消化器病専門医試験 対策画像+表【2024年10月】
はじめに
・消化器病専門医試験(10月実施予定)対策として、問題集解説で文章のみではわかりにくい範囲の画像と表をまとめました。
・本記事に掲載されている内容を全て印刷可能なPDFを本文末尾に掲載しています(パスワードあり)。ぜひ印刷してご利用ください。
・「日本消化器病学会 専門医資格認定試験問題・解答と解説 第9集」に掲載されている問題の中で、特に画像での解説がほしい設問に対応しています。文章だけでは分かりづらい設問が多々ありますがなぜか問題集解説は一貫して画像を載せていないので、受験者各々がわかりやすい画像を探す手間を省く記事です。
・文章での解説はほぼ省略していますので問題集解説と併せてご利用ください。本記事内で例えば「9-51」等と記載している数字は「問題集第9集の51pに対応」という表記です。また本記事各設問の番号は第9集の問題番号と対応しています。
・「専門医のための消化器病学」も使える書籍とは思いますが、分厚さの割に分かりやすい図が少ない印象です。こちらも引用する際は「専-32」=「専門医のための消化器病学のp32」といった形式で記載します。
・本記事の制作者は主に内視鏡を専門とする消化器内科医なので本記事も内科医向け(外科範囲の知識を補う)の内容が多めです。逆に内視鏡範囲は薄めなので外科系の医師にとっては少し物足りないかもしれません。
・肝臓以降の内容でいくつか設問を省略し画像のみ掲載しています。予めご了承ください。
・胃癌治療ガイドライン 医師用 2021年7月改訂 第6版についてはWeb版が未公開ですが、試験において重要と思われる部分を一部本文で引用しています。参考にしてください。
・食道内圧測定について、私自身が検査を担当していた経験あり少し詳しく解説しています。
A. 食道
1.食道癌の手術について正しいものはどれか。1つ選べ。
(2017年出題、9-9)
a 再建臓器で汎用されるのは空腸である
b 再建経路では胸壁前経路が最も美容に優れる
c 食道癌根治術とは3領域リンパ節郭清と食道切除を含む
d サルベージ食道切除は40Gy以上の放射線照射後の手術を指す
e 本邦においてStageII, IIIの症例では術前化学放射線療法後の手術が標準治療である
【解説】
a 再建臓器で汎用されるのは空腸である ×
胃です。胃管を思い出しましょう。
b 再建経路では胸壁前経路が最も美容に優れる ×
胸壁前経路は皮下に消化管がくるので美容上の問題があります。美容上の問題については2枚目の写真をみておくと忘れないと思います。3つの再建経路を知っておきましょう。
c 食道癌根治術とは3領域リンパ節郭清と食道切除を含む 〇
d サルベージ食道切除は40Gy以上の放射線照射後の手術を指す
× 選択肢の意図が分かりにくいですが、サルベージ手術は「根治的化学放射線治療後に遺残・再発をきたした症例の中で切除可能症例に行う外科的治療」という内容です。
e 本邦においてStageII, IIIの症例では術前化学放射線療法後の手術が標準治療である
× JCOG9907の結果より、術前化学療法後の外科的治療が標準治療です。
【正解:c】
2.食道・縦隔解剖について正しいものはどれか。2つ選べ。
(2017年出題、9-11)
a 胸管は通常、左右2本存在する
b 奇静脈弓は奇静脈と半奇静脈を結ぶ
c 左反回神経は胸部大動脈弓を反回する
d 第3生理的食道狭窄部は横隔膜貫通部にある
e 下縦隔では食道は下行大動脈の右側を走行する
【解説】
a 胸管は通常、左右2本存在する × 画像参照
b 奇静脈弓は奇静脈と半奇静脈を結ぶ × 画像参照。上大静脈に合流する部分を奇静脈弓と呼びます。
c 左反回神経は胸部大動脈弓を反回する 〇 右は鎖骨下動脈を反回します。
d 第3生理的食道狭窄部は横隔膜貫通部にある 〇
e 下縦隔では食道は下行大動脈の右側を走行する × 図を参照ください。
7.逆流性食道炎・食道裂肛ヘルニアに対する手術術式について誤っているのはどれか。1つ選べ。
(2019年出題、9-15)
a Dor法
b Nissen法
c Heller法
d Toupet法
e Belsy-Mark IV法
【解説】
Heller-Dor法という単語が有名すぎてaとcをセットで除外してしまう方もいるのではと思います。Heller-Dor法はアカラシアの治療法で、Heller法とDor法それぞれの目的を理解すればGERDやヘルニアの治療においてHeller法(筋層切開による通過障害解除)は目的に反することが分かると思います。
【解答】c
・Belsey Mark IV法については文献が少ないですが、上図のようなヘルニアに対する手術です。以下古いですが参考文献です。
日消外会議 18(8): 1768~1773, 1985
http://journal.jsgs.or.jp/pdf/018081768.pdf
12.アカラシアの食道内圧検査で見られる所見はどれか。1つ選べ。(臨床経過省略)
(2018年出題、9-23)
a 二次蠕動波の消失
b 食道内静止圧の低下
c 同期性収縮波の出現
d 下部食道括約部圧の低下
e 下部食道括約部の嚥下性弛緩
【解説】私が大学病院で毎週食道内圧検査を行っていた珍しい経験を持っているので、検査や疾患のイメージを少しお伝えします。
<参考>HRMを用いた食道内圧検査について
上写真のように圧を感知するセンサーが36個配置された直径約4mmのカテーテルにキシロカインゼリーを塗り、透視下で鼻腔から挿入します。先端が胃内に到達したら検査準備完了です。
カテの太さは4mm程度で12Frの胃管と同程度ですが、36個のセンサー部が少しふくらんでいてゴツゴツした感じなので挿入される感触は胃管より嫌な感じです。機械も80年代っぽい雰囲気です。
カテーテルが胃内に到達したら、患者に2mL程度の水を複数回嚥下してもらいます。上写真の下部にうつっている小さな機械とPCをUSBケーブルで接続すると、PCの専用ソフトに下のような画像が表示されます。
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