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  • 上京した女の話

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    物の見方について基本的な概念を取りまとめています。

最近の記事

上京した女の話 13

周りを見ると、むかし就活に失敗してくすぶっている知人たち若干名が、実家で家事をしながら資格試験の勉強をしている。しかし、年も年だし、資格を取っても大概は薄給の世界だ。試験勉強自体が一種の安息の時間となっている、としか言いようがない感覚はある。 そういえばある知人は、人間関係を若干整理したらしい。特に、漫然と時間を過ごすたぐいの者とは疎遠にすることにしたそうだ。持ち時間は有限だから仕方ない。

    • 上京した女の話 12

      フェイスブックを見ていると、「ミドルの転職」という広告がよく出てくる。あいにく管理職経験のない派遣の私には縁のない話だ。おそらく当の「ミドル」たちは残存者バイアスに毒されているのではないかと思うことはよくある。音喜多駿や石丸伸二は自己愛の塊ではないか。知人に時折その話をするが、「ひろゆき的文化の浸透によって民主制が不健全な方向に変容している」という話になる。 かくいう知人も詭弁が大好きで、香西秀信という物故した修辞学者の本を薦めてくる。とはいえ瞬時に相手の謬論をねじ伏せるの

      • 上京した女の話 11

        歯が染みる。痛い。 もとはと言えば、十代から二十代にかけて持病が一向に改善せず心身のケアができなかった後遺症なのだが、本当に歯の健康は失いかけて初めて有り難みがわかる。いま通っている歯科医院の先生が学理も実技も押さえているから、これ以上の無駄なロスはないと思えるのがせめてもの救いだ。それにしても以前の歯科医は酷かった。ヤブ医者の模範のような施術や問答は本当に何だったのかと思う。 そもそも専門職の甲乙はどこで分岐するのだろう。やはり知的好奇心と定期的な知識更新だろうか。今の

        • 上京した女の話 10

          私は、夫には恵まれたが、男運は悪い。うだつの上がらない五十男から標的にされているふしがある。仕事も人間関係も不得手、しかも尊大で粘着質という五十男から狙われている気がする。気がする、ではない。げんにちょっとした被害に遭っているのだ。発言小町に投稿しようかとも思うが、また格好のお説教の標的になるのも嫌だ。どうしたものか。 それはともかく、カップヌードルの知人から電話があった。いわく、「今日の新聞に、ローファームも裁判官も大変」という記事があったが親戚女子は息災か、というものだ

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        記事

          今年の三冊

          充実した内容。コラム多数。事実連関に注目。 戦略論教授による総ざらい。 生産性が上がっても賃金に結びつくとは限らない。どうすればよいのか探る。

          今年の三冊

          上京した女の話 9

          師走だ。会社の忘年会出欠表が回ってきた。いくばくか参加費を取られる。薄給の身にはこたえるが、上司が勧誘してくるのでやむなく出ることにした。厳密に言えば、当日欠席してもいいのだが、迷う。 そういえば、ローファームに勤める親戚女子はどうしているのだろう。業界の文化がわからないので忘年会の有無もわからない。彼女には彼女なりのストレスがあるのだろうと思うが、聞いてもやぶ蛇だろうからLINEでスタンプを送っておいた。 SNSでは学者たちが医療費負担の話をしていた。難しいことはわから

          上京した女の話 9

          上京した女の話 8

          カップヌードルの知人の話が続く。今日はゲイの先輩の話だ。今日もまた「田舎には出会いがない」という話になったので、知人はマッチングアプリを勧めたのだという。だが、先方はいつものように理屈をつけてきて動こうとしない。先方の話では、「この歳になったら財力しか効かないが、肝心の財力がない」とのことだったので、友人としての関係性を相手と続けるのはどうか、と提案したところ、「自分のことを丸ごと愛してくれる人がいい」と返事が返ってきた。知人は半ば呆れ気味に、そういう幻想を抱いていいのは十代

          上京した女の話 8

          上京した女の話 7

          文系の院生とは付き合っては駄目だ、なぜなら資本主義の廃絶を唱えながら小銭をせびってくるから、というブラックジョークがあるが、それはさておきカップヌードルの知人によれば、安定した勤め口にありつくのは厄介らしい。まず研究費申請に成功しなければならず、そして非常勤講師生活の後に任期制の職を目指し、当たったら数年以内に追加の業績を出してテニュアを狙わないといけない。研究教育よりもポストとグラントの申請書類に時間と労力が割かれる。まさしく「ブルシット・ジョブ」だ。おかげで業界で良い話を

          上京した女の話 7

          上京した女の話 6

          先ほど話題に上っていた法律系の資格試験が終わったらしい。正式な合否通知は年明けらしいが、自己採点の結果はSNSで流れてくる、と知人は言う。 知人が言うには、地元のロースクールを出た先輩が今年も受験に失敗したようだとのことで、これではもういつまで経っても受からないのではないか、と語っていた。なにぶん私にはわからない世界なので、「とりあえず方士を呼んでお祓いしてみては」と言っておいた。たぶん荒俣宏もそう言うだろう。そうに違いない。 しかしロースクールが導入されてよいことはあっ

          上京した女の話 6

          上京した女の話 5

          カップヌードルをすする知人は、「法律系の資格試験が迫っているので、知り合い数人は浮き足立っている」と言う。ローファームに勤める親戚女子に詳しく話を聞いてみようかと思ったが、法律系の資格といっても複数あるらしく、彼女とは別コースのようなのでやめておいた。 知人に言わせると、今はどの資格試験も年々難しくなっているのに、合格したあとの身分保障はおぼつかないのだという。そういえば「資格を取ったあとも学び続ける」といえば聞こえはいいが、先立つものが必要だ。とりわけ私などは世代が世代な

          上京した女の話 5

          上京した女の話 4

          上京してもう何年になるのだろう。数字としては正確に覚えてはいるのだが、実感がわかない。正確に言えば、わかないようにしている。悪い記憶が頭の中で反復されるのを避けるためだ。いくつかの記憶はどうしても消せないが、打撃からは立ち直った。夫のおかげだ。夫は要所要所で的確な判断をして私の第一の支援者になってくれた。知人からは「人生最大の買い物に成功しましたね」と古風な誉め言葉をもらっている。 その知人は、そう、カップヌードルばかり食べる男なのだが、最近は目の調子が悪いのだという。正確

          上京した女の話 4

          上京した女の話 3

          二度目の冬が来た。東京は文化施設がたくさんある。そんなことは上京する前から知っていたが、実際に住んでみると本当にたくさんある。いや、正確に言えば、ある「らしい」。SNSで各種文化施設の気配を感じ取るだけで一日が終わることが多いのがやや残念だ。 そのSNSにはマニキュアが素敵な女子がいる。文章も素敵だから人気者だろうと思うが、それを自慢しないところがまたスタイリッシュだ。私と歳は近いはずだが、私は手を見せないことにしている。マニキュアが下手だからではない。学校の図画工作では作

          上京した女の話 3

          ツールキットの補遺 2

          予言の自己成就(自己実現)在日朝鮮人である社会学者、姜尚中は、みずからの就職進路を考えていたとき、選択肢はパチンコ屋か街宣車しかなかった、と述懐しています。相当なプレッシャーがあったと思われますが、さいわい彼は学術の道を続けることができました。しかし、これは例外的です。「日本人」社会の偏見や差別、たとえば「在日朝鮮人や特定部落出身者は粗暴ですぐ犯罪を起こす」といった思考が蔓延して当事者がまともな職につけなかったとき、生活に窮して盗みなどの犯罪に手を染めることがあり得ます。

          ツールキットの補遺 2

          ツールキットの補遺 1

          「世界をみるためのツールキット」のおまけを少しずつ不定期に書きます。ウェットなのは季節柄です。 疑似問題 ある小さな姉妹がオレンジを一個取り合っています。それを見た親は、「姉も妹もオレンジが欲しいのだ」と考えて二つに割って双方に渡します。しかしこれはベストの解ではないことが後でわかります。つまり、妹はオレンジの実を、姉はマーマレードのための皮を欲しがっていたのです。このように、対立や争点が本来あるべき地点から外れて、誤って構成されているとき、それを「疑似問題」と言います。

          ツールキットの補遺 1

          上京した女の話 2

          東京には親戚の女子がいる。女子といっても三十を超えている。結婚するならもうそろそろだと思うが、浮いた噂を一向に聞かない。それもそうだ。彼女はとあるローファームで働いているが、入所当初は「大丈夫、あなたは才能があるから普通の半分の期間で仕事を覚えられる」と励まされた。しかし蓋を開けてみると、何のことはない、勤務時間が一般の二倍というだけだった。給料は悪くない。仕事もエキサイティングだ。しかし早く昇進するか転出するかしないと心身をやられてしまう。 そんな話をLINE通話で漫然と

          上京した女の話 2

          上京した女の話

          ある春、ふんわりとした風を抜けて阿佐ヶ谷の喫茶店に着いた。 文芸好きの茶会だ。 しばらくして六人席が埋まった。このような機会は東京に来て初めてだったから、ドキドキする。プロの中堅作家である寺崎さんが参加者の目を見ながら、文学とは何か、自分の思いを語りはじめた。彼の思いは先日活字で伝わっていたが、対面でもその抑制された熱意が伝わってきた。 ここまではよかった。 ここから先が大変だった。ナントカという男が私を値踏みして、私のいうことを咎めはじめた。ほかの女子参加者も咎めら

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