(41) オバン!
タバコ屋の前の歩道を、掃除していたお咲さんは、数メートル向こうに たむろしている女子高生たちの姿に、舌打ちしました。
制服をぞろりと着て、髪はちぢらせ、生意気にかっこつけて、タバコを 吹かしているのです。もうとっくに学校は始まっている時間でした。
ひょっとしてあのタバコは、うちの自動販売機から買ったのかも・・。思いついたとたん、お咲さんは動き出していました。
「あんたたち、そんな所で何やってるの。いくら商売でもね。未成年者に売る気はないよ。金は返してやるから、タバコをお返し、さあ!」
と手を出すと、ボスらしい女の子が、憎らしげに言い返しました。
「るっせえんだよ。オバンの店なんかで買うかよ」
「おや、言葉をきちんと知らないね。わたしみたいのはね、オ・バ・サン、と言うんだ」
3人の娘どもは、吹き出しました。
お咲さんは、この時とばかりに、言ってやりました。
「オバンというのはね、あんたたちみたいなのを言うのさ。年にゃ関係ないね。ずうずうしくて、ふてぶてしくて、他人のことなんか これっぽっちも考えない、自分中心の鈍感女のことさ」
ひるんで黙りこんだ娘たちに背を向けて、お咲さんはかえって、気分が重ーくなりました。
商売替えしたいよ、因果な店だねえ、と気が沈んだのでした。