国宝 東京国立博物館のすべて
東京国立博物館で開催中の「国宝 東京国立博物館のすべて」、本当は12月11日(日)で終了だったのだが、大好評により、1週間会期延長。正期間のチケットを入手しそびれ、諦めていたのだが、延長期間分のチケット開始日時にチケット購入サイトにアクセスできたので、駆け込みで行ってきた。
かなり入場人員は抑えられている印象で、全く混雑している印象がないまま観覧できた。パンデミックで中止になった展覧会も色々あったが、展覧会鑑賞という見地では、人員を絞ったニューノーマルは実に快適で人間的だと思う。今回のように話題になってチケット入手困難になった展覧会は、行きたいのに行けない人が出てしまったという意味では残念だが、チケットさえ入手できれば、ほぼノーストレスで鑑賞できるのは本当にありがたい。
会期延長期間に見られた国宝は、絵画6点(21点中)、書跡8点(14点中)、東洋絵画2点(4点中)、東洋書跡4点(10点中)、法隆寺献納宝物10点(11点中)、考古6点(6点中)、漆工2点(4点中)、刀剣19点(19点中)で、一番入り口の洛中洛外図屏風はちょっと密で見にくかったが、あとは、ちょっと待っていれば前列でしっかり見られた感じで、絵画は見られなくて残念だったものもあるが、全体としてはかなり満足。
それぞれの国宝が、いつどのように国立博物館にやってきたか、というのもキャプションに書いてあって、それもよかった。
尾形光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」なんて、パリの万国博覧会で展示され、そこから帰国した明治14年に国立博物館預かりとなり、それ以来ずっと国立博物館の収蔵品だった、というのだから驚く。
考古で印象的だったのは興福寺鎮壇具、興福寺が考古、というのが不思議だったが、興福寺中金堂須弥壇の下から出土したもので、鎮壇具というのは、地鎮のために埋納される品々らしい。和同開珎とか、水晶玉とか、興福寺から出土して、国宝になっちゃうんだねぇ。
刀剣は、刀剣乱舞とかやっていない身ではそんなに精査に干渉することは出来なかったが、鋳鉄のきりりとした美しさに身が引き締まった(とはいえ、国宝とそれ以外の判別が出来るとはとても思えないのだが)。
国宝の展示のあとに、東京国立博物館の150年、という展示もあり、国宝以外でも色々興味深いものが展示されていた。キリンの剝製とか、生人形という、マネキンみたいな人形とか(髪は人毛!)。関東大震災で、展示中に割れてしまった陶芸作品を修復したものとかも印象的だったし、摩耶夫人が脇の下から仏陀を産んでいる像とかも面白かった。
歴史の教科書や美術の教科書の中を散歩しているような、ふわふわした体験。何しろこの前に行った展覧会が、展示品1点だけの「美しきシモネッタ」展だったので、それと較べるとお腹いっぱい感半端ない。とはいえ、観光客が一日で大英博物館とかメトロポリタン美術館とかを一気に鑑賞するのに較べればはるかに良心的で、1点1点と向き合う時間はそれなりに取れたかな、と感じた。
撮影OKだったのは、一番最後、菱川師宣「見返り美人図」のレプリカと、最近修復されたばかりの金剛力士立像。