70億の砂漠
就活が忙しくなってきた。大学3年生の夏が始まろうとしている。
大学に入ってから、夏休みはなぜかバイト漬けだった。特にお金に困っているわけでもないのに。
なぜか考えたら、遊ぶ=誰かと遊ぶって考えてたからだと思った。
1人が好きだ。誰といても上辺だけの会話になってしまう。
だけど毎日1人は寂しい。だからお金稼ぐついでにバイト仲間と話すことで自分の寂しさを紛らわしていた。
もうそんなことはやめる。
この夏はバイトなんかせず、全力で遊ぼうと思う。海。バーベキュー。キャンプ。やったことないことに全部挑戦する。1人でもいい。誰かとでもいい。
また何もしない夏を過ごしたら絶対後悔する。そんな気がしている。
そんな夏を夢見て、日々大学の講義を受けている。
面白い講義もあるが、つまらない講義の方が多い。
ただ、つまらない講義の中で、引っかかっていることがある。
あるローマの叙事詩を読んだ。
主人公はトロイア戦争唯一の生き残りで、ローマ建国を運命付けられていた。そんな中、カルタゴに漂着し、女王と恋に落ちる。しかし運命には逆えず、女王を捨ててローマ建国に向かう。
運命とはなんなのだろうか。
主人公はトロイア戦争で生き残ってしまったので、ローマ建国という運命を背負うことになる。
しかし、トロイア戦争に勝っていたとしたら?
女王には会えない。
トロイア戦争で死んでいたら?
女王には会えない。
どれを選んでも彼らが報われることはない。
人生の選択は枝分かれしていくものではなく、無数の砂から一粒の砂を選び取るようなものだという。
でも結局どの砂を選んでも、過程が違うだけで、最後は同じなんじゃないかと思う。
今日何を食べるか、今年の夏はどんな過ごし方をするのか、細々としたことは運命じゃないし、自分で選択できる。
運命はそうはいかない。
どんな親の元に生まれるのか、どんな環境で育つのか、誰も決められない。
西洋的な運命という言葉より、日本的な因縁、宿縁という言葉の方が人生を表している。そんな気がする。
自分はまだ見ぬ人々とこれから知り合っていく。自分はどんな人と因縁があるのか。
最近人生に面白さがわからなかったけど、そんな考えをしてみると生きることが楽しみに思える。