多国籍採用を手がけてきた採用のプロが考える世界共通の人財の見抜き方
日本人だけでなく多国籍採用を数多く手がけてきた経験から、採用における世界共通の人財の見抜き方は 3つのポイントがあります。1つ目「 論理的な自己アピール 」応募者本人が自分自身を論理的に伝えることができているかどうか。2つ目「 なぜ自社か?がはっきりしている 」応募者が自分と自社が合っていることを適切に述べられること。3つ目「裏付け」自己アピールや志望動機に明確や理由、説得材料等の情報があるかどうか。当たり前と思えることにどれだけ真剣に向き合えるかが大切です。
人財を見抜くため最も大事なことは、見抜く行為とは一見関係無いよう見える「自社のことを適切に応募者に伝えること」です。当たり前と思っているようなことでも自社の採用基準を十二分に言語化し、候補者に適切に伝わっていることが前提でなくてはなりません。純粋な「見極め」以外に、自社のことを詳細に知ってもらうプロセスをつくり、応募者に自社をしっかりと理解してもらうことで、はじめて相互理解の地盤が完成し、真に人財を見抜くことができます。
採用の成果を高めていくステップとして2段階で取り組むことをよくクライアントとはお話ししています。
・当たり前と思い込んでいることでも、自社の採用基準を十二分に言語化すべし
・見抜き方は3つの観点から(SELF、NEEDS、 REASONS)
人財の見抜き方を1つの上の視座から考える
採用は、企業の利益を生み出す源泉である人財を確保する極めて重要な活動です。それゆえに、どうやって自社で高いパフォーマンスをあげてくれる人財を見極めるか、見抜くかというテーマは極めて普遍的かつ深淵で、多様なプレイヤーがたくさんのメソッドを提示していますが、依然魔法のような解決策はなく、自社の置かれた環境を踏まえて日夜取り組まれている人事担当者の方々ばかりだと思います。
私が独立する前のサラリーマン時代の仕事では、採用の「数」を追うだけでなく「質」をどう高めるかという観点から、コンピテンシーモデリングや評価のサービスにも携わってきましたし、現在の弊社ではそもそも選考プロセスをどうテクノロジーを活用して精度や生産性をあげたり、効率化できるかという点にも取り組んでいます。そう言う意味では、切り口は無数にあり、テクニカルにどう見抜くかという方法論やサービスも星の数ほどありますので、こちらでは、特にクロスボーダーでの主に外国籍人財の採用支援に長年取り組んできた経験も合わせて、1つ上の視座で「見抜く」というコンセプトに対して考えを述べたいと思います。
そもそも自社の採用を十二分に言語化すべし
採用のコア要件で求める要素は、スキルでもポテンシャルでも良いのですが、多くの企業において、その情報が応募者に興味を持たせ、動機を形成し、選択をさせるためには十分でなかったり、断片的であることが実はよくあります。
どんな人が良いのか。それはなぜなのか、何を期待しているのか。経営・事業・組織・人の観点からちゃんと棚卸しし、言語化し、わかりやすく伝えることをせずに、採用しようとすることが失敗、すなわち、浅い動機やジョイン後のミスマッチ等につながりやすくなるため、自社においては当たり前のことでも、通常よりも過剰なほど丁寧さとわかりやすさをもって情報を開示し、実際もコミュニケーションも含めて伝える努力をしている企業がその後の「見抜く」プロセスでも上手くいきます。
別の言い方では、しっかりとした情報開示やコミュニケーションがないのに、応募者に対してはそれらを類推・想像した上でアピールをさせ、それを見抜こうとすることに問題があります。
実はこの事象は、エナジャイズがよく手がけている日系企業による初めての海外(外国籍)人財採用でよく起きることです。長く働いて欲しい、ローテーションを含めたマネジメントシステムにも関わらず、入口の募集に纏わる条件や制度だけ伝えて終えてしまい、近未来のキャリアや成長の方向性を描かずに迎え入れても、勝手に長く働いてくれる人財はそう多くはありませんので、結果として辞めてしまうことも多々発生するわけです。
見抜き方は3つの観点から(SELF, NEEDS, REASONS)
自社のあらゆる情報を適切に応募者に伝えられて初めて、その理解に対して応募者がどう反応するのかを見抜く段階に入ります。見抜き方は以下の3点。
(1) SELF: 論理的な自己アピール
1つ目の観点はまず、応募者本人が自分自身を論理的に伝えることができているかです。その内容は募集条件やポジションの要件等によりスキルや性格・意欲でもよいのですが、自分自身をよく理解した上でアピールできているかがポイントです。
ただ、それだけでは「見抜く」には足りません。特に個人主義が強いエリアでの海外採用で起きることですが、自分がどれだけすごいかの表現だけで独りよがりに終始する応募者は大変多いですが、そこで重要になるのが第1段階で触れた採用側の狙いです。
(2) NEEDS: なぜ自社なのか
自社のあらゆる情報を適切に応募者に伝えられていて初めて、それに対してなぜ自分と合っていると考え応募したのかを述べてもらうと環境が整います。(1)のSELFを踏まえて、それがなぜ自社との掛け合わせの中で良い機会として捉えているのか「Win-Winになるか」の視点と、そのデリバリーが適切にあるかどうかを是非みてください。
ちょっとした落とし穴があるとすれば、自社が大した情報開示をしていないのに、応募者の評価として「理解していない」「キャリアビジョンがない」としてしまうことがよくあるので、改めて、応募者に自社を適切に理解してもらうかが重要です。
(3) REASONS: 裏付け
3つ目はシンプルに、(1)SELF (2) NEEDSが成立する裏付けや明確な理由、説得材料等の情報があるかどうかを観るものです。
いかがでしょうか?
背景説明として、エナジャイズがよく取り組む海外採用の例を引用してはいますが、実は国内採用(日本人同士)においても、長年の脈々と継続する採用活動の中で議論さえなされていなかったり、ローテーションにより担当者が変遷する中で見過ごされていたりすることは多々ありますので、少しでもヒントになれば幸いです。
執筆:尾崎 太朗
エナジャイズ代表取締役。毎日コミュニケーションズ(現マイナビ)で、国内新卒採用支援事業に従事。大規模プロジェクトのソリューションセールスに長年取り組んだ後、役員直下の事業推進組織創設マネジャーとして営業教育、マーケティング、新規事業開発に従事。グローバル時代に求められるHR事業を探求し、エナジャイズを創業。世界中どこにおいても、高い壁に見えるチャレンジでも、クライアントとそれを乗り越える活動を共にし、形にする。
Facebook: https://www.facebook.com/taro.ozaki
編集:石塚 健朗
エナジャイズPR担当。学生時代よりVC等でスタートアップや大手企業の新規事業創出支援。面白法人カヤックを経てマーケティングブティック「KIUAS」創業。サウナと北欧が心の故郷。
Facebook: https://www.facebook.com/takero.ishizuka