(27) ツバメの巣
スーパーまで買物に出た帰り、お咲さんはチイチイという鳴き声をきいて、立ち止まりました。道ばたの新築の家の軒に、ツバメの巣が見えます。4,5羽の子ツバメが、巣からあふれんばかりにひしめき合っています。
お咲さんは荷物を足元において汗をぬぐいました。どういうわけか、ツバメの巣を見ると、お咲さんは心うばわれて動けなくなります。
「ほうら、来たよ来たよ」
親鳥をむかえて、口いっぱいに鳴いている子ツバメたちといっしょに、うれしさがこみ上げてきます。
「1回に1羽しかもらえないなんて、じれったいねぇ」
できることなら、ぽいぽいとあの大きな口の中に、えさをさし入れてやりたくなります。
それにしても、こんな人通りの多い道沿いの家に巣を作るなんて、親鳥の気が知れません。
うちの裏庭なら、木もあり近くに公園もあって、申し分ない巣場所を提供できるのに、ただの一度も、ツバメに選んでもらったことがありません。何が不足なのか、お咲さんさんには解けないなぞでした。
「新築なのに3つもつけてもらってさ。掃除がたいへんだよ」
お咲さんはよっこらしょと、荷をもちあげました。
ツバメの巣は、〈安全・快適住み心地〉のお墨付きの気がして、うらやましくてならないのでした。