Celeste speedrunの話 [技術以外]
はじめに
2024年の早い段階からCeleste speedrunに関する自分の知見をテキストベースで共有したいと考えていたのですが、節目としてのいい感じの記録が中々出なかったり、忙しかったり、やる気が出なかったりで停滞して遂に2025年になってしまいました。あけましておめでとうございます。
三が日ということで、別に暇ではないのだけど、気持ちがフレッシュなこのタイミングであれこれ思いついたままに書き起こしてみます。多分、speedrunを頑張っているような人に役に立つような内容になっているはずです。まあ今回の記事はかなり主観ベースなので人によっては全く意味のない内容ですけど...あと本当に思いついたままに書いているから文章とか整合が変なとことかあるかも...
これは何
Celeste speedrunにおける技術面以外の話題をあれこれ書いた記事となっています。なので指の速い動かし方とか入力の話とかはほぼしません。そういう話について知りたい人はぼくに配信などで直接聞くか、海外のCelestecordとかで聞いてみてください。ぼくのstratに限って言えば記録動画で振り返っているのでそれを見てみてもいいかもしれないです、知らんけど。
さて、技術以外の話ということで前述の通り比較的主観ベース/自分語り的な側面が強くなりやすいです。が、それでも他のランナーのリアルな考え方/指針を知るのは、何も知らないで闇雲にやるよりかははるかに良いはずです。実際、ぼくも他のランナーがどうやってリセゲーを耐えているのかとか、座学で何を意識しているのか、そういうメンタル的な知見が26分台を出す最後のひと押しの一つになったような気がしているので。
座学
ここで言う座学はCelesteの仕様/Celesteの物理を指しています。ex化の猶予はいくつなのかとか、先行入力とは何なのか、ウルトラが上手くいく/いかないのはどうしてなのか、そういうことについて詳しくなるだけでCelesteが上手になります、多分。少なくとも中~上位のランナーはほぼみんなCelesteの仕様について、程度の差はあれどそれなりに精通しているはず。座学に詳しくなることの利点は大雑把に以下2点
1.遅い/速い動きが分かる
2.stratが失敗/成功する理由が分かる
前者がミクロの話(基礎動作など)、後者がマクロの話って感じですかね。この二つは相互に混ざり合って不可分な気もするのですが、一応そう分けた方が分かりやすいかな~って。
1について。フレーム単位での速度がどのくらいなのか、どの動きが速度を上げる/落としてしまうのかをなんとなくでも良いので知っておけば、最適化や周期系stratに対して強くなれます。身近で分かりやすい早くするためにすべきこととして
・先行入力を頑張る
・一方通行床に対して、下から上にすり抜けて着地する時は滞空時間を極力減らす
・壁登りの際はサブジャンプで固定しておく
・ハネ制動を頑張る
などがあります。実際に指を動かすときには人間スペックの差でどうにもならないこともあるのですが、それでも諦める理由の解像度(分解能?)を上げておいて損はないです。諦めたものの難しさを理解していれば強くなった時に簡単に取り戻せるので。
2について。speedrunを嗜んでいる人はおそらく「一見難しそうなstratがどういう訳か多くの人に採用されている」現象と出会ったことがあると思います。そういうstratの8-9割は優秀なセットアップによって実は簡単だったりします。セットアップの中には決められた動きによって固定化するものもありますが、一部は見た目だけでは分かりにくいCelesteの仕様(座学)が裏で走っている、知らないと一生できない系のものもあるので頑張らないといけないです。ぼくが好きな例を出すと
・6B reprieveのダブルブーストは、ケビン起動後のニュートラルジャンプを先行入力しないと運ゲーになる
・6A cassetteのウルトラが失敗するのは大抵高度が不足しているため
とかです。
「座学が大事なのは分かったけどどこで学ぶの」と思った人はまず某ブログを読み漁りましょう。特に何も準備せず読むとピンと来ない内容もあるかもしれませんが、strat学習で困ったときに眺めてみると案外ヒントが書かれていたりします。それでもすべてを解決できるとは限らないのでその時は大人しく諦めるか、めちゃくちゃ頑張ってコツを見つけるか、Celestecordの#speedrun_helpに助けを求めましょう。
stratの習得
チャプター単位の習得の話で言えば、「サブチャプターごとに」「後ろから」学ぶのが合理的で王道です。Goldenでも同じことなのですが、speedrunにおいては部屋ごとに動きを決めて繋げて走る以上、各部屋の入室時の位置と速度は前の部屋の退室に依存します。言い換えると、任意の部屋を学ぶ上で意識しないといけないことは、その退室で次の部屋のstratが成立するか否かです。となると、後ろから学ぶべきです。
「サブチャプターごとに」学ぶのは、それがいい区切りだからです。部屋ごとに極めても大して意味はなく、流れの中での力の入れ方・意識の向け方・入力の緩急を馴染ませなければスムーズに走ることはできません。だからといって、練度の低い状態で頭から最後までやっても馴染むのに時間がかかるだけで苦痛なので長すぎず、短すぎずのセッションで徐々に上手くなるのがリーズナブルです。
strat単位の習得の話についてはいくらでも書けることがあるのですが、その中でも自分が大切にしているのは
1.一見自分のレベルを超えているようなstratも粘ってみる
2.分からなかったら#speedrun_helpで聞くようにする
3.使うstratの猶予fは調べる
4.ダッシュする、ジャンプする場所の目印をなるべくたくさん決める
5.指に慣らすべきだが指運に頼る箇所は減らすべき
6.勝率が低いstratについては諦める勇気も持つ
辺りです。一つ一つ簡単に詳細を述べると
1.難しいstratはそれなりの技量を要求してきますが、それに食らいつこうとあれこれ試すことが結果的にスキル向上に繋がることが多いです。最終的に採用しなかったとしても、そこでの経験値が他に活きることはザラです。
2.気になったstratの再現率が低い場合には十中八九何かを間違えているか見落としているので、できる人に聞きましょう。どうしても聞くのが嫌だったらTASを書いて入力を再現できるようにしてもいいです。どちらも効果的だと思います。時間効率で言えば絶対前者だけど...
3.2とも関連していますが、自分が採用しているstratの猶予fは知識として把握しておくべきです。stratの難易度を推し量る以上に、「自分が猶予何fまで対応できるか」を理解しておくのは後々のstrat選択において大きな指針となります。僕の場合は「3f以上は基本的に採用」「2fは固定の目印があればほぼ採用」「目印のない2fは指と相談」「猶予が変動して1f(フレームパーフェクト)を含む場合は要検討」といった感じです。最後のは2nd blocklessを想定すると分かりやすいかも。
4.3と被りますが、仮に猶予が短いstratでも目印があれば簡単になることが多いです。lake skipとか。
5.最終的にたくさん練習して、たくさん通して指に慣らすのが大事なのですが、指にだけ覚えてもらうのはおすすめしません。キッチリと画面を認識して、どこで何を入力しているのかを意識して慣らしていきましょう。
6.「勝率70%くらいだけど決めさえすればいいから」みたいな考えは諸刃の剣です。もちろん多少のリスクを取らなければ速くなる訳ないのですが、そこで失敗し続けてロスを重ね続けるのは本末転倒なので時にはレベルを落とす判断もできると良いです。実際、自分の記録においても同タイム帯のランナーの9割が採用しているようなstratを諦めたこともあります、それも1つや2つではなく5-6個ほど。それでもfull gameにおいては目標タイムには届いたりするので、あまり気負いすぎる必要はないです。ただ、ILでSoB的にその厳しいstratを成功させざるを得ないような状況であるなら...頑張ってギャンブルに勝ちましょう。
grind/記録狙い/リセゲー
どうでもいい話ですけど、英語圏で記録狙いやリセゲーのことを指すPB attemptやgrindってどういう意味分けがなされているんですかね、同じなのかな。ともかく、ここではstratを習得したあとに通して記録を出そうとするときの考え方について書きます。こればっかりは本当に人に依ると思うので各人に合ったやり方を模索するのがいいです。
ILかfull gameかでそれぞれ分けて説明します。
IL(Individual Level)の場合
full gameを想定していない、純粋にそのチャプターでSoBに近い記録を出すのが目的なのであれば、各サブチャプターの練度を極限まで上げてくださいとしか言えません。1Aなら20部屋分のstratを完璧にこなせるようになるまで学習、練習、通し、学習、練習、通しを繰り返すだけです。
ある程度full gameを見越しているのであれば、上のようにただその一度きり記録を出すだけではなく、再現性や成功率にも意識を向けておくべきです。記録狙いの中で自分のミスの傾向を把握して、full gameではミスらないように調整しないと、せっかくのgrindや記録もただの思い出に終わってしまいます。逆に言えば、記録が出なくてもその調整さえできていればfull game中にPBが出ることもよくあります。
full game(any%)の場合
原則は「後半まで行けないセッションが何日も続くならやらない方がマシ、ILを練習すべき」です。
ここで言う「後半まで行けない」の意味は具体的には「4A exit時点でBPTが目標タイムを上回る」ような状況を想定しています。この辺の足切りラインは人によってまちまちですが、とにかく前半戦を満足なタイムで抜けられない練度で続けるのはあんまり意味はないです。と、書くのは容易いですが現場ではこの辺りの判断はものすごく難しいです。
傍から見れば明らかに練習に戻るべきような走りをしていても、「前半は走っていれば慣れていくだろう」「噛み合えばそれで終わりだからリセゲー耐えよう」「後半得意だし」「ILだと上手いんだけどな~」みたいな真っ当な邪念によってズルズル続けてしまいがちです。たちの悪いことにこれらの邪念は割と正しく、練度が70%くらいだけど記録が出て成功体験として染み付いてしまいやすいです。
ただし、シビアな操作精度が要求されるレベルになると、純粋なCeleste力が求められるようになるため、ゴリ押しが通用しにくくなります。少なくともぼくの場合はそうでしたし、そうなりかけていた最上位ランナーも見てきました。
しかし、それでも、そう分かっていて練習に戻ろうにも進退窮まることが往々にしてよくあります。「練習して意味あるのか」「練習に戻るならstartのレベルを上げた方が良いんじゃないのか」「どんな練習をすればいいのか」、この辺りはぼくも散々苦心したところなので気持ちは分かりますし、それっぽい解決方法も少しは知っています。いくつか挙げると
・2nd half(後半戦)だけ目標タイムを設定して通し練習する
・苦手/律速のチャプターをとにかく毎日長時間プレイして指とペースを慣らす
・思い切ってもう一度学び直してILをやる
・逆にstratのレベルを少し落とす
・City 10xみたいに同じチャプターを周回する
雑ですが、1ヵ月リセゲーするくらいなら3週間は練習や区間練に注いで残り1週間で通しながらさらにチューニングしていく方がメンタル的にもおすすめです。理想は、毎日挑戦していく中で次第に序中盤が仕上がっていき、到達地点が次第に後ろにずれていくような状態です。これはCelesteに限らず、厳しいRTA/speedrunをやる人たちに比較的共通している記録が出る状態だと思います。
とはいえこれだけ準備して練習を積んでも通らないときは通らないのがCeleste speedrunです。そんなときはノーリセットランをしたり、あるいは体調を整えるために寝たりするのも手です。頑張りましょう。
メンタル
Celeste speedrunは間違いなく楽しい営みである反面、あまりにも苦痛パートが長く続くと病んでしまうことも...あるのかな?ぼく以外で露骨にしんどそうな顔しているランナーを最近見ていないから分からない...。
あ、full game/IL中にメンタルセレステして、操作がブレるとかそういう話なら
・何回もメンタルセレステするところに到達して慣れる
・ミスを詳細に分析して根本から動き/stratを変える
・並走会やトーナメントに出る
・タイマーブラインドで走る
辺りが手ごろな解決方法です。あなたが極度に緊張に弱い、みたいな可能性は多分あんまりないです。みんな同じように緊張して同じように失敗してます。というかそういう弱気な考えがかえって毒だと思います。
そういうのじゃない、冒頭で述べたような気分の落ち込みについては、まあ難しいです。誰かに励ましてもらう、自分のプレイを客観視して笑うようにする、今記録が出なくてもいいと割り切る、Celeste辞めるとか人それぞれです。ぼくは学園アイドルマスターで咲季・星南・清夏のお話を読むのがかなり効きました。逆に一番良くないのは自傷的になりすぎることです。多少ならガス抜きになるかもしれませんが、基本的には何の得にもならないです(ブーメラン)。
おわりに
色々書きましたが、結局speedrunに対する向き合い方は人それぞれで、正解っぽいものはあれど万人に当てはまるような話はそんな多くないはずです。それでも、最初の方に書いた通り、他のランナーのリアルな勘所は知っておいて損はないはずです。行き詰まりを感じている状況ではとくに。
本記事について何か聞きたいこととかあったら、DMとか配信とかで聞いてください。(案外適当に書いているところもあるかもしれないので)ではでは。