美しきシモネッタ 丸紅ギャラリー開館記念展III ボッティチェリ特別展
東京竹橋、丸紅本社改築時に設けられた丸紅ギャラリー、今回が3回目の展覧会で、大切に収蔵しているボッティチェリ「美しきシモネッタ」の蔵出し。勿体つけまくりで、今回の展覧会で展示されている絵画作品はこれ1点のみである。そして絵画にまつわる資料をあわせて展示して500円。名画ではあるが、1点に500円ってことよね…。
シモネッタ・ヴェスプッチ(1453-1476)は、アメリゴ・ヴェスプッチ(アメリカの名前の由来となった探検家)の縁者のマルコ・ヴェスプッチの妻であり、また、ジュリア―ノ・ディ・メディチの愛人だったと言われる、絶世の美女。多くの絵画に描かれ、また、ボッティチェリの代表作「春」や「ヴィーナスの誕生」に描かれた女性たちも、シモネッタをモデルにしていると言われている。
という、簡単なプロフィールと、この絵画の遍歴(一旦歴史に埋もれていたボッティチェリが19世紀になって再発見され、この絵はイタリア→フランス→ドイツ→イギリスをめぐって、丸紅が1969年に購入)、その後、贋作騒動がおこり、X線解析などで、昔の写真に残っていたシモネッタ像には、原画に手を加えた跡があったのを、取り去った状態なのが今のシモネッタ像で、本当にボッティチェリの作品なんだよー、ってなことが、関連資料と合わせて展示されている。
わたし自身は知らないことばかりだったので、関連展示も面白く見たけれど、ある意味、絵画鑑賞にとっては雑音みたいな情報をてんこもりにしているようでもあった。大変素晴らしい作品なんだけけれど、だったら、もっと雑音のない、しんとした環境で見せてもよかったかな? 作品を大切に思うあまりに、箔をつけようとしすぎている印象もあった。
この不思議な髪形はどうなっているんだろう、とか、後頭部のバンドみたいなものから頭頂へ真珠の飾りがぐっとあげてあるのはどういう構造? とか、赤いドレスの上に薄い紗が重ねられた素材のドレスなのかな、とか、くだらないことを考えながら、すーっとした大きな鼻、遠くを見つめているようなまなざし、左眼の気配も描かれている横顔の彫りなどに引き込まれる。
弱冠22歳で亡くなってしまったため、伝説のようになってしまったシモネッタの人生ってどんな感じだったのかな、と思う。
混雑回避のため、時刻ごとに区切った整理券を配布していたが、平日は全然不要な印象だった。そんなに広くないギャラリーなので、週末は交通整理しないと厳しいのかな。でも何しろ1点展示なので、昼休みに走って見に行ける展覧会であった。