年齢を気にする亜里沙と、気にしない小百合
ガールズバーで働いている「亜里沙」は年齢を気にしていた。「亜里沙」は今年で19歳になるのだが「小百合」という18歳のニューフェイスが現れたからだ。
一方の「小百合」は、「ああ、亜里沙さんって、私よりひとつババアなんですね。なんだか安心しましたぁ」と毒づいて、亜里沙の心を侵食した。
その後「亜里沙」は小百合とは一切の口を聞くことなくガールズバーに務めた。
だが誕生日が来るたびに「小百合」よりひとつ年齢が上であることを気にし続けた。
やがてガールズバーが厳しい年齢「22歳」になると「亜里沙」はキャバクラで働きはじめた。お客さんにも気に入られ、キャストは自分と同い年か、それより上。ようやく安住の地とよべる場所をみつけた。
……かに思ったのだが、23歳の誕生日になると、22歳の「小百合」が店のニューフェイスとして現れた。
「さ……小百合、あんた……なんなの!?」
「私? 私は、自分よりひとつ年上のあなたといることで、ひとつ若い自分で居られるの……ずっと同じお店で働きましょうね。あ、り、さ、先輩」
「ひどい人間……。そうやって悦に浸っているのね。薄々わかってはいたけど」
「じゃあ、亜里沙先輩もやったらどうですかぁ。ホルモンめちゃくちゃでますからぁ」
確かに小百合の肌はつやつやし、全身から若々しいオーラが溢れているように見える。
「あ……あたしは……」
一方の亜里沙は、自分が「ババア」、自分が「ババア」であると小百合という呪縛に思わされ続けていたせいか、同い年のキャストと比べ、若干老けてみえる。
「ウフフ、本当言うとね。亜里沙先輩より私のほうがひとつ年上なのよ。だけど亜里沙先輩より、こんなにも若々しい! どうするの!? ねえ、どうするのおおーー!?」
圧巻のカミングアウト。寄り目の変顔で煽ってくる小百合をみて、亜里沙のなかで何かが弾けた。
「な……、なんだ。はやく言ってよ」
これまでババアだと思っていた自分の皮が剥がれ落ち、そこに若々しい「亜里沙」が現れた。
キャバクラに居合わせ、諍いをきいていた中国の俳優は、若返った亜里沙をみて。
ペ・タンジュン
(お……おんなは、単純なんですね)
イタリアの激悪オヤジ「ドシタン・ハナシキッコーカ」もそれ、思った。
(お二人ともとてもビューティフル。マヤク、アナルにウッテ、ファックしたいね)
また、たまたま飲みにきていた、触手芸で有名なあの松竹芸能コンビ「クラーケン今井」「モルボル袴田」も諍いをきいて
「どうしたんだろ、あのふたり」
「どしたんかね。は……はなしきこうか?」
とクラーケン今井が、生殖器にあたる部分をじゅるじゅる動かす。
モルボル袴田が、くさい息を吐くように「はなしきいてくるわ!」と立ち上がり、本当にくさい息を吐いた。
「な、何よあんた!?」
「うッ! く、くっさい! 亜里沙先輩、こいつ芸人のモルボル!」
「うっそ! あれみんな演技だと思ってた、こんなに臭いとか」
ホールにはいつまでもくさい息が立ち込めていた。笑い声は、なかった。
この間に、クラーケン今井が女子トイレにカメラを仕掛けに行った。
(じゃんがじゃんが、じゃんがじゃんが)
クラーケン今井はカメラの設置に成功した。(じゃんがじゃんが、じゃんがじゃんが)クラーケン今井は、左右をみて誰もいないことを確認すると、女子トイレを出た。(じゃんがじゃんが、じゃんがじゃんが)
もどると、亜里沙と小百合は何事もなかったかのようにテーブルに座っていた。
(シメシメ……)
クラーケン今井は、生殖器にあたる部分をいつもより多くじゅるじゅるさせた。
やがて、若返った亜里沙が席を立つ。
(じゃんがじゃんが、じゃんがじゃんが)
(じゃんがじゃんが、じゃんがじゃんが、う~~、マンボ!じゃんがじゃんが、じゃんがじゃんが、う〜〜、マンボ!マンボ!)←クラーケン今井の昂ぶる気持ち。
(!!)ここで場内に歌が流れた。
♪絵もない、花もない、カメラある、そんなキャバクラ。
「……クラーケン、あんたバレとりますがな」
クラーケン今井は「もう、お手上げ」とばかりに10本の手をあげた。