
(210) 障子貼り
「久しぶりに静かな土曜日だなあ」
パパが物足りなさそうに、茶の間を見渡しました。弟の徹と健の2人が、夏休み最後の外泊に、叔母さんちに泊まりに行ったので、家の中が広くなったようです。
「3人で障子貼りしましょ。あなた、プロの友だちに教わったんでしょ」 と、ママが言い出すと、
「そりゃいい。朝子はきっといい助手になれるぞ」 と、パパはすぐ乗り気になりました。
パパには負けちゃうよ。朝子は観念しました。
パパは張り切って、総監督につきました。
「茶の間の障子から順に、風呂場に運んで、ぬれ雑巾でのり付け部分をぬらして、紙をはがすんだ」
後ろめたさ無しに、思い切りよく紙を引き裂けるのは、爽快なものです。
「のりは徹底的に落として!」
骨組みだけになった障子が、部屋に並べられました。
「ここからがチームワークだ。ママは桟にのりづけして、朝子とパパとで紙を引っ張り合って、のりの上に乗せるんだ」
息を詰めて、紙をぴったり縁の上に乗せていると、汗が流れます。紙の縁からはみ出した部分は、パパがカッターナイフで切り落とします。
「のりが乾いた所から霧吹きしてくれ。全体に・・」
「やっと終わりね。おなかがすいたな」
でき上がった順に障子をはめ戻すと、部屋は明るく生き返ったようです。

「あれ?」
「あら!」
「いやだ!」
一枚だけ裏向きに貼っていました。どうして? 「洗って裸にして並べた時、裏返しに置いたかも・・。ま、いいさ、苦労の記念だ。ご愛敬さ。このままにしといて、いずれ直すことにしよう」
にわか師匠の終了宣言に笑い合って、3人でまずジュースで乾杯しました。