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遊園地は、ずっと曇り空だった

 漫画のネタバレをYouTubeで見た時に流れる、あのユッタリとした音楽でメリーゴーラウンドは廻転する。どんよりと曇った顔のスタッフが来園者に無料のお菓子とメロンソーダをくばっているのを僕はベンチに座りながら横目で見ていた。
「ちょっと待ってくれ、無料だから貰ったけどよ……」
「子供にこんなもの飲ませないでくれ」とスタッフに怒る父親。
 そりゃそうだ、あんな駄菓子屋にある10円のメロンソーダなぞ。お菓子だって、なんだありゃ。「ねるねるねるね」の3番の粉じゃないか。

「きゃああぁ!」「うわッ!」
 フチが割れているコーヒーカップに乗っていた客から悲鳴。カップから溢れるように腰を抜かしたまま逃げ出している。
 下から蔦のようにカップに絡まっているのは女性の長い黒髪。

 メリーゴーラウンドの馬の眼がビヨンと飛び出してギョロリ。それがどういうわけか曇り空とマッチしていたことを思い出す。

 走馬灯。自殺をする者がビルから飛び落りて途中で気絶し、地面に叩きつけられる間に見る「曇り空の遊園地」

 1894年。まだディズニーランドもない時の話だ。(追記 遊園地もなかったそうです。情報ありがとうございました)

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