうとしているのか、というところをもうちょっと深堀っていきたいなと思います。私からはですね、まずはエネルギーテックの領域、その市場ですとか業界の、ポジティブな面、面白い面をお伺いできればと思います。

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慶應義塾大学SFC卒業後、非営利組織のコンサルティング業務を経て、2010年株式会社アイアンドシー・クルーズに入社。日本最大のプロパンガス比較・切替サービス「enepi」や、新電力会社の立ち上げなど、主にエネルギー領域における新規事業開発に従事。その後、出資先であるシェアリングエネルギー社の設立に携わり、現職。分散電源のプラットフォーマーを志向する同社の事業開発を推進している。

塩出さん あの、僕からしてみるとエネルギーっていうよりはクリーンテックに興味があってそこをやってるっていうことなんです。会社の社名をNatureって言っているぐらい、僕がヨットとかもするんで、自然が好きなんですよね。そういう、世の中がこれから、化石燃料を焚いてた電力の世界から、リニューアブルにシフトしていくっていうマクロなトレンドの中で、めちゃくちゃここから10年が劇的に変わるタイミングだと僕は思っていて。そういう、ビジネスパーソンとしてやっぱ自分の価値観に合って、かつ世の中が大きく変わるするタイミングに直面できる領域ってあんまりないと思うんですね。で、少なくともクリーンエネルギーっていうものはここ10年20年が勝負の世界で、それが起きているので、そこで何か自分で仕掛けたり、チャレンジしたりできるっていうのがやっぱり一番面白いところじゃないかな、と思います。

モデレーター 井口さん 再生可能エネルギー、クリーンエネルギーを普及されていくっていうことですか?

塩出さん はい、そうですね。

モデレーター 井口さん そのプロダクトとして、宅内のエネルギーのマネジメントから始めるっていうのは、どのいったきっかけがあったんですか?

塩出さん 色んな人達が、P2Pの電力プラットフォームを作りたいと思っていると思います。それは、結局そこができると、再生可能エネルギーの方が安い世界ができて、既存の送電線を使う人達が減ります。、それが始まると、デススパイラルが起きます。、その電力のプラットフォームって、電気というものを扱うので最終的にはIoTデバイスがないと、今のものからプラットフォームを作れないんですね。僕らはそこから最初に入って、きちんと身近なところから抑えて、プラットフォームにしようと思っています。、だから、今はハードウェアにフォーカスして基盤を作っている感じですね。

モデレーター 井口さん なるほど、ありがとうございます。では、豊田さんお願いします。

豊田さん 実は、塩出さんと丸かぶりなんですけど、

皆さん 

豊田さん 20歳ぐらいから電力の勉強をしていて、再生可能エネルギーが分散電源化して、再生可能エネルギーが良いものであると教わって育ってきているんですよね。よくよくそういうふうに考えてみると、その限界費用が極めて低くなるっていうところは本当に魅力的ですし、人が何で今まで争ってきたかって食糧とか、色々ありますけど、その大きな1つとしてエネルギーがありますので、ものすごくそこはそれこそ再エネを増やしていくべきだと、今でも強く思っているんですね。で、デジタルグリッドっていう技術は、再エネに価値をのっけられるっていう、「環境価値がありますよ」って価値をのっけて、より普及を促進することを目指して創業されています。、折角なのでエネルギーテックっていうところに合わせてみると、僕も初めて実際に再エネを、生の再エネを誰かに送り届けようっていう時に、必要な諸手続きっていうものを創業してから目の当たりにして。小売電気事業の登録に伴い、毎月ないしは毎週の業務フローがあって、もの凄くアナログな世界になっています。なのである種事後的にではあるんですけど、再エネを増やしたいっていう思いの中で、今もう少しそこにデジタルの要素が入ってこないと、色んなプレーヤーっていうのがやっぱり入ってこれなくて。先程のように洗練された人しか、きちんとそういうのができる、業務フローをこなせる人しか電気の売電ができないので、そこはエネルギーテック、デジタルトランスフォーメーションっていうのはピタリとハマる領域だなと感じています。

モデレーター 井口さん お二人とも今、経営者として組織を牽引されている状況ですが、日本のと言いますか、エネルギーテック、あるいはエネルギー領域のスタートアップに対しての風向きっていうのは、どうお感じになりますか?

豊田さん …私で良いですか?
どうでしょうね、極めて凄く我々もエネルギーテックっていうところで、今ベンチャー立ち上げの時期ですけど、他と領域が違うのは、やっぱりエネルギー業界ってやっぱり巨象がいるんですよね。とても、凄く力を持った人たちが居る中で、やっぱりベンチャーっていかに皆様方と、その人達と相対するというよりは、その人達と一緒に共創する。共創っていうのは共に創ると書いて、共創するというところが凄くテーマで。逆にそこを上手く作り上げているベンチャーの方々とかは成功されているんじゃないかな、というふうに思っています。

モデレーター 井口さん ありがとうございます。では最後に村中さんも同じテーマで、エネルギーテックの魅力だったり、楽しさ、やりがい、というところのお考えを共有いただけますか?

村中さん はい。まず面白さっていう意味では、まずビジネスとして見た時に、マーケットが凄い大きいかつ深いっていうところで、電気を使っていない人ってほぼほぼいない中で、今、法人さん一般家庭も含めてみんなにインフラを担っているところに対して、自由化が行われたことによって参入機会が増えます。そこで、色んなプレーヤーが出てきたんですけれども、本当にお客様サイドの課題に対して集中的に考えたときに、今までは自由化によって選べるっていう価値は入り口としては出てきたのだけれども、そこに対して凄い複雑になっているっていう、もう1つマクロな課題感があって。この複雑性を緩和してあげるようなアプローチが全体として、業界としてやりきれているのかっていう点に対しては、凄い逆にどんどんどんどん課題が大きくなっているというふうに思っていて。ここは凄いポテンシャルだなと思います。

それはやっぱり電力は今まで選ばなくても良かった、考えなくても良かったものを、思考しながら選べるっていう時代になった、その後じゃあ、どうやって選べばいいんだろうっていう、いわゆるコンサルティング的な要素を内在化したお客様の課題にフォーカスして、そこに今後、再生可能エネルギーがやっぱり出てくるし、企業であればコストっていう目線ももちろん出てくるし、金融的なアプローチでいうとESG投資。でRE100(リニューアブルエナジー100%)っていうところを、じゃあ会社としてどうやってポートフォリオを立てながら経営していけば良いのかっていうところに、私としては凄い興味を感じるし、そういったところのアプローチに対して、サービスを提供していきたいってところは、エナーバンクが考えている大きな方向性になりますね。

で、もう一つがエネルギーテック、何で「テック」なのかというと、やっぱりWEBの技術がどんどん進化して、他のHRだとか、FinTechだっていうところを見た時には、レガシーなところも含めて、テクノロジーでスケール性があって、かつ深堀りしていけば、そこに対してそんなにインフラ投資をかけずにでも、お客様の課題にフォーカスしながら提供していくことができているようになっている。
だけどまだ、エネルギーの世界っていうところは、既存のルールが設計されてそれに合ったポジションが設計されて、そこにプレイヤーが出てくる。ここの、モデルを変換するところまではいけていないのかなっていうところを見ると、色んな他の業界でできていることが、エネルギーではできていないよね、っていうところのポジションがいっぱい残っていると。それを考えると、やっぱりまだベンチャーの数が圧倒的に少なくて、これだけ広い領域に対して色んな課題に対して色んなアプローチで、全てを一社で解決するのって不可能で、ここに対して長期で考えたとしても、解決することがあって、楽しいなっていう。課題があるからこその、楽しさという部分があるのかなと私としては思います。

モデレーター 井口さん なるほど、ありがとうございます。お三方の意見を、ポイントをまとめると、「再エネの普及、その地球規模での課題に対してのチャレンジ」というようなところですとか、あるいはエネルギーという領域自体の「マーケットが非常に大きく、スタートアップにとってチャンスである」というような点ですとか。また、ある地域、既存のジャイアントがいる中でも、そこといかにどう付き合っていくか、共に価値を生んでいくかというようなところ、クリエイティビティの部分がスタートアップに求められるところでもあり、やりがいでもあるというようなことなのかな、と思います。

エネルギーテックスタートアップが乗り越えるべき課題とハードル

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村中 健一|株式会社エナーバンク 代表取締役
慶應義塾大学・大学院でシステム最適化工学を研究。ソフトバンクに入社し技術統括にてバックボーンネットワークに関わる。経済産業省の大規模HEMS実証にてプロジェクト主担当を経験し、2016年電力自由化で通信と電力連携プロダクト開発リーダーとして推進。その後、起業し法人向け電力オークション「エネオク」を開発・運営。リリース2ヶ月で取扱額3億円を突破、エネルギーテックを武器にビジネスの最前線で活躍中。


モデレーター 井口さん では次の質問、今後は逆の立場から、お伺いしたいところなのですけど、日本のエネルギーテックベンチャー、エネルギーテックスタートアップが乗り越えるべき課題とハードル、といったところを、聞いていきたいなと思います。

もう少し具体的に申しますと、エネルギーテックの難しいところ、先程少し出てきましたし、先程のAC Biodeの久保さんが、大手が強すぎるというような表現をされていたところですけど、そういった面ですとか、チャレンジングな部分、といったところを実際に、経営を立ち合う中で感じるようなことっていうのを、お伝えいただければなと思います。

じゃあ今後は、村中さんからお願いします。

村中さん はい、難しいだらけですね 笑
本当に、ベンチャーで0からやるっていうところで、やっぱり会話していかなきゃいけない方達は本当に大手の方か、あとはこの領域を長年、何十年もやられていた方、もしくは電力会社もですけど、小売事業者1社をとったとしても、それなりの資本力のある方が創業したてのこの小さなスタートアップ・ベンチャーをどれだけ信用してもらって、一緒に組んでいくかと。さきほど領域は大きいと言ったんですけど、提供する対象もそれなりのレイヤーになってくるので、我々の存在感をどういうふうに認識していただくかっていうところは、今も創業時から一番最初のパッションしかなくて、こういうことができるかもしれない、こういう経験値としてやってきた、っていうことを言うんだけど、表では信用してそうな風を見せながら、残りの八割は、まあ無理でしょと。というところで考えられている方をいかに説得をして、仲間に入れて、逆に我々の価値を感じ取ってもらって、しっかりビジネスに一個一個していくか。これは結構地道なアプローチですし、我々自体も大変勉強しながら、学びながら日々過ごしているというところが課題というか、難しさだと思います。

モデレーター 井口さん 村中さんの具体的な事例としては、例えばエネオクって小売電気事業者のグループとあとは需要家、特に法人ですよね、大型需要家とのマッチングになると思うんですけど。両方とも交渉だったり提案、受け入れてもらえるというのが大変ということでしょうか。

村中さん そうですね、やっぱり一番大変なのは、我々小売事業者ではないので、何もサービス提供できませんと、オークションもサービスやるから業界の中では半分嫌がられるようにも、これまでの視点としては見られる。でも、我々はお客さんのためにサービスを提供したい。このコンセプトをまず社内としてどうやって切り取ってもらうのか。それに対して、じゃあお客をどこまで集めてこれるのかというふうになった時に、まず最初は3人ぐらいからスタートしているので、3人の会社が大手の、月何百件とか何千件って単位で扱っている人たちに本当に価値提供できるのかっていうところを証明する。僕達の1つのアプローチはモノを先に作っちゃったんですね。なので、アイデアベースだけで話していくと、いいよねーって話になるんだけど、でもそれを会話していくと長いんだけど、実際に動くものを見せて、ここに入ればこういう形になります、もうお客さんはこんな感じで乗っかってますよーっていうのを見せながら、リアリティのあるような形で、最初からエネオクに参加してもらう方々を集めていたっていうところはあるので、そういうのも1つのテック系スタートアップがとれる大手と会話する時の作戦なのかな、と感じます。

モデレーター 井口さん ありがとうございます。豊田さんはいかがですか?

豊田さん そうですね、少し近いところがあるんですけども。規制が結構強めな産業だなっていうのは、やっぱり実際にビジネスをやっていて思いました。他の産業は詳しく存じ上げないのですが、医療系とかも強いのかもしれないですけど、それに負けないぐらい電力の世界も強くって、実際に僕たちも、村中さんもおっしゃられたように、こういうコンセプト面白いんじゃないかって持っていった時に、それって今の電気事業法上で何でできるの?説明して?っていうところから入って、電気事業法を読み込んでできたりできなかったりするんですけど。なんていうんでしょうね、アイデアを形にするまでに時間がかかりますし、逆に言うとそれってチャンスで、中々多くの人がやっていないので、そういった領域まで深く踏み込めば面白いことができるんですけども、とにかく、ざっくばらんなことを言っちゃうと初見殺しのものが多いんですよ。笑
そんなの知らないよ、っていうのが凄く多くて、規制産業とかもそうですし、やはり電力って歴史のある産業だからっていうのもあると思うんですね。過去のプロダクトの経緯があって、こういうルールになっていて、でもそのルールって法律で定められているから今は変えられない。じゃあ今のルールに則って、僕たちがやりたいことってどうやって設計できるのかっていうところがとても難しいですし、クリエイティビティが求められるし、すごく面白い領域かな、と思います。

モデレーター 井口さん デジタルグリッドさんで言いますと、初見殺しの規制を自社のプロダクトやサービスで超える時の、センターピンは何で、それをどうやってそのセンターピンを倒していくのでしょうか?

豊田さん そうですね、我々の場合は基本的に、ほとんど国の実証とかを賜りながら色々事業開発を進めてきたので、環境省さんやエネ庁さんの、政策を作っているチームの人に凄くお世話になりまして、デジタルグリッドプラットフォームってものが、今小売電気事業者じゃない人同士で売買できるようにしようってものなんですけど、それを作り上げるのに2年ぐらいエネ庁さんと電気事業法でどうやってやればいいのっていうのを一緒に考えさせていただいて、で間違いなくルールを作っているのがエネ庁さんで、そこはセンターピンですね。

モデレーター 井口さん なるほど、ルールメーカーとディスカッションをして、解決する道を模索されている。

豊田さん そうですね。

モデレーター 井口さん わかりました。では、最後に塩出さんお願いします。

塩出さん 僕はもう120%、難しさっていうのは日本の政治におけるビジョンの欠乏ってところだと思っていて。結局、先程豊田さんもお話されたと思うんですけども、電力の世界は規制で色々決まっちゃうんですよね。そこをいかに政治なり、政策や制度を創る側の人がビジョンを持って先に進めるかが重要です。例えば、ドイツは国として、もう原発やりません、石炭火力発電所を止めますっていうことを名言しているからいろんな変化が起きて、スタートアップが入りやすい環境ができています。

日本っていう国のカントリーリスクっていうのが、日本のスタートアップとしてエネルギーをやる上でのものすごく大きな課題となっているというところだと思いますね。では我々が何ができるのかっていうところは、2つあります。1つは、エネルギーで政策が変わらなかったとしても、死なない事業を創るというのが1つ。もう1つは、電力って別に日本だけの課題ではないので、やっぱ外に出ていく。海外展開というところを視野に入れるってところだと思いますね。なのでそういうことをやりながら、いかに日本で健全な制度設計の構築に向けて仕掛けていくかというのがこれからの課題なのかなと思いますね。

モデレーター 井口さん なるほど。やはり今は海外展開も入れてらっしゃるんですか?

塩出さん そうですね。我々のもともとやっている Nature Remo っていうのは別に日本だけじゃなくてどこでも売れるので、今は徐々に外に出ていくっていうのを考えています。

モデレーター 井口さん なるほど、エネルギーの市場で、日本の市場が比較的美味しいマーケットだということで色々な海外からの事業者が今来ています。蓄電池もそうですし、EVもそうです。でも日本から海外へ行ける事業者ってまだまだ少ないんじゃないかなって思いますね。それはぜひ、エネルギーテックのスタートアップだけじゃなく、他の企業もどんどんどんどん海外に行けるような動きを加速していきたいなと思います。エネルギーテック勉強会のコミュニティの中でも、こうやって色々なディスカッションを通じてヒントをお互いに得られればなと思います。

そうすると今のお話ですと、チャレンジングな部分というのはやりまず1つは政策、規制の部分っていうのが非常に大きいというところがあり。そこに派生するような形、あるいはもともとの前提の部分として政治のビジョンの部分、これをトップダウンの大号令で、例えばドイツのように再エネの比率を高める。日本も再エネの比率をある程度高めるということは決まっていますけれども、本気で果たして動いていけているのか、といったところは確かに課題ですし、不透明ですし、いつ動くのか、といったスピード感も課題としてあるのかな、と思います。

5年後の日本のエネルギー業界の未来は

エネルギーテック勉強会 4-4


モデレーター 井口さん
  はい、では時間も押してきてはいるんですけども、次の質問。これは今回のテーマでもあるんですけど、エネルギーテックの未来ということで、5年後の日本のエネルギー業界の未来は今と比べてどう変わっていくのか、エネルギーテックはそこに何ができるのか、というところを、ちょっと抽象的なテーマなんですけども、簡単にお答えいただければなと思います。

では次は順番を変えて、豊田さんからお願いします。エネルギーテックの未来、5年後の未来をイメージしていただきたいです。

豊田さん そうですね、我々はプラットフォームを作っている会社ですけども、今エネ庁さん主導で次世代電力プラットフォーム研究会というものがあって、本当にP2Pって世の中が来た時に、どういう制度設計がありうるかって今真剣にエネ庁さんが検討されているところです。その中で例えばリソースアグリゲーターって資格が出てきたり、アグリゲーションコーディネーターって資格が出てきたり、色んなプレイヤーが出てくると思うんですけども、それは翻って言うとやっぱりスタートアップとかエネルギーテックの業界に1つの追い風だと思いますし、アイデアとか技術力があれば、頑張って電気事業法をねじ込みながら頑張ってビジネスをやるというよりむしろ、そういった人達を後押しするような制度設計っていうものを、エネ庁さんが今本当に真剣に枠組みを検討されているので、ご興味のあるスタートアップのメンバーの方とかが、取り組みをやっていて、自分も入りたいって方がおればですね、色々形になっていくのではないかなとというのがざっとの話で。
個人的には、5年後って2025年、一番やりたいのは冒頭申し上げた、再エネを増やしたいと思っていまして。僕の場合はまず日本の再エネを増やしていきたいなって思っていまして、何でかって言うと、今まで自分はどちらかというと補助金で太陽光を増やしていましたので、国民の皆さんの負担をなっているものですので、補助金に頼らない民間主導の太陽光の価格っていうのがもう既に開けてきているので、FITで創った太陽光だけじゃなくて、新しく創る再エネっていう数を増やしていって、きちんと需要家に届けるってことをやっていきたいなと思っています。

モデレーター 井口さん ありがとうございます。この質問が終わった後は参加者の皆さんとの質疑応答になりますので、ぜひ質問をどしどしチャットで、Q&Aでお書きください。
では村中さん次お願いします。

村中さん 5年後10年後ですね…この国の定めるロードマップっていうのは2030、RE100だと2050までにというように、長期で描かれることが多いんですけども、私が見ているのはここ5年の取り組み、アプローチの角度、選択次第で、今後の日本のエネルギー業界は大きく変わるんじゃないかなと思っています。変わるっていうことはイコール、チャンスが出てくるだとか、既存のプレーヤーに選択の中に振れ幅が出てくることになりますので、そこにテックがデフォルトに近くなっていく。凄い抽象的に言うと、その変化があると思います。で、変化があるって何かというと、1つマクロの世界で言うと、原子力発電を本当に日本として維持するのか、あるいはそれ以外の選択肢を持ってくるのか、その選択肢の意思決定の場がだんだん近づいてきているんじゃないかなっていうのが、色々司法の中で戦ったりとか、あとは国民からの反対や、自治体の側での受け入れ問題があったりします。で、一方で再生可能エネルギーのコストとプラス蓄電池の価格の廉価っていうところがグローバル視点で動いているので、この取り込みと、さっきの原子力の再稼働っていうのが、どう連動してくるかをマクロの世界では読んでいきたいなと思っています。
で、一番大事なのは、企業が自分たちの電源ポートフォリオをどういう形で選択するかにおいて、しっかり知識とかノウハウを落とし込んで、正しい意思決定をすることによって未来のエネルギーに対して企業自らがインフラサイド貢献をする。これが、自分達の会社自体がエネルギーに対するロードマップを見直そうっていう世界に近いと思っています。

我々エネオクとかグリーン電力証書とか、いわゆる小売っていう世界だけではなく、お客様サイドが選択できるソリューションというのをトータルで提供することによって、お客様サイドが何を選択するのが一番総合的に正しいのか。それっていうのは、今選択することと、来年選択することと、3年後選択することでは違っていいんです。でも違って良いんだけど、そのタイミングのリアルな情報を可視化する世界っていうところが今マーケットとしては無い。でもスマートメーターが出てきていて、設備の情報も含めてデジタル化されている。こういったところをですね、しっかり踏み込めるパートナー事業者が、正しい選択の方に意思決定をしていけば、この5年後っていうのは、制度以上に法人サイド側から民間の意思として市場とか業界に対して何か変化を見せるような形で革新していくんじゃないかと考えています。
豊田さんとは逆のアプローチになるといったら言い過ぎかもですが、法人さんを盛り上げていくことによって、業界に対してプレッシャーを与えていく。でもちろん業界サイドは業界サイドでルール整備をしっかりしていく。これが合わさっていったときに、何か5年後に新しいイノベーションが起きるような形を、盛り上げていきたいなと思っています。

モデレーター 井口さん ありがとうございます。では最後に塩出さんお願いします。

塩出さん 5年後でいうと、そうですね。個人で電気を売り買いするっていうのが普通の世界になっていると思いますね。僕はあの、電気のメルカリって言っているんですけど、やっぱりもう技術的にはできる環境にあって、今必要なのは規制の問題と、あとマーケットの成熟って言う話があります。規制っていう観点では託送料金の話がいま挙がっていますが、もっと実コストに基づいた託送料金制度っていうのがある程度できてくるタイミングかな、というのが1つ。もう1つが先日国会で提出された配電ライセンスって話があって、配電網ってもともと電力会社が持っていたものを、民間の人達が一部の地域で持ち始めてきていると思います。そういう世界では、もう現行の託送料金度外視で、新しい仕組みを作っていけるので。あとはマーケットでいうと、もう電気自動車がたぶんマジョリティぐらいになっていくと思っていて、普通にみんなが新しい車を買う時に、選択肢として考えるのは電気自動車って感じになってるかと。太陽光の価格も、さらに下がっていて、もう本当、新しい家建てる人はデフォルトで太陽光をつけるみたいな時代が5年後にはもう来てるんじゃないのかなと思います。

モデレーター 井口さん なるほど、ありがとうございます。まず皆さんの意見はどれも本当に僕自身も納得する部分があるのですが、自治体だったりあるいはルールメーカーである政府、エネ庁さんだったりっていうのは規制が強いというお話があったかと思うのですけど、豊田さんも実感されていると思いますが、皆さんかなり民間に対して協力的な姿勢ですよね。やっぱり民間のユースケースであったり、考えというのを拾った上で自分達はどういう政策を作っていけばよいのかっていう、かなり協力的な姿勢でいらっしゃると思います。それが政治に響いているかってところは、また別の問題としては出てくるとは思うんですけれども。自治体も同様で、再生可能エネルギーをどんどん増やしていこうよっていうのは、もちろん市だったり県も、政策でも決められているところが多いと思いますから、そこに施策を打っていくというところで、我々スタートアップは色んなプレーヤーと協業して共に価値を作っていくというクリエイティビティが求められているかなと思います。環境価値ってところでは、少しお話ありましたけど、私も環境価値を高めてそれを拡大させていくということをやっていきたいなと思っています。価値を高める、つまりkWh単価の価格を上げるというところですね。今1.3円ぐらいでへばり付いていると思うんですけども、それを上げていく。さらに規模ですね、kWhを増やしていく、今環境価値として認められる電源のFITを使っているもの以外が極めて少ないというところですし、海外のように洋上風力が多いわけではない。

さらには、村中さんがさきほどおっしゃっていたような、大型需要家の電源ポートフォリオとしての環境価値の部分が、どちらかというともう、なくても良いから電気を安くしてほしいというようなところもあると思うので、そこをいかにマインドチェンジできるかいうところは、スタートアップだけでなく、これは日本全体として取り組んでいかないといけないものなのかなと思っています。

質疑応答〜総合商社に期待する役割は〜

エネルギーテック勉強会 4-5



モデレーター 井口さん
 はいでは、質疑応答に進みたいと思います。ご質問は色々今頂いています。

まず「規制がガチガチ。一番変わってくれたら嬉しいルールってありますか?」っていうご質問に答えていきたいなと思いますが、一番変わってくれたら嬉しい規制っていうのは、どなたかありますか?

塩出さん 託送料金制度ですね。

井口さん 先程おっしゃってましたよね。託送料金制度、いま簡単に解説いただけますか?託送料金制度が今どうなっていて、どう変わっていってほしいか。

塩出さん はい。今はどこからどこに送るっていう距離に関わらず、ほとんど一律の託送料金が支払われているんですが、例えばP2Pみたいな話をやろうという時に、圧倒的に有利なのは、距離の近さですね。隣接しているコミュニティで電気をシェアできるっていうことなんですけれど。でもそれって、実際のコストとしてメリットがあるはずじゃないですか。それだけの短い距離しか送電線を使ってない。そこがもっと実コストに反映された託送料金制度になっていくと、P2Pの世界が花開いてくると思います。

モデレーター 井口さん なるほど、ありがとうございます。そうですね、今は低圧で9円/kWhとか8円/kWhとか、決まっちゃっていますから、それが近い距離だった場合どうなるのかっていうのは、期待したいですね。

次はデジタルグリッドさんに対しての質問だと思います。「P2Pの実現ですが、低圧の配電網を引き直す形になるのでしょうか?」

豊田さん えっとですね、我々の方でホームページとかで記載させていただいておりますのは、環境省さんの実証の中で自治体に配電網を、というのも新しくしているまちづくりの中で、自営線と呼ばれる線を引いて、その中で家庭と家庭をつないで、電気を売買するという実証を2017年から19年の3年間やっていました。なのでP2Pの中で配電網を使うですと、自分達のを提案していただいたというのはあります。ただ、スケーラビリティというところでいうとまだまだ課題があるので、僕たちがつい先日ローンチしたプラットフォームでは、既存配電網を使った低圧も高圧も特別高圧も参加できるような、そんなマーケットを作っているというところです。

モデレーター 井口さん 既存の配電網を使ってP2Pの取引でもできるのですか?

豊田さん そうですね。スマートメータが付いていますので、それを上手く使ってP2Pで取引をするという形です。

モデレーター 井口さん 売り手と買い手を紐付けると。

豊田さん そうですね。はい。

モデレーター 井口さん そこってブロックチェーンの技術が必要になるのですか?

豊田さん エネルギーテックの中で現実的なことを言うと、ブロックチェーン、特に我々はEthereumというものを使ってやっているんですけど、まだ正直課題はあるかなと思っていて、電気の世界ってご存じの通り同時同量といって、今は計画値同時同量で30分の間で需給をあわせなくちゃいけないという演算処理をする中で、ブロックチェーンというのはご存知のとおりブロックを作る技術ですので、そこのブロックの生成に一定時間がかかってしまうと、30分の計画値同時同量担保っていうのが難しくなるのです。例えば、たぶん村中さんもやられている環境価値とか、なにかトレーサビリティを付けてあげる、事後的に承認してあげるとかってものには、極めてブロックチェーンは相性がいいんじゃないかなと思うんですけども、どこからどこに、電気が実際にどこへ行ったかっていうのをリアルタイムで需給調整をするっていうところでは、ブロックチェーンは実は合わなくて、ブロックチェーンブロックチェーンって言いながらも、どこでブロックチェーンを使うかっていうのが今求められているのかなという気がします。

モデレーター 井口さん なるほど、興味深いコメントありがとうございます。
では次のご質問行きます。総合商社の電力部隊に勤めている方からの質問です。「近年はスタートアップ企業と組んで、途上国の電力インフラ開発を進めたいという考えを持っている若手の仲間が多くおり、以前に比べ政府向けよりも消費者向けの課題につながるビジネスの模索を進めています。スタートアップの企業の方から見て、総合商社に期待する役割がもしあればお聞きしたいです。商社に特に期待していない、という意見でも結構です。」

皆さん 

モデレーター 井口さん 背景的にはおそらく、電力のバリューチェーンがある中で、川上の開発部分から需要の消費の部分へどんどんバリューチェーンを延ばしてきている、というようなことがあって、その川下の部分でどういったことが商社としてタッグが組めるんだろうかと。商社の価値はなんだろうかと、いうようなご質問かなというように思いますけれども。どなたか…

塩出さん これは僕が実際商社にいたので、これに関しては僕は凄いイメージがあるんですけど、結局その電力の話をした時に、消費者向けと言えど、国としての意思決定とか仕組みを切り離せないんですよね。例えばさっき言ったような配電ライセンスの話とか、それぐらいのスケール感を持ってやっていかないと、根本的な仕組みをP2Pにシフトしていくことができないんですよ。そういうところの、スタートアップではできないパワープレーというか、その辺ではやっぱり総合商社みたいなプレーヤーの活躍できるところは非常に大きいと思うんで、ぜひ存分に頑張ってください。

モデレーター 井口さん 事例として、日本にはないですけれどもアフリカの無電化地域に対して、BBOXX( https://www.bboxx.co.uk/ )っていう、先ほど久保さんがおっしゃっていた欧州の企業で今ユニコーンに近いバリュエーションを持つ企業に、三菱商事さんが出資をされています。BBOXXが何をしているかというと、無電化地域に対してPVとインバータ、パワコンとあと電化製品をいくつか提供して、それをプリペイドで払ってもらって、お金を払った分に関しては電気や電化製品を使えますよ、というようなサービスを展開して、今それが広まりつつあるというようなところで、そこに対して一緒に投資をしていると。で三菱商事さんは他の電力系の会社さんとパートナーシップを結んでいるので、電源を調達しますよと。っていう事例っていうのは、見覚えがあります。

豊田さん ちょうどその三菱商事さんの話が出たので。実は弊社も三菱商事さんからご出資をいただいていて、一言で申し上げると僕たちスタートアップが持っていないものを全て持っているんです。本当に人的リソースもきちんとお持ちなので、我々に人も送り出していただいて、日々汗をかいていただけるというだけでもスタートアップは嬉しいですし、あとはやっぱり塩出さんの話もありましたけど、電気を動かすって、どの国でも無電化地域でもどこでもやっぱり国とセットだと思っていて、商社さんはそこのネットワークをものすごく強く持っているので、僕たちのアイデアというものを形にしてくださるってところなので、本当にスタートアップからするととても有り難く感じています。

村中さん もしかしたら、グローバルに日本の新しいサービスを輸出していくってところで、相性が良いかもしれないなって今聞いてて思いました。これまでエネルギーって電力会社が、もしくは重工とかが作っていたエネルギーインフラの構築のノウハウだとか、それこそHEMSだとかバッテリーだとか制御の仕組みって日本はかなり優れていると思うんですよね。それをNEDOとかも含めて、国策として海外に輸出していく。でも最近はネタが切れてきていて、日本として何を輸出したら良いのかっていうのが無くなってきているって中で、我々はまず日本マーケットに最初ビジネスの入り口としてはさせてもらうんだけど、やっぱり日本だけのマーケットを見ていると、スタートアップとしての限界値だとか、既存のプレーヤーとのカニバリっていうところが起こってくるんだけど、そこをじゃあマーケットを一気にグローバルへ広げてスタートアップを見た時には、全然まだまだ市場は広いし、国ごとによっても電力の事情が違う。その国ごとの事情を一番最初にトラッキングしているのが商社さんだったり、ネットワークで現地の送配電を組んでいるってところがあるのであれば、逆に我々を世界に羽ばたかせていただくところを引っ張っていただくモデルでグローバル展開を行い、そこでしっかり儲けてそのノウハウを日本でもしっかり還元してインフラ構築に使っていくだとか。こういったところのシナジーはこれまで中々ないアプローチだったなと、期待したいところですね。

モデレーター 井口さん いまちょっとスタートアップの話が出たので。まだ出てない(話題な)ので聞いてみたいのですが、「電力マーケット、エネルギーマーケットにおけるスタートアップならではの強みですとか、価値っていうのはどういうところに見いだせそうしていけそうでしょうか。」どなたかいっしゃれば。

豊田さん 僕がやっていることでもあるんですけど、電気の世界ってルールが長い間決まっているので、それを既存の企業が作り変えようとしても単純に作り変えるだけだと相当な工数がかかるし、それに本当に投資をすべきかっていうとこで判断に、時間が本当にかかるってところがあると思います。で、スタートアップはもう何もない。ゼロから始まるのでこれ面白いって思ったものは作れるっていう。普通の、どの業界でもありえることっていうのは、電力業界だったらよりそれが強いものかなと思います。

モデレーター 井口さん なるほど。そういう意味ではその、色んなしがらみがなく、スピーディにアクションを進められるっていうようなところが強みということですね。

豊田さん そうですね。まあ作った後が大変なんですけどね。

皆さん 

豊田さん 作った後は長いですけど、作れちゃうっていうところはやっぱり強いところだと。

モデレーター 井口さん 村中さん、何かございますか?

村中さん  一つ僕たちが事業として足を踏み入れるときに、僕もソフトバンクの出身だからだいたい分かるんですが、大企業が踏み込むにはマーケットとしてちょっと小さいかもなって思うぐらいの微妙なラインのビジネスだったりプロダクトを攻めたりしますね。そこって、大企業が専門の人達を3人ぐらいアサインして、開発もやってマーケティングとか制度を調べていく中でやっぱり一年とかかかるので、数千万から数億円規模の投資をして、じゃあそれは儲かるのかって試算をしたときに、いやこれ儲からないからやめておこうでNGをくらった方たちってたぶん視聴者の方にもいらっしゃると思うんですけども、その規模のビジネス感だったらスタートアップってやれちゃうんですよね。そこで実証してうまくいけばどんどんやっていけて。そういうトライアルとか検証としてスタートアップをうまく使っていく方法もあるだろうし、我々は逆にみんなが考えているアイデアを実装して、色々提案させていただくってところは、共創での相性が良いのかなと思いますね。

モデレーター 井口さん なるほど。ありがとうございます。

あとですね、デジタルグリッドさん向けのご質問が1個ありまして。「デジタルグリッドさんはCEMS(Community Energy Management) みたいな形でコミュニティー内に独立した電力ネットワークを構築して、その中で電力取引をする実証実験をされていたと記憶しているのですが、そのようなある程度既存の電力網と独立した電力ネットワークが発展していく姿が、インターネットの普及に近い姿に見えるのですが、そのような発展方法についてはどのように見ていますでしょうか。」浦和美園のプロジェクトのことでしょうか。

豊田さん えっとですね、我々実は今回はご紹介できていなかったのですが、我々はデジタルグリッドルータっていいまして、まさにおっしゃるとおりでCEMS、あるコミュニティ単位でこういうのをどんどん普及していくっていうのは思っていて、ただこのコミュニティに例えば再エネとかが入ってきたり色んなことが起こると、周波数とかの制御っていうのが、そのコミュニティ単位で自立するっていうのが求められてくると思っています。それを色んなデマンドレスポンスだったりでやるのは良いんですけど、それができなかったときのいわゆる安全弁みたいなのが必要だと思っていて。具体的には僕たちはデジタルグリッドルータっていう、コミュニティ同士の関門のところにゲートキーパーのように設置をして、そこで交流の周波数を一回直流に、万が一のために戻してあげるっていうような形をとっています。そういうような何かしらのものがないと、自由気ままに配電網ライセンスができて、再エネにシフトしてっていうのは良いんですけど、万一何か制御ができなかった時に、それが隣のコミュニティに色んな影響を与えてしまうってことがないように、ないしは何か大きな突発的なものが起きた時に、そのコミュニティだけはきちんと守られるような、そういったハードウェアの仕組みは必要だと思っていて。
ちょっとまだ発展形ってとこで、まさに研究開発の段階で、さいたま市浦和美園地区ってところで実証してみたんですけども、規模・スケールを持たせなくちゃいけないだとか、コストを下げなきゃいけないとかって課題は沢山あると思っていて、そういうところは大手企業さんとタッグを組んで解決していきたいなと考えています。

今後のエネルギーテックへ意気込み

モデレーター 井口さん わかりました、ありがとうございます。
まだご質問はいただいていますが、時間が迫っておりますので。
最後に、今回ご登壇いただいたパネリストのお三方から、一言ご視聴していただいた皆様に向けてご挨拶いただいて、締めたいなと思います。それでは、塩出さんからお願いします。

塩出さん はい。先程申し上げたとおり、今僕はP2Pの世界に向けて色々仕込んでいるところでして、まさに今絶賛採用中なので、ご興味あれば連絡ください。

<<Nature採用ページ>>
▶ https://nature.global/jp/careers

皆さん 拍手

モデレーター 井口さん 採用中ということで。ぜひ上のリンクよりご応募お願いします。では豊田さんお願いします。

豊田さん 僕たちも宣伝になってしまいますけど、ちょうどプロダクトができて、ある種、今まで電気という商材を扱ってなかった人が、その商材をつかって色々なビジネスができるようになる場を作ったと思っています。なので、今まで電力業界で、まあここはエネルギーテックのミーティングなので皆さんエネルギー関連の方が多いのかもしれませんが、実際に生の電気の売買をしてみたいとか興味があるという方はぜひお声掛けをいただけると嬉しいです。今日はありがとうございました。

皆さん 拍手

モデレーター 井口さん 何か問い合わせ窓口とかってあるんですか?

豊田さん 弊社ホームページにお問い合わせ窓口が。笑

<<デジタルグリッドホームページ>>
▶ https://www.digitalgrid.com/

モデレーター 井口さん ホームページに。ではそれも後ほど。エネルギーテック勉強会見ましたとご記載いただけますと幸いです。では最後に村中さんお願いします。

村中さん 僕はエネルギー領域は、さっきもちょっと話したんですけど、ここ5年ぐらいが本当に勝負の年かなと思っているので。自分たちとか、一部の人達だけが頑張ってもやっぱりイノベーションって起きないんですよね。この変革期で、グローバルで同時に再エネシフトが起こっているっていう事実を今日久保さんの話から我々ディスカッションさせてもらったところで、グローバルと日本、日本から世界へ、こういった視点でしっかりビジネスを動かしていくためには、それぞれのレイヤーの人達が自分たちの事業の中で、良い方向に持っていく、少しのリソースでもイノベーション側に張っていただいたりとか、相談に乗ってもらったり、ちょっとした融通をきかせてもらったり、 こういったところの積み上げの中で、イノベーションが起こるか起こらないかっていう瀬戸際になってくるんじゃないのかなって思っています。もちろん我々も全力でエネルギーテックっていうものを広げていく活動もそうですし、やっぱり未来のエネルギーインフラをより良いものにしていくことを頑張っていくので、声がかかった時には、じゃあ頑張って協力しようか。っていうような優しい声をかえていただけると有り難いと思っています。一緒にエネルギーテックを盛り上げていきましょう。よろしくお願いします。

<エナーバンクホームページ>
▶ https://www.enerbank.co.jp/

モデレーター 井口さん 皆さんありがとうございました。
色々なハードル、制度上の課題っていうのはありますけど、それを自ら作っていくと。制度は非常に今スピーディに変化していますので、それをぜひ、変化の波を作りながら、自分達のビジネスも拡大させていくと、いうところがエネルギーテックの醍醐味なんじゃないかなというふうに、聞いて思いました。

では、お三方の皆さんどうもありがとうございました。


〜〜〜こちらの書き起こしはエネルギーテック勉強会に参加メンバーの有志でご対応頂きました。これだけの濃い内容を文字コンテンツをフリーで開示できるのはコミュニティにご協力いただける方々のサポートのおかげです。この場を借りて感謝申し上げます。〜〜〜

エネルギーテック勉強会 4-1

第4回エネルギーテック勉強会は急遽Webでの開催とさせていただいたにも関わらず大企業、投資家、メディア関係者、ベンチャー経営者、官公庁、学生と多様な計70名の方にお集まり頂きました。

大手電力会社、大手新電力会社、建設会社、ベンチャーキャピタル、太陽光システム販売会社、メディア、大手メーカー、不動産仲介会社、研究所、大手通信会社、エネルギーベンチャー、省庁、リース会社、メガバンク、大学、エンジニアリング会社、石油会社、コンサルティング会社、カード会社、マーケティング会社 等

参加者の皆様にはエネルギーテック勉強会のSlackコミュニティにもご案内しております。エネルギーテック、コミュニティ志向、グローバルの3点をテーマにオンライン上での情報共有やディスカッションを通じて、ビジネスの示唆を得たり、新たなコラボレーションの機会創出に繋がることを期待しています。

※ エネルギーテック勉強会第5回は2ヶ月後の5月に開催できるように調整しています、開催が確定しましたらPeatixにてお知らせさせていただきますのでぜひフォローをお願いします

エネルギーテック勉強会で共有した資料はSpeakerDeckにて無料にて公開しています。個人の勉強の範囲を超えて利用する場合は、エネルギーテック勉強会の事務局までお願いします。

2020年3月17日に電力専門媒体の電気新聞さんに記事にして頂きました。

「若手創業者 発信に力」
・新たな流れをつくり出そうと若手創業者らが活発に議論を始めている
・オンラインコミュニティなども活用している
・初めてオンラインでの開催となったが、およそ70名が参加
・「市場規模が大きく、ここ数年でダイナミックな変化が生まれる可能性に魅力を感じている」
・他業界に比べて規制が細かくアイデアを形にするのに時間がかかる、専門家以外は入れないような『壁』も多いなど、ビジネス展開の難しさもある
・商社や電力消費の多い産業なども含め、多くの力を集めて革新を図っていきたいと強調

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エネルギーテック勉強会への質問、参加希望、メディア取材等がございましたら以下の問い合わせフォームまでご連絡お願いします。

エネルギーテック勉強会#4 前半パートの久保さんの書き起こし「海外事例から見るエネルギーテックの未来」はこちらです。


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