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亜欧堂田善-江戸の洋風画家・創造の軌跡(千葉市美術館)
明日2月26日(もう今日だ)が会期末となる、亜欧堂田善展に駆け込みで行ってきた(千葉市美術館)。福島県須賀川市出身の江戸時代の洋風画家。昨年福島県立美術館で開催された展覧会が巡回で来た展覧会。今回初めて名を知った画家だったが、とても面白かった。
チラシなどで見た作品がとても洋風だったので、てっきり江戸末期~明治頃の画家だと思っていたら、1748年生まれ、1822年没。全然幕末とかと絡まない、江戸中期の画家である。なのに、ヨーロッパの絵画や版画の模写をしたり、遠近法の技法もこなれている、そして、画材が絹本油彩である。江戸中期に油絵の具を使っている日本人がいたんだ! 先達にあたる司馬江漢の作品なども展示されていて、稲村ヶ崎から江ノ島、富士山を臨む海岸の絵を何通りも見る。面白い。300年以上も前の作品には見えない。
浮世絵みたいな木版画もあるが、この時代に銅板に彫った版画をこんなに製作していた人がいるとは。
没後すぐから、彼の画業を残そうと尽力した愛好家、研究家がいたため、銅版画の銅板が何枚も保管されており、バージョン違いの同モチーフの作品も色々あった。丁寧にキャプション読んでいたら、展覧会見終わるのに2時間以上かかった。かなりヨレヨレ。
モチーフも技法も洋風で、彼に西洋風絵画の習得を命じた白河藩主松平定信(寛政の改革の人)の先見性にも驚かされる。実物を見たこともない外国人や、外国の風景を描き(「ピョートル大帝像」とか「ゼルマニヤ廓中之図」とか、「ヴァイオリン」とか)、今回の展覧会の目玉である「銅版画東都名所図」は浮世絵とかより小さい画面に黒インク単色で、緻密で独自の風景を再現する。「新訂万国全図」(世界地図)とか、「医範提綱内象銅版図」(解剖学の図解)とか、伊能忠敬とかターヘル・アナトミアと同時代にこんなものを描いていた人が、描かせていた人がいたのが、とため息が出る。
作品数が多く(でも展示替えで見られなかった作品も多数。そういう作品は写真パネルで解説してくれていて親切)、殆どすべてが初めて見る作品で、キャプションも丁寧に付いていたので、きっちり見ると2時間以上かかるかも。5階の常設作品を展示している「千葉市美術館コレクション展」にも、関連絵画があったので、余裕を持って見るべし(もう今日で終わっちゃうが)。
会場内にあった、子ども向け鑑賞ツールの、田善の履歴書が、意外と便利(絵のキャプションの製作年見ては、履歴書と照らし合わせられた)。
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キャッチーな作品には、名刺サイズの一言解説が付いていて、これもわかりやすいな、と思った。解説してくれている権八というぼうぼう髪のキャラは、「驪山比翼塚」という作品で人を斬ったばかりの姿を描かれているキャラだった…。
会場は原則撮影禁止で何枚かだけ撮影OKの作品があった。
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どの作品も興味深かったが、全体としてやや地味かな。重要文化財、重要美術品、福島県指定文化財など多数。
図録はわたしが会場にいる間に売り切れたらしい。惜しい! あと一日! 欲しい人は福島県立美術館に連絡してネット通販、らしい。
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